レアル高が円高の影響を吸収

(ブラジル)

サンパウロ発

2010年09月10日

このところのレアル高で日本企業は円高の影響をある程度吸収できている。その結果、国内での輸入品販売が伸びており、日本企業にも輸入販売法人を設立する動きが活発化しつつある。とはいえ、自動車、電気・電子関連を中心に、付加価値の高い材料などを日本から輸入している企業にとって円高の影響は小さくない。

<進むブラジル買い>
中央銀行によると、リーマン・ショックによる為替下落が一息ついた2009年4月、レアルの期中平均レートは1ドル=2.21レアルだったが、10年8月には1ドル=1.76レアルと約2割上昇した(図参照)。民間大手のブラデスコ銀行の予測(10年9月3日付)では、10年末の為替は1ドル=1.78レアル、11年末は1.83レアルとなっており、レアル高傾向は続くとの見方が多い。

政策金利(Selic)の誘導目標は10年9月9日現在で10.75%と世界でも高い水準となっている。そのため、豊富な資源や安定したマクロ経済などの要因に加え、金利の低い通貨で資金を調達し、高金利の通貨で運用するキャリートレードによって、投資資金が流入してレアル高になっているとも考えられる。

レアルと円の対ドル・レート推移(月末値ベース)

<輸入品の販売が加速>
こうした傾向は輸入品の販売増を加速させている。開発商工省の速報値では、10年1〜8月の輸入額は前年同期比46.6%増の1,144億2,300万ドルで、同期の輸出の伸び(28.8%)を大きく上回っている。品目別では、燃料・潤滑油が64.2%、消費財が50.7%、原料・中間財が43.7%、資本財が36.4%と、それぞれ大幅増を記録した。消費財の中では、乗用車をはじめとする耐久消費財の伸びが著しく、77.2%増の18億700万ドルとなっている。

10年1〜7月の国別の輸入額は1位が米国、次いで中国、アルゼンチン、ドイツと上位の順位は前年同期から変わらない。日本は09年の5位から6位に下がり、代わりに韓国が、品目別1位の乗用車の輸入額が2.4倍(10億1,000万ドル)になったこともあって7位から5位に上昇した。日本からの輸入額は前年同期比21.8%増の37億8,600万ドルとなっている。

<輸入先を日本以外に変更できねば値上げに>
日本企業でもさまざまな業種で新規の法人設立への関心が高まっている。ある機械メーカーは、内需の高まりと輸入に追い風となるレアル高を受けて、新規の輸入販売法人を設立したいという。同社の生産拠点はほとんどが日本にあるが、好景気とレアル高のタイミングをとらえ、質の高い製品をブラジル市場で素早く売り込もうという考えだ。距離が近く、通貨安が進む欧米から輸入品の多くを調達しているため問題は少ない、という進出企業もある。

その一方、自動車、電気・電子分野などを中心に、部品などで日本からの輸入に大きく依存する企業も少なくない。輸入先を変更できる商品は日本から他国への変更を進めているが、日本でしか製造できない高付加価値製品も多く、その場合は値上げせざるを得ない状況になっている。このほか、レアル高を受け国内の販売店や販売先が値下げ要求を行うため、大きな影響が出ている日系企業もある。

(大岩玲)

(ブラジル)

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