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5つの分野を軸に構造的成長戦略を策定へ−金融危機後の成長モデルを探る(9)−

(ベルギー)

ブリュッセル発

2010年06月11日

2010年の1人当たりGDPは4万3,354ドル(予測値)で、金融危機前の4万3,088ドル(07年)の水準を維持する見込みだ。09年に16年ぶりのマイナス成長を記録したが、危機を克服して経済成長を進めるため、政府は軸となる5つの分野が複合的に影響しあう構造的成長戦略を描いている。

<仏独英をしのぐ1人当たりGDP>
IMFが10年4月に発表した世界経済見通し(WEO)によると、10年のベルギーの1人当たりGDP(予測値)は4万3,354ドル。金融危機前の4万3,088ドル(07年)に比べ266ドル上昇しており、フランス、ドイツ、英国といった西欧の大国を抑え、世界15位という高位を維持する見込みだ(添付資料参照)。

ベルギーは人口1,078万人(09年末の政府予測)、面積3万528平方キロほど(東海4県とほぼ同じ大きさ)の小国だが、a.欧州第2位のコンテナ取扱量を誇るアントワープ、世界最大の新車積み替え港ゼーブリュージュという2大港湾の存在(注)、b.フランス、ドイツという欧州の2大消費地の中間に位置し、西欧にも中・東欧にもアクセスが容易という地理的優位性、c.EUの主要機関がある首都ブリュッセルを中心とした国際性や多言語能力、などを背景に数多くの外国企業が進出している。

在ベルギーの日白協会兼商工会議所(BJA)投資委員会が10年2月に発表した「ベルギーと周辺国の投資環境の比較」(PDF)によると、さまざまな投資環境調査で高い評価を得ている(2010年4月9日記事参照)が、金融危機の影響で経済は大きく縮小した。

<内需低迷で16年ぶりのマイナス成長>
金融危機の影響で09年の実質GDP成長率はマイナス3.0%と、前年の0.8%から大きく落ち込んだ(表参照)。雇用環境の悪化を反映して個人消費が1.7%減(前年1.0%増)と低迷した上、企業活動の収縮によって設備投資も減少し、総固定資本形成は4.2%減(前年3.8%増)に低下した。

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在庫投資を含む内需の寄与度はマイナス1.9ポイントで、内需の減退がそのまま経済に反映した。さらに、製造業の生産調整によって輸出が急落し、政府による金融・財政支援策の効果が出てくる第3四半期まで、経済は回復の兆しをみせなかった。GDPが通年でマイナス成長となったのは、世界的に景気が低迷した93年以来、16年ぶりだった。

ベルギーは、銀行救済や各地域政府による景気刺激策、特別措置などによって何とか金融・経済危機を乗り切った。ベルギー国立銀行(NBB)は、主要経済指標が上向いていることを背景に、10年についてプラス1.0%の成長を見込んでいる。本格的な景気回復が期待されるが、労働市場の悪化など懸念材料もある。NBBによると、08年(実績)から10年(見通し)の2年間で11万8,000人(09年だけで7万4,000人)の雇用が失われ、失業率は7.0%(08年)から9.0%(10年)に悪化する。労働市場は改善の方向になく、「まだしばらく時間がかかる」(ギー・クアデンNBB総裁)との見方が大勢を占めている。

<成長に向けた共通課題「BE2020」を発表>
金融・経済危機を克服して経済成長につなげるため、政府はEU、連邦政府、地域政府、労使で共有すべきコモンアジェンダ(共通課題)として、a.競争力と産業政策、b.技術革新とデジタル社会、c.気候・エネルギー・運輸、d.雇用・能力・訓練、e.貧困撲滅と社会的結束に向けた努力、の5つを軸とした「BE2020」を10年3月19日に発表した。5つの軸は相互に影響し合い、全体を形作るものとされ、このパッケージによってEUの新成長戦略「欧州2020」(2010年3月8日記事 3月30日記事参照)の5つの目標達成にも貢献していく考えだ。

経済はプラス成長が見込まれ始めたが、危機後の構造的な景気回復と持続的な成長につなげていくため、早急に戦略を練り上げることが不可欠だとの考えがその根底にある。今後は、より構造的な経済政策に移行し成長を維持していかなければ、大きな脅威になっている雇用の喪失が数年にわたって成長の足かせになる懸念がある。

OECDも5月26日、ベルギーの経済見通しを発表し、世界経済の回復や財政・金融政策によって09年中ごろから回復がみられるとする一方、「既に高レベルにある失業率は11年初めまで悪化が続く」「特に賃金体系の柔軟化や就業支援強化といった労働市場改革が必要だ」と指摘した。

新たな成長戦略の策定に向けてBE2020を発表した翌月の4月22日、イブ・ルテルム首相は2つの言語圏をめぐる政治的混乱から内閣総辞職をアルベール2世国王に申し出た(2010年4月23日記事参照)。国王が4月26日、これを正式に受理したことで内閣は総辞職し、総選挙が6月13日に行われる。政治が経済の足を引っ張る構図は避けたいが、総選挙後も安定的な政権が樹立されるかは不透明だ。また、7月からEU議長国に就任することが決まっており、国内の政治的混乱がEUのかじ取りに影響をすることが懸念されている。

(注)英国のインフォーマUKによると、09年のアントワープのコンテナ取扱量は730万9,639TEU(20フィートコンテナ換算単位)で、欧州最大のオランダのロッテルダム(974万3,290TEU)に次ぐ欧州第2位で、ドイツのハンブルク(701万TEU)を上回った。また、フランダース政府貿易投資局(FIT)によると、ゼーブリュージュは世界最大の新車積み換え港で、07年の取扱台数は220万台を超えた。

(和泉浩之)

(ベルギー)

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