次世代自動車分野でも存在感高まる−中韓企業躍進への対応−

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2010年04月30日

ここ数年来、中国、台湾、韓国企業のプレゼンスが高まっている。家電、電気・電子では韓国、台湾企業が台頭、自動車では韓国車が急増した。電気自動車分野でのドイツ企業と中韓企業の連携も進んでいる。太陽電池といったインフラ分野では中国企業が躍進している。

<家電の人気商品ベスト5の大半は韓国、台湾製>
大手家電量販店のメディア・マルクトの液晶テレビ、プラズマテレビ、ノートパソコンの人気商品ベスト5では、韓国のサムスン電子、LGエレクトロニクスと、台湾のエイサーの商品がほとんどを占める(表参照)。実際に、デュッセルドルフ市内の店内をみると、まず入口にはサムスンの発光ダイオード(LED)テレビが展示されている。液晶・プラズマテレビコーナーでは、サムスン、LG、ソニー、パナソニック、ノートパソコンでは、サムスン、エイサー、ソニー、アップルがそれぞれ特別コーナーで展示されている。

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日系電機メーカー関係者によると、韓国企業の製品は「低価格でデザイン・性能が良い上に、多額の広告費や販売支援費が投入されており、量販店の展示コーナーなどでもいい場所を確保している」という。年内に暫定適用が予定されるEU・韓国自由貿易協定(FTA)発効については「関税面で不利になるので当然脅威で、日本・EU経済統合協定(EIA)の早期交渉開始を望んでいる」と話す。

携帯電話機市場では、サムスンがこれまでトップを独走してきたノキアを抜き去ったようだ。ファーウェイ(華為)、ZTEといった中国企業もデュッセルドルフに拠点を持ち、ドイツだけでなく欧州の携帯関連市場を狙う。これらの企業がデュッセルドルフに拠点を持つ理由には、Tモバイルやボーダフォンといった大手携帯電話会社が近くにあること、地理的に地域統括拠点として活用しやすいことが挙げられる。

<韓国車が著しい伸び>
ドイツ自動車工業会(VDA)が発表した2009年のメーカー別乗用車新規登録台数によると、合計380万7,175台のうち、日本車は41万9,538台(シェア11.0%)、韓国車が14万6,709台(3.9%)だった。韓国車は、まだシェアは小さいものの、景気対策の一環として実施された「環境プレミアム」効果もあり、増加している。

メーカー別では、日本車は、トヨタ(13万8,498台、43.1%増)、日産(6万6,463台、45.3%増)、マツダ(6万32台、6.7%増)、スズキ(5万9,184台、60.7%増)、ホンダ(4万5,151台、12.5%増)、三菱自動車(3万409台、19.0%増)、ダイハツ(1万594台、22.8%減)、スバル(9,207台、4.2%減)。一方、韓国車は、現代(9万1,330台、76.7%増)、起亜(5万5,379台、61.4%増)で、伸び率は日本メーカーを上回った。

<電気自動車向けに国内企業と中韓が技術提携>
次世代自動車・同部品分野でのドイツ企業と中韓企業の連携も進んでいる。ダイムラーと中国の電池・自動車大手比亜迪汽車(BYD)は3月1日、中国市場向けの電気自動車(EV)開発で提携すると発表した。両社は新たなブランドを立ち上げるほか、EVの開発、デザイン、テスト拠点を中国国内に設ける方針だ。

サムスンSDIは、08年に自動車部品大手ボッシュと共同で、自動車用リチウムイオン電池の開発、製造、販売を目的とした合弁企業SBリモーティブを設立した。09年8月に同社は、BMWのEVプロジェクト「Mega City Vehicle」の電池の単独供給企業に最終選定されたと発表した。10年から試作品用リチウムイオン電池を一部供給し、その後13年から20年までの8年間、BMWにEV用リチウムイオン電池を本格的に供給する。

なお、日系電機メーカー関係者は、10年に自動車ナビゲーターの液晶ビジネスに中国、韓国勢が参入してくるかどうか注目している。参入障壁が高い分野だけに、新規参入はこの分野で本腰を入れてビジネスをしていこうという証拠だという。

<太陽電池では中国系企業が躍進>
08年の世界市場での太陽電池セル生産量の国別順位は、中国、ドイツ、日本の順とみられ、近年中国系メーカーの躍進が著しい。当地コンサルタントによると、「06年時点では、中国系メーカーで太陽電池セル生産量のトップ10に入っていたのはサンテック(4位)とモーテック(7位、台湾)の2社だけだったが、08年時点ではこれにインリー(7位)とJAソーラー(8位)の2社が加わり、トップ10のうち4社を中国系プレーヤーが占めるまでになっている。ドイツ市場でも同様の傾向がみられる」という。

(臼井一雄)

(ドイツ)

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