LG製品が家電市場を圧倒−中韓企業躍進への対応−
ラゴス発
2010年04月20日
韓国のLGエレクトロニクスの製品が国内の主要家電製品市場でシェア1位となり、消費者から高い評価を得ている。その背景には、輸入販売総代理店のインド系ソモテックスによる広報営業活動がある。
<テレビ、冷凍冷蔵庫、エアコンでシェア1位>
50年以上前にガーナに進出したインド系のモヒナニ(Mohinani)グループ傘下のソモテックス(Somotex)・ガーナは、LG製品(ブラウン管テレビ、液晶テレビ、プラズマテレビ、冷凍冷蔵庫、エアコン、音響製品など。ただし、携帯電話を除く)をはじめとして、オランダのフィリップス製品(ヘアドライヤー、ひげそり、湯沸かしポット、料理用ミキサーなど)、日本の東洋タイヤ、インドのMRFタイヤ、イタリアのオーシャン(Ocean)ブランドの冷凍冷蔵庫を取り扱う輸入総代理店だ。また、自社ブランド「タマシ(TAMASHI)」のガス炊飯器、冷凍冷蔵庫を中国から輸入販売している。同社が輸入している製品はすべて最終完成品で、ガーナ国内で組み立て製造されているものは1つもない。
LGは西アフリカ地域ではナイジェリアの最大商業都市ラゴスに拠点を置き、ガーナなど周辺諸国をカバーしている。ソモテックス・ガーナは、15年前からLG製品の取り扱いを開始し、今ではガーナ国内に、ショールームを首都アクラに11店、クマシ市(Kumasi)に2店、タコラディ市(Takoradi)に1店、タマレ市(Tamale)に1店と計15店設置している。同じ韓国系のサムスン電子がアクラに3店ショールームを構えているのに比べ、LGは店舗数が多い。
ソモテックス・ガーナのビジョ・ジョージ最高執行責任者(COO)によると、「ガーナ家電市場では、LG製品がブラウン管テレビの16〜17%、液晶/プラズマテレビの25〜27%、冷凍冷蔵庫の34%、エアコンの22%ほどのマーケットシェアを持つ」。数量別ではブラウン管テレビ、金額別では液晶/プラズマテレビが同社の売り上げに貢献しているという。
ライバル企業製品との価格比較について同氏は「ハイアールなどの中国製品はLGより低価格、パナソニックがLGとほぼ同じ値段、ソニー、フィリップスが高めの価格構成になっている」とみている。
LGとサムスンの製品価格を各ディーラーショップでみると、32インチ液晶テレビはLGが1,240ガーナセディ(1ガーナセディ=約65円)なのに対し、サムスンは1,490ガーナセディ、エアコンはLGが1,299ガーナセディに対してサムスンは1,390ガーナセディと、LGの方が若干安い価格設定になっている。
<広報活動にも注力>
同氏に、ガーナでのLG製品販売の成功の理由を聞くと、「LGがいつも新製品に最新技術を導入していること、適当な価格帯であること、われわれのマーケットサポート力が巧みなこと」の3点を挙げた。ここ50年間で築き上げた自社販売網ネットワークを利用した販売攻勢や、多数のショールーム設置による広報活動などがバランスよく構成されて、うまく消費者の心をつかんだのだろう。
<中間層の台頭もテレビの拡販につながる>
同氏によると国内でも中間層が台頭してきたという。同氏が2008年9月に初めてガーナを訪れた時は、テレビ市場では、まだ21〜29インチのブラウン管テレビが売れ筋だった。それから約1年半が経過した今では、液晶/プラズマテレビに手を伸ばす消費者が増えているという。32インチ液晶テレビは08年9月には1,700ガーナセディで販売されていたが、今では1,240ガーナセディまで値下がりしていることも、消費者に液晶テレビが魅力的に映るようになってきた理由の1つだろう。
なお、LGは26〜70インチまで数種類の液晶/プラズマテレビを市場に投入しているが、1番の売れ筋は32インチで、液晶/プラズマテレビの売り上げの約3割を占めている。
為替市場では、09年初めにドル高ガーナセディ安が進んだが、それも09年7月ごろから安定し、市場での金回りもよくなっていると同氏は感じているようだ。10年第4四半期には、日量12万バレルの原油生産が南西部沖合のジュビリー油田で開始される見込みで、政府にとっては貴重な外貨収入源となる。09年は耐久消費財の消費も低迷したが、今後、石油ガス生産が軌道に乗って、海外直接投資も増加すれば、中間層に少し厚みが出てくるとみられる。
(志釜研作)
(ガーナ)
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