携帯、自動車でシェア拡大−中韓企業躍進への対応−

(トルコ)

イスタンブール発

2010年04月13日

韓国との関係は、トルコが国連軍として派兵した1950〜53年の朝鮮戦争以来良好だったが、経済面では日本のプレゼンスに遅れをとっていた。しかし、2005年を境に輸入額では日本を上回るようになり、電気機器、自動車部門でのマーケットシェアで日本の最大の強敵として台頭するようになった。

<素早い韓国企業の市場開拓>
09年の対韓国貿易は、輸入が前年比23.8%減の31億1,609万ドルに対して、輸出が13.4%減の2億3,483万ドルで、貿易赤字は24.6%減の28億8,125万ドルだった(表1参照)。輸入額は05年以降、日本を上回り、貿易赤字額ではロシア、中国、米国、ドイツに次ぐ第5位で、6位の日本を上回る。

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韓国からの輸入を品目別にみると、最大が電気機器で、携帯電話などの通信機器、家電を中心に04年から日本を上回る勢いをみせている(表2参照)。また、自動車など輸送機器も同時期に日本をしのぐようになった(表3参照)。ただし、日本からの輸出の主力ともいえる一般機械に関しては、日本の約半分、中国の4分の1程度にとどまっている(表4参照)。

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韓国企業の特徴は、中国製品よりも高品質で日本製品よりも低価格なことで、現在までにトルコでのプライスリーダーの地位を確保しつつある。韓国製品の世界的なシェア拡大の中でサムスン電子、LGエレクトロニクスなど家電部門を中心にトルコ人消費者の新しいもの好きな性向をつかんだ。特に携帯電話市場でのマーケット拡大では、出遅れた日本はもちろん、欧米勢力をもしのぐ勢いをみせた。

サムスンの携帯電話は、市場シェアを06年の14.6%から08年ごろまでに4割近くに伸ばしており、最大のノキアの地位を脅かすまでになった。LGは、空調器機でのコチ財閥との合弁生産だけでなく、家電でも08年に代理店との契約を打ち切り、直接販売に乗り出した後、店舗網を拡大している。テレビの市場シェアでもサムスン、LGが他社製品を圧倒している。

<現代自動車が販売トップに>
韓国企業のトルコ進出(約160社)は、現代、LG、サムスンなど財閥系企業主導による自動車や電気・電子などの分野に集中している。製造業部門では現代自動車の躍進が著しい。

09年、自動車市場が冷え込む中、政府による第2四半期の減税策やウォン安なども手伝って、現代がルノーを抑え、初めて乗用車販売市場のトップに踊り出た。現代は、97年にキバル財閥との合弁で、大規模な乗用車生産工場を開設し、トルコでの生産を開始した。09年には累積生産台数が50万台に達し、新モデルの導入も決定している。また、関連企業として77年に、マンドがトルコのチュクロバ・グループ傘下のマイサンとの合弁でショックアブソーバーの生産を、ハニルがアッサンとの合弁でエアフィルター、ラジエーターファンなどの生産を始めた。また09年にはポスコがブルサに平鋼製造工場の建設を開始している。

両国の経済関係は、インフラや軍事関係でも強化が進んでいる。最近の例では、韓国電力公社(KEPCO)が、トルコ発電公社(EUAS)とシノプに原子力発電所建設事業共同研究調査に向けた共同宣言に署名し、新聞紙上を大きくにぎわした。同調査の共同宣言は原子力発電を輸出する大きなステップとして韓国政府挙げての活動の成果ともいえる。また、トルコ・韓国の自由貿易協定(FTA)は、順調にいけば10年夏にも締結が実現する可能性があるという情報もある。これにより韓国からの輸出は、日本からの輸出と比較しても有利となる。

トルコは、親日国として知られているが、朝鮮戦争でのつながりもあり、親韓国でもある。また、産業界もともに財閥主導であるなど、ビジネスをやりやすい面もあるといい、その勢いには目を見張るものがある。

(中島敏博)

(トルコ)

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