低価格を売りに浸透した中国家電−中韓企業躍進への対応−

(バングラデシュ)

ダッカ発

2010年04月09日

中国は低価格を武器に家電市場を席巻し、韓国も高級家電などの分野で存在感を発揮している。日本は当地の市場に合った製品開発が求められている。

<中国の白物家電は韓国、日本製の3分の2の安さ>
2006/07年度(06年7月〜07年6月)から3年間の貿易統計をみると、08/09年度に中国はインドを抜き、最大の輸入相手国(貿易額34億1,638万ドル)になった。

縫製品の材料となる綿・綿糸/布(構成比18.7%)、また、機械類(15.8%)、電子・電気機器類(10.8%)の金額が大きく、綿・綿糸/布は前年比20.8%も増加した。

大量生産の定番である衣料品の調達先として、重要度が高まる当地の縫製産業は、リーマン・ショック以降の世界景気低迷の影響を受けることもなく、受注量を維持している。一方で、中国製の機械類、電気・電子機器が市場にあふれている。

特に白物家電は、中国製品が圧倒的な低価格で売れ筋商品になっている。ジェトロがダッカ市内の家電販売店で行った冷蔵庫(容量280リットル)、洗濯機(容量7〜8.5キログラム)の価格調査によると、各国ブランドの一番安い価格帯では、中国製品は韓国、日本ブランド製品の約3分の2以下(冷蔵庫約2万タカ、洗濯機約1万8,000タカ。1タカ=約1.3円)で販売されている。中国メーカーの特徴は多数のブランドがあることで、一部は大手海外メーカーに似た名称を持っている。特に売れ筋のブランド、メーカーはないものの、価格面ではいずれも圧倒的な安さを誇る。

また、同じく安い価格帯の携帯端末を比較すると、中国製品はLGエレクトロニクス、サムスン電子といった韓国ブランドとの価格差があまりなく、1台3,000〜3,500タカだ。しかし、1台に2枚のSIMカードを同時に挿入できるので、個人用、仕事用に使い分けができることから、消費者の人気を呼んでいる。

<韓国製品は高級品としてのブランドを確立>
08/09年度の韓国からの輸入は、日本に次いで6位の8億6,478万ドルだった。最大の輸入品目は鉄・鉄鋼類で輸入額は1億5,891万ドル。トタン板などの材料となる薄鋼板や造船用鉄鋼が主と思われる。韓国企業ではポスコなど大手鉄鋼メーカーが攻勢をかけているが、同分野では日本も健闘しており、08/09年度の日本からの輸入額は1億7,201万ドルと韓国を上回った。安定した経済状況から需要はさらに伸びるとみられ、競争はさらに激化する見込みだ。

韓国ブランドの家電や電子機器類は、主に韓国以外のアジア諸国で生産されたものが輸入されているため、2国間の貿易統計には表れていない。だが、中国製品と同様に市場へ浸透している。家電販売店に聞くと、液晶テレビなど高級家電製品では、価格の高い韓国や日本ブランドが売れ筋だという。韓国製品は比較的高所得者向けの製品として市場では認知されているようだ。

<日本企業は市場に合った製品開発を>
中国、韓国企業のプレゼンスにつき、当地進出の日系企業(商社)は、以下のように語った。

これまで日本企業は高品質を売りにしてきたが、特に家電分野の品質では韓国企業に対しての優位性は既にないだろう。一方、中国製品は圧倒的な低価格で市場に浸透しつつある。スペックダウンを含め、バングラデシュ市場にあった製品開発が日本企業にも求められており、その動きは一部で始まったばかりだ。

中国、韓国企業の強さは、現地資本(場合によっては現地個人)との迅速なパートナーリングと、そのパートナーによる強力な市場流通力にある。よいパートナーと組めないケースもあるだろうが、そのリスクも覚悟の上で事業を進めている。弱みといえば、これらビジネスリスクと、将来的にはコンプライアンスの問題も浮上するのではないか。

バングラデシュではODA関連のプロジェクトが大きいが、この分野でもコスト面から日本企業の参入は厳しい。特に中国は、援助とパッケージで中国企業のビジネスを後押ししている。橋の建設などではかつて、日本企業が韓国やインド企業と組んで実施したケースがあるが、双方に合弁する理由がないと、なかなかうまくいかないだろう。バングラデシュに対しては、原子力分野でも中国、韓国、ロシアが協力することを明らかにしており、日本は出遅れている。

人口1億5,000万以上、30歳未満の人口が6割を超えるというバングラデシュの市場構成は、近い将来に一大市場になることを期待させる。中国、韓国企業が市場での大きなプレゼンスを確立しつつあるが、日本企業の顧客となるような購買力のある層も増えており、繊維製品など安い人件費を理由とした調達基地にとどまらない可能性がある。昨今、BOPビジネス(経済ピラミッドの底辺層をターゲットとするビジネス)という概念が普及しつつあるところで、日本企業のバングラデシュ市場参入を後押しするよいきっかけになるのではないか。しかし、実際のビジネスプランについてはまだまだ試行錯誤が必要だ。

(鈴木隆史)

(バングラデシュ)

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