日本勢、品質で家電市場をリード−中韓企業躍進への対応−
クアラルンプール発
2010年04月08日
サムスン電子やハイアールなど韓国・中国の家電メーカーが世界でプレゼンスを高める中、当地の家電市場では日本勢が存在感を示している。AVと白物家電を合わせると、パナソニックを中心とした日本勢が韓国勢の約2倍の48%のシェアを占め、デジカメでは、ソニー、キヤノンなど日本勢のシェアが8割に達する。マレーシアでは、高品質で耐久性がある日本家電の人気が高い。マレーシアにおけるパナソニックのオペレーションについて、パナソニックマネジメントマレーシアの岩城宏之ディレクターに聞いた。
<幅広い商品で家電市場をリード>
問:韓国、中国企業のプレゼンスをどうみるか。
答:小物家電製造のパナソニックマレーシアが1965年に進出してから45年、現在はこのほか22社のパナソニック関連会社がマレーシアに進出し、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、小物家電(アイロン、ドライヤーなど)、テレビ、デジカメなど幅広い商品を販売している。商品別にみると、エアコンは市場の4割を占め、テレビはサムスン(電子)、LG(エレクトロニクス)の韓国勢を抑えて首位を維持している。冷蔵庫、洗濯機も首位を維持しており、2009年12月時点で、AVと家電を合計したシェアは23%と、サムスン(12%)、LG(8%)を上回っている(表参照)。
しかし、韓国企業のプレゼンスは、特にこの5年で高まっている。品質、デザイン、値ごろ感が消費者に評価されているのではないか。サムスンは、本社主導でインド、タイ、ベトナム、インドネシアなど次々にターゲット国を決めて集中的に資源を投下する戦略をとっている。
中国企業のプレゼンスは意外に低い。数年前には、安い中国製品が流入して一時的に消費者が中国製品に流れ、価格面で脅威になるかと思われた。しかし、消費者は実際に使ってみて、中国製品は壊れやすく、修理したくても修理部品がないなどの不便を感じ始めたようだ。低価格だけで勝負する中国製品は、それほどの脅威ではなくなった。毎日使う家電は品質が重視され、耐久性に優れた日本ブランドが好まれている。パナソニックの商品は中国製品よりかなり割高だが、販売は伸びている。ブレンダーやアイロンなど、パナソニックが7割近いシェアを占める小物家電もある。
<独自販売ルートの全国構築が強み>
問:パナソニックが首位を維持している要因は。
答:まず、国内市場に独自の盤石な販売ルートを構築できていることだろう。家電量販店のほかに、パナソニック商品の販売・修理サービスをするディーラー「パナショップ」が185店、サービスセンターが260ヵ所。全国どこでもパナソニック商品を購入し、サービスが受けられる拠点を30年以上かけて築いてきた強みがある。
ほかの国に比べマレーシアは家電量販店の出店数がまだ少なく、パナショップルートが依然として強い。また、家電量販店の出店は都市部に集中しており、郊外需要の取り込みには、全国津々浦々に設置されているパナソニック独自の販売網が力を発揮する。サムスンは、パナショップのような地方販売拠点が少なく、都市部の家電量販店での販売が中心だ。パナソニックは独自の販売網で郊外需要まで取り込み、シェアを伸ばしてきた。
パナショップには、国内で取り扱うすべてのパナソニック商品の写真、性能、価格が掲載された商品カタログを定期的に配布し、販売員が十分説明ができるようにしている。また最新の商品情報の入手や在庫注文は、パナショップ専用のウェブサイトでできるようになっている。サービスのトレーニングも随時実施し、顧客情報管理データベースの作り方から顧客データの活用方法まで指導する。進出当初からのパナショップの中には初代オーナーから2代目に代替わりしている店もあり、2代目にも十分な教育をしている。販売を伸ばすための奇策は特になく、常に「Back to Basic(基本に戻れ)」。日本で培ったパナショップの基本的な販売ノウハウを当地に移転し、販売拠点を強化してきた。シェア獲得は地道な努力を続けてきた結果だ。
<全国ネットを生かしバスキャラバンでの販促にも注力>
問:今後の展開について。
答:流通面で、パナショップやサービスセンターなどの販売・サービス拠点を全国に持っていることと、これらの拠点と連携して全国各地でイベントキャンペーンを実施したことなどが、韓国勢に差をつけ、マーケットシェアを勝ち取ってきた要因だ。今後も、全国ネットワークを生かした販売促進を展開する。
例えば、08年からは、バス2台を1組にした移動ショールームカーで全国各地を回り、プラズマ・液晶テレビ「ビエラ」のイベントキャンペーンを実施する「バスキャラバン」を始めた。09年には、全国約200ヵ所以上を回り、前年比3.3倍の36万人を動員した。商品展示、イベントに加えてパナショップとタイアップした即売も行った。量販店がない地方では、イベントに参加した現地の富裕層が購入するケースも多い。
10年は、マレーシア経済も回復に向かっており、ワールドカップなどのイベント効果も見込まれるので、19億リンギ(1リンギ=約29円)の売り上げをターゲットとし、さらに積極的な販売促進キャンペーンを予定している。
(手島恵美)
(マレーシア)
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