日本車とのすみ分け崩れ競合激化へ−中韓企業躍進への対応−
パリ発
2010年03月25日
携帯電話端末やミニノートパソコンなどデジタル家電市場で韓国や台湾企業の進出が目覚ましい。消費者のニーズに合った製品を迅速に、手ごろな価格で提供できるのが強みだ。新車販売市場でも韓国車は好調に伸びている。今後は日本車とのすみ分けが崩れていくことで、両者の競合がより厳しくなると予想される。
<携帯電話端末ではサムスンが1位に>
特にデジタル家電分野で韓国メーカー(サムスン電子、LGエレクトロニクス)の台頭が著しい。デジタルカメラではパナソニック、ニコン、ソニーなど日本メーカーが上位を独占しているものの、サムスン電子がここ数年、低価格製品を軸にシェアを伸ばしている。2009年の市場占有率はおよそ10%と、3位のソニー(11%)まで1ポイント差に近づいた。
液晶テレビはソニーがシェア21%で2位と健闘しているが、1位のサムスン電子(29%)とLGエレクトロニクスの韓国勢でほぼ4割を占める。また携帯電話端末では、サムスン電子が05年にノキアを抜いて1位の座を獲得したのに対し、ソニー・エリクソンはアップルのiPhoneの急拡大もあり、シェアを落としている。
パソコン市場では台湾企業の参入が進んでいる。09年は米ヒューレット・パッカードのシェアが25.4%と依然として最大で、これに台湾エイサーが20.8%で続く。エイサーは低価格のノートパソコンを軸に大幅に売り上げを伸ばし、06年の12%から一気にシェアを拡大した。とりわけ09年に国内販売台数が150万台と前年からほぼ倍増したミニノートパソコンではシェアが35%に達する。またこの市場ではパイオニア的な存在の台湾アスースも25%のシェアがあり、台湾メーカー2社だけで市場の6割を押さえている。
日本企業では06年におよそ10%のシェアを持っていたNECが09年2月、欧州のパソコン事業から撤退した。富士通は、08年末に完全子会社化した富士通シーメンスが06年時点でシェア7.1%で5位にランクされていたが、その後、台湾メーカーやアップルの台頭でシェアを落としている。
<新車販売で韓国車が好調な伸び>
09年の国内の新車市場は、自動車産業救済の一環として実施されたスクラップインセンティブが低公害車への買い替え需要を喚起し、新車販売台数は前年比10.7%増の227万台と00年以降で最大になった。
09年の韓国車(現代自動車、起亜自動車)の新車販売台数は4万2,662台。シェアは1.9%と依然として小さいものの、販売台数は経済危機の影響で急減した08年に比べ24.8%増え、07年の水準まで持ち直した。
現代は16.6%増の2万1,505台。起亜は34.4%増の2万1,157台。両社ともに、スクラップインセンティブの適用対象となる低公害車〔走行距離1キロ当たりの二酸化炭素(CO2)排出量160グラム未満〕モデルを多く市場に投入しており、同制度の恩恵を受けたとみられる。現代は主力のAセグメント車「i10」とセダン「i30」に加え、09年はインドで生産している欧州向けBセグメント車「i20」を投入、補助金対象車のラインアップを増強した。起亜はスクラップインセンティブの施行が、従来から人気の小型車「ピカント」やセダン「プロシード」のモデルチェンジの時期と重なったことも好材料になった。
他方、日本車の新車販売台数は19万8,000台。前年比5.8%増とプラスに転じたものの、シェアは前年から0.4ポイント低下して8.7%にとどまり、最大だった07年の10.0%から後退した。
メーカー別では日産(19.8%増、4万5,750台)、スズキ(14.7%増、2万9,000台)、ホンダ(18.1%増、1万4,599台)、ダイハツ(3.5%増、1,907台)、スバル(13%増、1,393台)は上向いたが、マツダ(3.2%減、1万2,959台)、三菱自動車(17%減、2,128台)、トヨタ(2.1%減、9万263台)は2年連続で減少している。
<日韓メーカーのすみ分けが崩れる可能性も>
現状を日系企業はどのように分析しているのか。ジェトロの聞き取り調査によると、ある自動車メーカーは「現在、日本車と韓国車はある程度セグメントによるすみ分けができているが、韓国メーカーの多角化戦略により、これまでのすみ分けが崩れ、日本企業にとっては競争が厳しくなっていくだろう」とみている。また、韓国メーカーの強みとしては、「開発・生産のスピードが早く、ユーザーのニーズに対応した車を迅速に生産・販売できる」ことを挙げている。
他方、自動車部品関連企業からは「これまでは、日系メーカーへの納入を主にしてきたが、現在は韓国メーカーとの取引量が増加してきている。特に09年6月ごろから発注量が急激に増加しており、現在では非常に重要な顧客となっている」という声もあった。
中国、韓国企業のプレゼンスの高まりについて、フランス国際関係研究所(IFRI)エコノミストのフランソワーズ・ニコラ氏は「国内では、70年代の米国企業、80年代の日本企業、最近の韓国企業のように、中国企業の脅威が増加しつつある」と述べ、その理由として中国製品の競争力の高さと中国政府系ファンドの存在を挙げた。また、国内にとどまらず、北アフリカ諸国での建設部門といったこれまでフランス企業が優位にあった市場でも、中国企業の進出が顕著だ、と指摘している。
(田熊清明、山崎あき)
(フランス)
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