徹底したコスト削減を追求する現代自動車−中韓企業躍進への対応−

(中国)

北京発

2010年03月23日

現代自動車は北京に2つの工場を持ち、2012年には第3工場が稼働する。現在の生産能力は年産60万台、第3工場の稼働で年産100万台を超える。また現代自動車グループの起亜は、江蘇省塩城市に年産40万台の工場がある。09年の韓国メーカーの販売シェアは8%を超え、日系の21%には及ばないものの、日系より約1〜2割安い低価格を武器に全国展開を本格化している。

<9割超す現地調達率>
北京の韓国産業研究者によると、現代自動車は価格換算で93%を現地調達しており、うち70%以上が中国に進出した韓国メーカーからだという。現在、さらなる価格競争力を発揮するため、1次部品メーカーに対しさらに現地調達率を上げるよう要求している。09年はウォン安のため、その要求は強くなかったものの、部品メーカーに対して自分で販路を拡大するよう伝えており、少しでもコスト・品質のパフォーマンスの良い企業から調達することを暗に求めている。コスト削減を徹底的に進める構えだ。

中国に進出している韓国メーカーは現代自動車と起亜の2社。どちらも現代グループに属するが、中国ではライバル関係にある。現代は北京、起亜は江蘇省塩城市に生産拠点があり、部品などを納入する韓国ベンダー企業もその周辺に集中している。韓国メーカーも日系メーカーと同様に系列企業からの調達が多い。

しかし、現代の合弁相手の北京汽車は、近年、現代に対し中国ベンダーからの調達要求を強めている。中国政府は進出時に現地調達ガイドラインを示しており、毎年その比率を上げていくことを求めている。先の研究者は「中国政府は日韓メーカーの強い系列主義に大きな不満を持っている。それが中国地場ベンダーの技術力と品質がなかなか向上しない大きな理由の1つと考えており、メーカーに対する強い技術移転要求となって表れている」と指摘している。

「品質の向上」、「一層のコスト削減」と「合弁相手からの要求」のバランスをいかにとっていくのか、現代も日系メーカー同様の問題に直面している。

<日系車に比べ1割以上低価格>
現代の品質はここ4〜5年で急速に向上してきている。同社の品質要求に韓国ベンダーが対応できているからだ。現代系列のベンダー企業モービスはその代表格で、中国でも台頭している。

現代はコスト管理や生産方式など、日系セットメーカーをベンチマークしている。ベンダー企業への品質要求も高く、毎月ベンダー企業を訪れ、品質の確認をしている。日系セットメーカーと同様で、ベンダー企業にかなりのプレッシャーをかけているが、それでも、同社の車は日系車に比べ1割以上価格が安い。

その理由として指摘されているのは、進出に際し、数多くの韓国ベンダー企業を連れてきたことだ。これが調達コストの差になっている。また、品質を生産工程から重視する日系に対し、韓国系は部品の品質要求は高いものの、生産工程からの品質管理要求は日系ほど高くないと日系自動車関連企業は指摘する。換言すれば100の部品に1つの不良品も許さない日系は、ベンダーに対する生産工程からの品質管理要求が非常に高い。これらがコストの差が生じる主な要因となっているようだ。

さらに、現代は09年下半期から急速に販売網を拡大している。北京、上海といった巨大都市から中西部の省都など人口の多い主要都市にまで拡大しており、10年の販売はさらに伸びると予想されている。

(清水顕司)

(中国)

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