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高級車市場ではSUVが人気−欧州企業のフロンティア市場戦略(4)−

(ルーマニア)

欧州課・ブカレスト発

2010年02月18日

2009年の国内の新車販売は、前年の半分以下と伸び悩んだ。ただ、欧州の高級車メーカーによると、スポーツ用多目的車(SUV)タイプの販売台数が全体の6割を占め、根強い人気だという。特集4回目は、自動車市場での欧州企業の取り組みを紹介する。

<メーカー別ではダチアがトップ>
国内の08年の新車販売は27万台だったが、09年は12万台(09年11月末時点)と大きく落ち込んだ。BMWの09年の販売台数は前年比で60%減になっている。ポルシェは景気悪化で顧客からの自動車ローン返済が遅れているため、返済期限などに関する再交渉を行っているという。

09年(11月末時点)の販売台数をメーカー別にみると、地元のダチアが3万7,000台と30.4%のシェアを占め、第2位の現代(8.3%)を大きく引き離している。なお、国内に生産拠点を持つフォード(現在は商用車のみ生産)のシェアは6.5%。グループ別ではダチアが属する日産ルノーが38.1%で、フォルクスワーゲン(VW)グループ(16.1%)がそれに続く。

10年の新車販売市場について、BMWは09年と同様、悪い状態が続くとみており、VWグループは少なくとも10年半ば過ぎまでは景気は上向かないと予測している。なお、09年の中古車販売は21万2,000台と報じられている。

<高級輸入車は販売台数の6割がSUV>
輸入車では、07年から直営店による販売も行っているBMWが販売台数(09年1〜11月で1,023台)の60%を占める車高の高いSUVタイプのXシリーズを中心に攻勢をかける。「欧州では、ルーマニアほどXシリーズの人気が高い国はない」とBMW直営店アウトモビレ・バーバリアのべドナー・グループ営業課長は説明する。

同店はBMWを取り扱う国内11店舗のディーラーの統括も行っている。09年に引き続き10年も景気回復の見込みはないとして、新規ディーラーの発掘は控えるが、ディーラー網は現在の体制を維持するとしている。ただし、新モデルの投入だけは積極的に行い、10年だけで新たに6モデル8スペックを投入する計画だ。

BMWの場合、輸入先はモデルにより異なり、オーストリアからは「X5」、米国からは「X3」と「X6」(X3は10年以降)と、それぞれの各生産拠点から輸入する。同社では注文を受けてから購入者に引き渡されるまで、欧州生産モデルで1〜2ヵ月(工場出荷から販売店到着は約2週間)、米国生産モデルで3〜4ヵ月かかる。ただし、国内に在庫があるため、注文の80〜90%はこれよりも短い期間で引き渡すことができるという。

同じくドイツの高級車メーカーのポルシェも、「09年の販売台数は全体で100台近くを見込んでおり、そのうち60%は『カイエン』(SUVタイプ)が占めている」とポルシェ・ルーマニアのザイフェルト常務はいう。また、メルセデス・ベンツは「プロイェクト4」という企画で、特定の3人に同社のSUVを運転してもらい、その体験記を日々ブログに掲載してPRしている。

サンプルとして、同じ中・東欧のチェコとスロバキアでのBMWとポルシェの販売台数に占めるSUVのシェア(09年)を調べてみると、BMWは34%と13%、ポルシェは27%と22%という割合で、ルーマニアでの60%という数字にははるかに及ばない。

BMWの08年の販売台数(2,446台)の内訳をみると、X5(873台)、X3(278台)、X6(218台)の3タイプのSUVの合計シェアは56.0%と、SUVのシェアが60%とする同社べドナー・グループ営業課長のコメントどおりだ。また、ポルシェの同年の販売台数(118台)の内訳でも、SUVのカイエンが81台と68.6%を占め、やはりザイフェルト常務のコメントに沿った数字だ。なお、ルーマニアではSUVに特化した優遇税制はなく、割引価格による販売も特に行われていなかった。

ただ、各国の販売台数全体に占めるSUVのシェアには大差はない(図1参照)。また、ルーマニアの輸入車に占めるSUVのシェアは11.1%(09年)だったが、国産車も含めたシェア(7.6%)と比較しても、大差はない。つまり、ルーマニアでは、BMWやポルシェといった高級車クラスで特にSUVの人気が高いことが分かる。

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地元メーカーのダチアは10年4月から、同社初のSUV「ダスター」を国内で発売する予定だ(2010年1月28日記事参照)。これによって、今後大衆車クラスでもSUVのシェアが増加することになるとみられる。

<存在感のある大型車が好み>
高級車クラスでのSUVの人気は、ルーマニア人の性格に関係しているという見方もある。「ルーマニア人は自分が他人からどのように見られるかを重視しており、自分の所得に見合わないような高額商品でも、購入して見せびらかす傾向がある」とポルシェのザイフェルト常務は話す。また、存在感のある大型車を好む消費者の傾向は、中国の大都市の消費者と似ているという。

「ほかの国に比べてSUVの比率が特に高いとは思わないが、SUVはほかのカテゴリーに比べて販売の落ち込み度が少ない。ルーマニア特有の道路事情があることに加え、見栄っ張りともいえるルーマニア人に根強いSUV人気があることも無視できない」と話す自動車販売関係者もいる。

首都ブカレスト市内ではSUVを実用車としてではなく、ステータスとして購入している人が多いようだ。ブカレストの街中のいたるところに洗車場があり、ドライバーたちはこまめに洗車する。またすぐに汚れることが分かっていながら、泥や雪で汚れた車体をせっせと洗い流している。この風景は日本ではよく見かけるが、欧州では珍しいという。

また、SUV人気の別の理由として、実用的な面も挙げられる。自動車1台当たりの年間走行距離が欧州のほかの国に比べて長いが(図2参照)、SUVは整備状況が悪い道路を走るのに適している。国内道路インフラの整備が他国に比べて遅れていることも背景にあると考えられる。

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<ブランディングに注力するVWグループ>
ルーマニアではポルシェ・ルーマニアとして展開するVWグループは、ブランディング(ブランド構築活動)の重要性を強調する。同グループのシュコダはチェコ周辺の中・東欧諸国では大衆車として認識されており、ルーマニアでも数年前までは安い車というイメージを持たれていた。しかし、既にダチアという国産の大衆車ブランドがあったため、シュコダのブランドイメージを高めるよう努め、ダチアと区別させることで1つ上のランクのブランドとして認識されるようになった。現在では、中級車オペルと同レベルと認識されている。

同グループはブランディングにより、大衆車ダチアとの競合を避け、中・高級車クラスに注力できるようになった。高級車クラス(アウディ)の競合相手としてはBMWとメルセデス・ベンツを、中級車クラス(VW、シュコダ)ではルノーを、それぞれ意識している。高級車クラスでは、08年はBMWとアウディとの競争だったが、09年はメルセデス・ベンツとアウディとの競争だった、とザイフェルト常務は振り返る。

同グループは、購入時の自動車ローンの利用や損害保険の加入といった金銭面のワンストップサービスを提供するポルシェ銀行との連携を積極的に行っている。同行の金融サービス利用による自動車購入は、同グループ商品購入者全体の40%に上り、同行が拠点を置くどの中・東欧諸国と比べても、かなり高い割合だという。

<BMWは手厚いアフターサービスを充実>
BMWは、アフターサービスの充実を図っている。購入者には会員証のような専用カードを配布しており、購入後5年間、または購入時からの総走行距離が10万キロを超えるまでの期間のどちらかの短い期間内は、このカードを見せるだけで、欧州域内のBMW販売店各店ですべてのメンテナンスサービスが受けられる。同サービスは購入費用に含まれているため、何度利用してもすべて無料だ。

金融危機により新車市場規模が半分以下に落ち込んでいるが、ザイフェルト常務は「長期的にみた場合、ルーマニア市場をポジティブにとらえている」と話している。

(古川祐、余田知弘)

(ルーマニア)

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