世界の政治・経済日程(2010年)
欧州課
2009年12月28日
2010年のEU議長国は、前半をスペイン、後半をベルギーが務める。これまでは、通常年4回開催される欧州理事会(EU首脳会議)の議長を議長国首脳が務めた。しかし、新しく発効したリスボン条約の下では、ファンロンパウ常任議長が調整を主導することになる。EU議長国は外相理事会を除く閣僚理事会の議長を務めるなど事務局機能を持つため、引き続きその役割は大きいが、外相理事会の議長を務めるアシュトン外務・安全保障上級代表を含め、どのように役割を分担していくのか、試行錯誤が続くとみられる。
リスボン条約の発効の遅れに伴い、発足がずれ込んでいた新しい欧州委員会は、1月に欧州議会でヒアリングを実施し、問題がなければ2月にも発足する見込み。2期目を迎えるバローゾ新体制は、気候変動ポストなど重要課題に取り組むための新規ポストを設けた。また、金融規制改革で主導権を握るため、フランスが域内市場・サービス担当としてバルニエ候補を推挙したことが注目される。
EU加盟交渉は、クロアチアが大詰めを迎えており、早ければ10年に実質合意、11年の加盟を見込んでいる。アイスランドも、漁業政策や国内の支持率の低下など懸念材料はあるものの、欧州経済領域(EEA)によってEUの法規の多くを既に取り込んでおり、早期の加盟が期待されている。マケドニアは、ギリシャとの国名紛争を原因とする長年の停滞を経て、欧州委が08年10月に加盟交渉の開始を勧告した。しかし、ギリシャとの紛争は解決しておらず、加盟交渉開始に必要な加盟国の合意が得られていない。
セルビアは旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所(ICTY)への協力が評価され、加盟の前提となる安定化・連合協定(SAA)の暫定協定の実施開始が12月に決定された。半年後にはSAAを批准するかどうか見直しを実施するとしており、一定の進展が見込まれる。
金融危機の影響で09年に大きく落ち込んだ欧州経済は、スクラップ・インセンティブなどの財政・金融措置が功を奏し、10年には持ち直す見込み。欧州委は「秋季経済見通し」(09年11月)で10年のEUの実質GDP成長率を0.7%と予測している。しかし、各国の財政状況は悪化し、現行以上の財政出動の余地は少ない。失業率も10.3%と高水準が予想されるなど、不確実性は払拭できておらず、厳しい情勢が続く。
ユーロ圏の金融政策について、欧州中央銀行(ECB)は金融危機対策として導入した1年物資金供給オペを09年12月限りで終了し、出口戦略に着手した。09年11月の消費者物価上昇率(前年同月比)は0.6%で、中長期的には「2.0%を下回るか、その近辺」とする政策目標に近づく見込みだ。当面はインフレ圧力は低く、経済見通しの不確実性を踏まえた慎重な姿勢を崩さないとみられる。
09年10月に仮調印されたEUと韓国との自由貿易協定(FTA)交渉は、10年3〜4月ごろに正式な署名が見込まれている。10年後半に関税引き下げが開始されれば、韓国企業と競合する日本企業は大きな影響を受ける。また、アンデス共同体、中米諸国とのFTAを含む連合協定の交渉が大詰めを迎えており、スペイン議長国期間中に妥結できるかが焦点になる。
欧州の化学物質規制(REACH規則)に基づき、11月30日に年間の製造または輸入量が1,000トン以上の物質などの登録期限を迎える。未登録の化学物質はEUで輸入・販売できず、関係企業のREACHへの対応がいよいよ本格化する。
英国では6月に下院議員の任期が満了し、総選挙が行われる。労働党のブラウン政権の支持率は低迷し、前哨戦となった09年6月の欧州議会選挙、地方選挙でも労働党は大敗した。ブラウン首相は内閣改造などで支持率引き上げを図るが、厳しい情勢だ。保守党はEUに懐疑的だとみられており、政権交代は英国にとどまらずEU全体の動向にも大きな影響を及ぼす可能性がある。
チェコではEU議長国だった09年5月以来暫定政権が続くが、当初09年秋にも実施予定だった総選挙は、10年5月に延期された。ハンガリーでも、金融危機に端を発する経済不安から暫定政権が続き、春先に総選挙が行われる予定。
ドイツでは5月に最大州のノルトライン・ウェストファーレン州議会総選挙が行われる予定。09年9月の総選挙で勝利したメルケル政権は政策の見直しを進めるが、特に選挙への影響が大きい脱原発政策の修正などは、同州の選挙が終わってからでないと具体化しないとみられている。
<1月>
1月26〜27日北欧閣僚理事会(コペンハーゲン)
1月中ルーマニア新政権発足予定
1〜6月スペインがEU議長国に就任
<2月>
2月中欧州委員会新体制発足(見込み)
2月中ギリシャ大統領選挙(間接選挙)
<3月>
3月3日オランダ地方選挙
3月7日スイス国民投票(企業年金の受給年齢法改正案の承認など)
3月14日、21日フランス地域圏議会選挙
<4月>
4月中オーストリア大統領選挙
<5月>
5月9日ドイツのノルトライン・ウェストファーレン州議会選挙
5月20〜21日北欧首脳会議(デンマーク・ヘルシンゴー)
5月中チェコ下院総選挙
5月英国下院総選挙(6月3日までに実施)
<6月>
6月中スロバキア総選挙
<7月>
7〜12月ベルギーがEU議長国に就任
<9月>
9月19日スウェーデン総選挙
9月26日スイス国民投票
<10月>
10月2日ラトビア総選挙
10月4〜5日アジア欧州会合(ASEM)首脳会議(ブリュッセル)
10月中ボスニア・ヘルツェゴビナ総選挙
<11月>
11月30日EUのREACH規則による年間の製造または輸入量が1,000トン以上の物質などの登録期限
<日程未定>
9月または10月ポーランド大統領選挙
春ハンガリー総選挙
秋チェコ上院選挙(3分の1改選)、地方選挙
欧州理事会(EU首脳会議)(ブリュッセル:3月25〜26日、6月17〜18日、10月28〜29日、12月16〜17日)
EU一般問題理事会、外相理事会(ブリュッセル:1月25〜26日、2月22〜23日、3月22〜23日、5月10〜11日、7月19〜20日、9月13〜14日、11月22〜23日、12月13〜14日)(ルクセンブルク:4月26〜27日、6月14〜15日、10月25〜26日)
EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル:1月19日 、2月16日、3月16日、5月18日、7月6日、7月23日、11月17日、12月7日)(ルクセンブルク:6月8日、10月19日)
EU競争担当相理事会(ブリュッセル:3月1〜2日、5月25〜26日、11月25〜26日)(ルクセンブルク:10月11日)
欧州議会会議(ストラスブール:1月18〜21日、2月8〜11日、3月8〜11日、4月19〜22日、5月17〜20日、6月14〜17日、7月5〜8日、9月6〜9日、9月20〜23日、10月18〜21日、11月22〜25日、12月13〜16日)(ブリュッセル:2月24〜25日、3月24〜25日、5月5〜6日、10月6〜7日、11月10〜11日)
欧州中央銀行(ECB)政策理事会(フランクフルト:1月14日、2月4日、2月18日、3月4日、4月8日、4月22日、5月20日、6月10日、7月8日、7月22日、8月5日、9月2日、10月21日、11月4日、11月18日、12月2日)(リスボン:5月6日)、(アムステルダム:10月7日)
欧州中央銀行(ECB)一般理事会(フランクフルト:3月18日、6月24日、9月16日、12月16日)
(欧州)
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