新型インフル、危機段階を最高レベルに引き上げ
ソウル発
2009年11月04日
政府は新型インフルエンザの危機段階を最高レベルの「深刻」に引き上げ、省庁横断的な中央災害安全対策本部を設置することにした。今後、重病患者の治療体制強化、学校での予防接種早期完了などを進める。
<毎日9,000人の患者が発生>
国内の新型インフルエンザによる死者数は、11月3日現在で42人に達した。また、外来患者1,000人当たりのインフルエンザ類似症状者数(注)は、10月第4週(10月18〜24日)には20.29人と、前週(9.26人)の2.2倍に上昇するなど、患者数が急増している。毎日約9,000人の新型インフルエンザ感染者が新たに発生しているとみられている。
このため、保健福祉家族部は11月3日、新型インフルエンザの「国家伝染病危機段階」 を、現行の「警戒」から最高レベルの「深刻」に引き上げ、行政安全部に「中央災害安全対策本部」の設置を要請したと発表した。「国家伝染病危機段階」は2006年8月に世界的な鳥インフルエンザ流行を機に設定されたもので、 新型インフルエンザは5月1日に最低レベルの「関心」から「注意」に、7月21日に「注意」から「警戒」にそれぞれ引き上げられていた。
今回、危機段階が「深刻」になったことにより、まず、11月4日にも全省庁横断的な組織である「中央災害安全対策本部」が発足し、重症患者の治療体制強化、学校での予防接種の早期完了、抗ウイルス剤の積極的な投与などの措置が取られる。学校での予防接種については11月11日から開始し、従来の予防接種計画を1、2週間短縮して、1ヵ月以内に終える方針を明らかにした。
保健福祉家族部は「現在、既に最高レベルに準ずる対策を取っているため、市民生活に大きい変化は生じない」と説明している。さらに同部は、各種行事の縮小や旅行の自粛の勧告、小中学校に対する一斉休業令について、感染防止効果よりも副作用が大きいことを考慮し、発令しないことにした。
<旅行業、学習塾、レジャー産業に打撃>
それでも、新型インフルエンザの流行は、回復基調にある国内経済に影響するとの見方も出ている。国内サービス産業の中でも旅行業、学習塾、レジャー産業などは回復が遅れているが、「聯合ニュース」(11月3日)は「国内景気が完全には回復していないせいもあるが、これらの産業は市民の野外活動と密接に関連しており、新型インフルエンザの余波を直接受けているためと政府はみている。今後、これらの産業の被害が急増するとみられる」と報じている。
(注)全国に817ヵ所ある標本監視医療機関での数値。
(百本和弘)
(韓国)
ビジネス短信 4af0eba6ccd58




閉じる
