エコ券の支給で環境製品普及を後押し−欧州各国の環境ビジネス支援策−

(ベルギー)

ブリュッセル発

2009年09月11日

エコ券(小切手)の支給が7月から始まっている。労使協約を締結した企業は、従業員に非課税のエコ券を支給し、従業員はエネルギーや水の節減、環境にやさしい移動手段の普及につながるエコ製品・サービスなどが購入できる仕組みだ。

<消費刺激とエコ製品普及が狙い>
エコ券は、2009〜10年の全国職業間合意(AIP、注1)で、手取り給与の引き上げ交渉の中で導入された。景気後退を受けて縮小した購買力を向上させるとともに、エコ製品の普及・拡大を図るのが狙いだ。

エコ券は企業が従業員に対して支給し、従業員はさまざまなエコ商品・サービスの購入に充てることができる。ベルギーでは、既に慣例として企業が従業員に食事券(Cheques-repas)を支給し、全国の加盟店で使用できる仕組みがあるが、これと同様の仕組みだ。政府からの補助はないが、食事券と同様に社会保障負担が免除されるほか、従業員側にとっても所得税の課税対象にならないため、労使双方にとって税制上の利点がある。

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国王令(Arrete royal)を掲載する官報「モニター・ベルジュ」〔5月20日、38188ページ(PDF)〕によると、エコ券は原則として、産業部門別または企業別の労使協約(CCT)に基づいて支給される。社内に労働者組織がない場合やCCTがない労働者層に属している、といった場合でも、個別の書面協約で、1枚当たり最大10ユーロまでの額面と配布頻度を決めることができる。

エコ券の使用期限は支給日から最大24ヵ月で、09年2月20日の全国労働評議会(CNT)(注2)で決定されたCCT No.98の付属書(PDF)で定義された製品・サービスと交換できる。これらの情報が明示されていないエコ券は賞与とみなされ、課税対象となる。また、現金化はできない。

上記付属書のリストによると、a.エネルギーの節減、b.水の節減、c.環境にやさしい移動手段の普及、d.廃棄物の管理、e.エコ概念の促進(欧州エコラベルに適合する製品とサービス)、f.自然への配慮の促進、といった項目に分類される製品やサービスが対象になる。具体的には、省エネ電球、住宅の断熱設備、節水シャワーヘッド、自転車、太陽電池パネル、園芸用品、再生紙などが対象になる。このリストは10年中に見直しが行われる。

<09年は最大125ユーロを支給>
例えば、産業別の労使調停委員会(CP)No.218というグループ(その他のホワイトカラー)に所属する場合、支給年の前年(6月〜5月)の労働時間を基準として決定する。ただし、09年11月に初めてエコ券が支給される同グループの従業員については、移行措置として、08年11月〜09年10月の労働時間が基準となる。この期間にフルタイム勤務した場合、09年11月から1人当たり125ユーロ分のエコ券を受け取ることになる。

企業は従業員1人に対し、09年は最大125ユーロ、10年は最大250ユーロ分のエコ券を支給することができる。11年以降は、CNTの全会一致の合意があれば250ユーロの支給が継続される。

なお、企業は食事券と同様に、アコー・サービス(Accor Services)やソデクソ(Sodexo)といった発券会社からエコ券を購入し、従業員に支給する。支給されたエコ券は、最寄りのクレフェル(KREFEL)、マッシブ(MASSIVE)、フナック(fnac)などの電気製品店のほか、ブリコ(BRICO)やユボ(Hubo)といったDIY専門店など国内約2,000ヵ所(09年6月時点)で利用できる。

(注1)全国職業間合意(AIP)は、民間企業の労使代表によって2年に1度行われる交渉での合意事項。対象期間(2年間)の(物価上昇分を除く)給与の引き上げ、社会保障負担の軽減などについて交渉する。AIPは常に個別の労使協約や法令に置き換えられる必要がある。08年12月22日に署名された09〜10年のAIPは、経済危機を踏まえ、エコ券の導入などを通じた購買力強化で合意した特別な内容となっている。
(注2)全国労働評議会(CNT)は、雇用者団体、被雇用者団体双方の代表から成る国立の組織。労働・雇用契約、労災、最低賃金、超過勤務などあらゆる労使問題について、自主的に、または閣僚や議会からの要請に応じて意見を出している。CNTが出す意見は、あらゆる階層の労働者の意見を包括したものでなければならない。政府は特定の法令の発効に際して、CNTに諮問しなければならない。

(和泉浩之)

(ベルギー)

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