新型インフルの死亡者が世界一に−9月2日現在で657人−

(ブラジル)

サンパウロ発

2009年09月04日

保健省は2009年9月2日、国内の新型インフルエンザによる死亡者が657人に達したと発表した。ブラジルの死亡者は世界一で、2位の米国を約100人上回っており、約4割がサンパウロ州に集中している。

<致死率では世界第6位>
「死亡者数世界1位」のニュースは国内でも流れているが、サンパウロなど大都市でも大きな混乱はみられず、マスクをしている通行人も少ない。企業でも、入口や社内での消毒用のジェル状アルコールの設置や、妊娠している社員の在宅勤務許可などの対応はしているが、大部分は通常の操業を続けている。

保健省によると、9月2日時点のブラジルの死亡者は657人で、以下、米国(556人)、アルゼンチン(465人)、メキシコ(193人)と続く。一方で、人口に占める致死率をみると、ブラジルは0.34%で6位。致死率1位はアルゼンチンの1.15%で、以下、チリ(0.76%)、コスタリカ、オーストラリア(ともに0.72%)、パラグアイ(0.64%)と続く。

ブラジルの死亡者数が多い理由について、人口が多い南部、南東部を中心に冬期に冷え込む地域が多いなどの要因もあるとみられるが、WHOは「ブラジルと米国で死亡者が多いのは、両国政府が事例報告に関する透明性でトップクラスにあるため」とも指摘している。

国内の死亡者数を州別にみると、1位はサンパウロの261人で、以下、パラナ186人、リオグランデ・ド・スル100人、リオデジャネイロ66人と続く(表参照)。人口10万人当たりの致死率が最も高い州は、パラナの1.74%だった。

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<政府はタミフル備蓄を進める>
保健省によると、9月2日時点で国内の新型インフルエンザ感染確認者は6,592人となった。同省傘下の国家衛生監督庁(ANVISA)は、一般風邪薬のテレビコマーシャルの放映を禁止した。これは、新型インフルエンザ感染者が一般の風邪薬を服用するだけで済ませ、医療機関に行かなくなることを防ぐためだ。

タミフルの販売は引き続き行われており、保健省も備蓄分として購入し、重症化した患者に優先的に行きわたらせるようにしている。国内ではまだワクチンは製造していないが、サンパウロのブタンタン研究所と保健省傘下のオズバウド・クルース財団(Fiocruz)で生産を予定している。

公立の小中学校を中心に、校内での児童・生徒の感染拡大を防ぐため、新学期の開始を2週間遅らせて8月17日から始めるという措置が取られた。サンパウロ市内の日本人学校も、現在は平常どおり授業している。在サンパウロ日本国総領事館は、ウェブサイトや電子メールを通じて、在留邦人に対して国内の感染状況、医療機関に関する情報を提供している。

(大岩玲)

(ブラジル)

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