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ASEANとのFTA効果は限定的−完成目前、ASEAN+1FTAの影響−

(韓国)

ソウル発

2009年09月01日

韓国・ASEAN自由貿易協定(KAFTA)の物品貿易協定は発効から2年経過した。1年目に対ASEAN輸出が24.9%増加するなど、ある程度の効果があったとされる。しかし、企業の特恵関税利用率は低く、政府の積極的な広報が必要との指摘もある。政府は、アジアの経済統合に向けたASEAN+6に対してはやや否定的なスタンスだ。

<対ASEAN貿易に一定の効果>
政府はすべての主要経済圏とのFTA締結を目標としており、その一環としてKAFTA締結を推進してきた。KAFTAは、2007年6月に物品貿易協定(注1)、09年5月にサービス貿易協定がそれぞれ発効し、09年6月には投資協定にも署名した(2007年11月26日記事12月25日記事2008年9月2日記事11月5日記事参照)。

KAFTA物品貿易協定は、対ASEAN貿易に一定の効果をもたらした。表1はKAFTAの発効前後の韓国の対ASEAN貿易を比較したもので、発効1年目(07年6月〜08年5月)に対ASEAN輸出が前年同期比24.9%、輸入が21.0%増加した。この伸び率は、同期の対世界、米国、日本など主要貿易相手国の伸び率を上回った。発効2年目(08年6月〜09年5月)は、世界的な金融危機の影響で輸出入ともに減少したものの、減少幅はほかの主要貿易相手国に比べ小さかった。

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KAFTAにより韓国側が恩恵を受けたのは、自動車・同部品、液晶ディスプレー・センサーなど。発効1年目に、自動車輸出は前年同期比59.7%増の13億1,100万ドル、自動車部品輸出は、2.3倍の6億2,200万ドルを記録した。液晶ディスプレー・センサーは70.3%増、石油製品は69.9%増など、韓国の対ASEAN輸出の主力製品の大半が伸びた。

<対韓輸入の特恵関税使用率は1ケタ台>
しかし、物品貿易の増加効果は必ずしもKAFTAの特恵関税の利用によるものばかりとはいえない。表2は、対外経済政策研究院(KIEP)が8月4日に発表した韓国側の対ASEAN輸入特恵関税の利用率とASEAN側の対韓輸入特恵関税使用率を示す表だ(注2)。

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表2をみると、韓国の対ASEAN輸入では発効1年目は38.0%、発効2年目は49.1%の利用率を、ASEANの対韓輸入(韓国の対ASEAN輸出)では3.9%、2.6%の使用率と、いずれも低い水準でとどまっている。特に、対韓輸入の特恵関税の使用率は、1ケタ台を記録しており、KAFTAによる関税撤廃は十分活用されていないことが分かる。

<広報不足、情報収集の困難などが低利用の因>
FTA制度の活用が低調な理由として、KAFTAについての広報不足や正確な情報収集の難しさなどが指摘されている。KIEPのアンケート調査(注3)によると、回答企業の77.3%がKAFTAの特恵関税を「申請したことがない」としている(図1参照)。また、KAFTAの活用が難しい理由としては、48.7%の企業が「広報不足」、31.1%の企業が「正確な情報収集が困難」などを挙げており(図2参照)、政府の一層の努力を求める声が高かった。

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しかし、回答企業の67.8%が「KAFTAは両者間の貿易に実際に役に立つ」と答えたこと、特恵関税を申請していないか一部品目だけ限定的に申請した企業のうちの60.5%が「今後KAFTAを活用する計画がある」と答えたことは、KAFTAに対する今後の期待の高さを示すといえよう。

政府もKAFTAをはじめとする各国とのFTAについて広報活動に力を入れている。政府公式FTAポータルサイトの開設をはじめ、FTA活用総合支援FTA国内対策委員会などのウェブサイトを運営している。これらのウェブサイトには、各種FTAの現状や既締結FTAの協定文、FTA活用方法、FTA締結による被害対策などの情報が網羅されている。しかし、国内の広報活動にとどまらず、FTA締結相手国に対する広報にも力を入れる必要があるとの指摘もある。特に、開発途上国が多いKAFTAの場合、相手国に対する一層の広報が必要とされている。

<ASEAN+6には否定的な姿勢>
政府は、KAFTAだけでなくASEANを含む東アジア域内での多国間経済協力にも力を入れている。特に韓国は、ASEAN+3(日中韓)で構成される東アジア自由貿易地域(以下、EAFTA)構想に関心が高い。EAFTA構想は民間レベルでの共同研究を終え、政府レベルでの研究に入ることが決まっている。韓国は、この政府レベルでの共同研究でイニシアチブを取り、日中のEAFTAのリーダーシップ競争を牽制することを狙っている。

一方、韓国は、日本がその重要性を主張しているASEAN+6(日中韓、インド、ニュージーランド、オーストラリア)で構成された東アジア経済連携構想(CEPEA)には否定的なスタンスだ。その理由は、a.日本のイニシアチブで進行しているため、韓国の主導権確保が難しい、b.既にインド、ニュージーランド、オーストラリアとはFTAを推進しており、CEPEAの必要性がない、などだ(注4)。実際、韓国はインドとの包括的経済連携協定(CEPA)に署名し(2009年8月7日記事参照)、ニュージーランド、オーストラリアとは政府間交渉を行っている(2009年3月11日記事参照)

(注1)07年6月の発効国は、韓国、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、シンガポール、ベトナムで、現在はタイを除いたASEAN全加盟国で発効している。タイは、署名(09年2月)を終え、現在、発効のための国内手続きが進行中。
(注2)対ASEAN輸入の特恵関税活用の尺度として輸入特恵関税利用率を使用。利用率(Utilization Rate)は、FTAによる特恵関税の恩恵を受けられる輸入財貨の輸入金額全体のうち、実際に特恵関税により輸入された金額の比率を意味する。一方の対ASEAN輸出の特恵関税活用の尺度としては輸出特恵関税利用率を使用すべきだが、ASEAN全加盟国の通関データの入手が不可能なため、(ASEAN側の)輸入特恵関税使用率を使用。使用率(Utility Ratio)とは、特定の国家から輸入された輸入金額合計のうち、特恵関税により輸入された金額の比率を意味する。輸入金額合計を分母にするため、利用率よりは低い値になる。ASEANに輸出するため韓国内で発給された原産地証明書のすべてがASEANで特恵関税の対象になることが使用率算定の前提となっている。つまり、使用率の算定式は、「韓国で発給された原産地証明書/ASEANの対韓輸入」になる。
(注3)KIEPが09年5〜6月にASEAN現地(マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)で韓国物品を輸入している400社の企業に対し訪問と電話で実施したアンケート。
(注4)サムスン経済研究所「SERI経済フォーカス」第217号(08年11月3日)、1〜14ページ。

〔李海昌(イ・ヘチャン)〕

(韓国)

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