新型インフルエンザの感染拡大に注意−聖地巡礼に伴う感染拡大が懸念される−
リヤド発
2009年08月24日
サウジアラビアでは8月22日より断食月(ラマダン)に入った。国内外の人の移動が増える中で、新型インフルエンザの感染拡大が懸念される。
断食月(ラマダン)は9月19日までの約1ヵ月間。イスラム教徒にとって断食月は「聖なる月」であり、この期間には小巡礼(ウムラ)のために聖地(メッカとメディナ周辺)を訪れる人が増加する。これに伴い心配されているのが、新型インフルエンザの拡大だ。保健省によると、8月21日現在、サウジアラビア国内における新型インフルエンザによる死亡数は16人で、病院を受けた感染数は少なくとも2,000人に上っている。
11月下旬の大巡礼(ハッジ)には、国内外から約300万人の巡礼者が聖地を訪れるため、さらなる感染拡大の恐れがある。これに対して政府は、7月に開催されたアラブ諸国の保健相による会議において、11歳以下の子ども、66歳以上の老人、妊婦、特定の既往症のある国外からの巡礼者を受け入れないことを発表している。これに加えて、巡礼者に対する渡航前の予防接種や、巡礼中のマスク着用を義務付けるという案も議論されている。
<過度の懸念は不要だが、感染の恐れがある場合は速やかに相談を>
巡礼以外のサウジアラビアへの渡航に関しては、特段の注意は発出されていない。出張する場合は、外務省が発表している「海外安全ホームページ」で、渡航前に最終情報を収集することが望ましい。また、同国内における流行状況については、在サウジアラビア王国日本大使館が情報収集と提供に努めており、ウェブサイトで確認できる。
サウジアラビア滞在中に新型インフルエンザに感染した恐れがある場合は、現地の病院にて検査(痰など検体を採取)を受けることが可能。断食月は、開院時間が普段と異なるので注意してほしい。リヤドの日本国大使館及びジェッダ日本国総領事館には、医務官が常駐しており、相談も受け付けている。サウジアラビア国内では、タミフルなど抗インフルエンザ対抗薬を一般薬店で入手できる(正式には、購入に際して医師による処方箋が必要だが、適用実情は厳しくない)ため、過度の懸念は不要である。
(注)サウジアラビアが採用しているヒジュラ暦は西暦より11日間短いため、断食月の開始も西暦では毎年11日ずつ前にずれていく。また、断食月の開始日は宗教学者による委員会が月の満ち欠けを目視によって確認し、直前に公表する。
(福山豊和)
(サウジアラビア)
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