新型インフルエンザ感染が急拡大
ニューデリー発
2009年08月13日
国内で新型インフルエンザによる死者と感染者が増え続け、特に集団感染が確認されているマハラシュトラ州では、学校や商業施設などが閉鎖される事態に発展している。日本人社会には大きな混乱はみられないが、状況の進展を注視している。
<プネなどで死者は計17人に>
8月3日に初の死者が報告されて以来、12日までに、新型インフルエンザの死者は17人に上り、感染者は1,000人を超えた。これまで、海外からの帰国者による発症例が主だったが、8月に入り、都市部を中心に渡航経験のない人の感染例が相次ぎ、感染者数が急増している。
特に、集団感染が確認されているマハラシュトラ州西部プネ市では、これまで10人の死亡例が報告されている。そのほかの死亡例は、同州ムンバイとその近郊で2人、同州ナシック、グジャラート州アーメダバード、同州バドーダラ、タミルナド州チェンナイ、ケララ州ティルバナンタプラムで各1人となっている。プネ市、ムンバイ市に次いで感染者の多い北部デリーでは死亡例は報告されていない。
<マハラシュトラ州は全公立学校を1週間閉鎖>
感染の急拡大を受け、8月10日、マハラシュトラ州政府は、州内の公立学校(小学校から大学まですべて)を1週間閉鎖すると発表、プネ市やムンバイ市では商業施設(映画館、ショッピングモールなど)にも1週間の閉鎖を指示した。そのほか、複数の感染者が確認されている州や都市でも、各自治政府の判断で、一部の学校を休校するなどの措置をとっている。
プネ市内は、屋外でもマスクを着用している姿が目立つものの、特段混乱した様子はみられない。社内で全員にマスク着用を義務付ける地場企業なども現れているが、出社制限をする企業は少ない。しかし、報道によると、一部の地場大手企業は、プネへの社員の出張を制限している。
ムンバイ市内はマスク着用者も少なく、プネと比べると平穏を保っているが、8月12日にはすべての商業施設が閉鎖されており、また祭事シーズン(8月14日〜23日)の活動自粛を求める要望が市民から裁判所に出されるなど、緊張感は高まりつつある。
首都デリー市内は、マスクをしている人はほとんどおらず平穏だ。閉鎖する商業施設などもない。ただし、州政府は市内すべての学校に対し、症状のある児童の登校禁止を徹底するよう通達を出しており、一部の学校で休校にするなどの動きがみられる。
一方、感染が拡大している地域では、病院や検査機関の対応が追いつかず、現場は混乱しているようだ。現在、指定公立病院だけが新型ウイルスの検査窓口となっているが、検査を求めて多くの人が連日押し寄せているため、対応しきれていない。政府は、検査キットの調達を急ぐとともに、近く指定私立病院での検査と治療を認める方針を明らかにした。また、全国的な流行に備え、抗インフルエンザ薬の市中薬局での販売を解禁することも、検討し始めた。さらに、各州政府に対し、州首相直属の緊急対策本部を設置するよう指示し、実態の把握に努め、対応策を講じるようにしている。
<日本人社会は状況を注視>
これまでのところ、日本企業や在留邦人の間では、特段の混乱は出ていない。日本大使館は、在留邦人に対して電子メールで注意を喚起するとともに予防の徹底を呼びかけている。デリーの日本人学校では、父兄に対して注意を喚起し、感染の疑いがある生徒を登校させないよう書面で通告している。
ジェトロが実施した進出日系企業への聞き取り調査によると、デリー、ムンバイ、プネ、バンガロールの進出日系企業は、ほぼ通常どおりの体制をとっている。ただし、各社とも事態の推移を注視しており、状況が悪化した場合の行動指針を本社などと確認しているようだ。各都市の日本商工会でも、原則として各社ごとに対応することにしている。
(河野敬)
(インド)
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