新型インフルエンザの水際防止策を緩和−旅行客は1割減−

(香港)

香港発

2009年06月02日

香港政府は、新型インフルエンザ感染拡大のリスクを評価できるデータがそろったとして、今後は患者が1人確認された段階で滞在先のホテルを完全封鎖することはしないと発表した。5月28日には中学校で初の患者が確認され、2週間の休校となった。5月初めから香港への旅行客数は1割ほど減った。

<通院検査などで対応>
香港政府は、新型インフルエンザ患者が初めて確認された5月1日に、患者が宿泊したホテルを1週間封鎖した。しかし5月21日からは、患者が確認されても発症していない接触者は隔離していない。代わりに、1週間毎日、指定病院で検査を受け、タミフルを服用するよう指示している。病院に行かなかったり指示に従わなかったりすると、強制的に隔離される。接触者とは、飛行機では患者の同行者、前後3列の座席の乗客や担当乗務員、ホテルでは同じ階の宿泊客やスタッフなどだ。

これまで確認された患者はすべて海外で感染しているが、政府は香港内での感染者(海外での感染か海外感染者からの感染だと確認できない患者)が確認されたら、水際防止から影響緩和策に移行し、すべての小学校や幼稚園を最長2週間休校にしたり、集会を取りやめさせるなどの措置を取ることにしている。

5月28日に中学校で初の患者が確認された際には、その学校を2週間休校にし、学校施設を消毒した。

<健康申告書の記入項目増える>
香港国際空港では、日本を含むすべての国・地域からの渡航者が、健康申告書の提出を求められ、到着ロビーで検疫される。機内検疫はない。温度計測器(サーモグラフィー)で体温が38度以上あれば、空港にいる医者の簡単な検査を受け、医者の判断で指定病院に移送される可能性がある。せきなど発熱以外の症状があったり、日本など感染が拡大した国から渡航すると、感染の可能性が高いと判断される。新型インフルエンザと確認されたら、指定病院などに隔離される。

空港の健康申告書は、6月1日から香港で利用予定の交通機関など、記入項目が増えた。

香港と陸続きの深センとの出入りでは、空港よりは簡単な書式の健康申告書の提出が求められる。深セン入りの方が厳しく、特に日本など流行国に滞在したことがあれば、パスポートを確認する入境手続きの前に、検疫手続きもする必要がある。

<旅行者客や帰国者に注意を呼びかけ>
香港政府の周一嶽(ヨーク・チョウ)食品・衛生局長は「患者数は増えているが、死亡率が低く治せるので、市民はいつもどおり旅行してほしい」と話している。感染拡大国から香港入りする旅行者・帰国者に対し、香港政府は以下のとおり呼びかけている。

○出発前に熱やせきなどの症状があれば、香港訪問を延期する。
○個人衛生に注意し、飛行機の中や空港でマスクを付けることを勧める。
○機内で症状が出た場合、マスクを付け、乗務員に連絡する(その後乗務員が当局に連絡する)。
○健康申告書は誠実に書かなくてはいけない。
○香港に到着してから7日間マスクを付けることを勧める(注)。発熱などの症状があれば、医者にかかる。

なお、香港での新型インフルエンザ発生状況は、衛生局衛生署衛生防護センター(英語・中国語)在香港日本総領事館(日本語)のウェブサイト参照。

香港旅遊発展局によると、香港への旅行客数は5月初めから、中国からも全世界からも以前に比べ1割近く減っている。

(注)ただし、街でマスクを付けている通行人は全く見かけない。

(姚慧俐、森田悟)

(香港)

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