日本からの渡航者に特別な措置は講じず−保健省に確認−
バンコク発
2009年05月21日
日本での新型インフルエンザ感染者急増を受け、当地では日本からの旅客に特別な措置を講じるとの報道があったが、保健省にはこのような考えはないことが確認されている。また、タイ旅行中に新型インフルエンザ感染が原因と疑われて死亡したドイツ人女性は、検査の結果、新型インフルエンザに感染していなかったことが確認された。
<「日本に限定した特別措置は考えていない」>
「バンコク・ポスト」紙(5月19日)は、日本で新型インフルエンザの感染が拡大していることを受け、「タイの関係機関は空港でより徹底した注意を払う。国籍に関係なく、日本の空港を経由してタイに入国する乗客は全員、健康チェックを注意深く行う」と、日本からの旅客に特別な措置を講じる可能性があると報じた。
これを受け19日、ジェトロが在タイ日本大使館に問い合わせたところ、大使館は「保健省は日本に限定して特別の措置をとることは考えていない」ことを確認した。
20日には、在タイ日本大使館の新型インフルエンザの発生について「続報11」でも周知されている。「続報11」では、保健省の情報として、4月28日〜5月19日のタイ国内の新型インフルエンザに関する報告累積数が207人、うち新型インフルエンザ患者として確定が2人(既に完治)、調査・検査中が18人、残りは新型インフルエンザに感染していないことが判明していることを紹介している。
<死亡した女性は新型インフルエンザと無関係>
各種報道によると、保健省は19日、「新型インフルエンザ感染の疑いで検査されていたドイツ人女性旅行者が、滞在していたホアヒンからバンコクの病院に移送途中の18日夜に死亡した。感染の有無を検査中だ」と公表した。
この女性は12日に同伴男性とともにタイに入国し、数日後に高熱など新型インフルエンザの症状を訴えていたという。その後の検査結果で、死亡原因は肺炎で、新型インフルエンザではないことが確認された(「ネーション」紙5月20日)。19日現在、タイでは新型インフルエンザによる死亡者は出ていない。
<日本からの旅行者は大幅減少の見込み>
新型インフルエンザの感染が拡大する中、タイの観光は大きな影響を受けるとの見方がある。「ネーション」紙(5月20日)によると、タイ日観光協会(TJTA)は、日本人の訪タイ者が2009年下半期には約60万人減少すると見込んでいる。入手できる最新の統計である07年をみると、07年下半期の日本人訪タイ旅行者は約66万人だったため、9割減という大きな減少を見込んでいることになる。さらに、同協会は、ドイツ、スカンジナビア諸国、米国、カナダ、東欧諸国などからの旅行者数も今後数ヵ月間は落ち込むと見込んでいる。
なお、タイ旅行業協会は、08年11〜12月のスワンナプーム国際空港閉鎖や09年4月のパタヤ、バンコクでの騒動がマイナス要因となり、09年1〜4月の外国人旅行者数が前年同期比50%減になったとの見方を示している。
<保健省は公衆衛生勧告を発出>
保健省は、新型インフルエンザ発生に関する「公衆衛生勧告(Public Health Advice)」(5月12日付「その5」まで発出済み)を公表している。「その4」(5月10日付)では、「新型インフルエンザの発生が継続している地域から帰国してきた旅行者への勧告」として、次のような注意を呼び掛けている(なお、最新版の「その5」は追加的な情報を述べたもので、「その4」の勧告内容も継続中)。
【タイ保健省「公衆衛生勧告」(その4)における「新型インフルエンザの発生が継続している地域から帰国してきた旅行者への勧告」(仮訳)】
○機内で発熱した場合、適切な処置と機内のほかの乗客の安全を確実にするため、航空会社の係員または客室乗務員に連絡すること。
○タイではすべての国際空港で、到着後にサーモスキャナーで乗客が病気か否か検査する。乗客が発熱していると検知された場合、保健省のガイドラインに従いチェックポイントで医師により検査と処置がなされる。
○発熱がなく病気にかかっていない乗客も、7日間は自分自身の状態を注意してみておくこと。
○その間、せき、のどの痛み、嘔吐、下痢、といった症状がみられる場合、ほかの人との濃厚接触を避け、マスクを着用するか、せきやくしゃみをする時にはティッシュペーパーで口や鼻をふさぐこと。また、頻繁にせっけんまたは消毒薬で手洗いをすること。 当該者は、医師の診察を受け、徹底的な検査のために、空港の隔離担当機関から配られた健康問診票を示すこと。
○入院しない場合、出勤、通学を控え、家に待機し、空港到着後7日間は症状を観察すること。
○せきまたはくしゃみをするときには、ティッシュペーパーで口と鼻をふさぐようにし、ティッシュはゴミ箱に処分すること。 また、ほかの人と一緒にいる間はマスクを着用すること。
(鶴岡将司)
(タイ)
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