新型インフルエンザで対応方針を確認−臨時保健相理事会を開催−
ブリュッセル発
2009年05月01日
EUは4月30日、新型インフルエンザに関する共通認識を持ち、対応方針を協議するために、臨時保健相理事会をルクセンブルグで開催した。同理事会は公衆衛生保護のため、新型インフルエンザに対して、必要に応じたあらゆる対応策を取ることを確認した。
<必要に応じたあらゆる適切な対応策を取る>
EUの臨時保健相理事会は、新型インフルエンザ対策について、世界保健機関(WHO)のフレームワークに沿って行われたEU加盟国の迅速な行動を歓迎し、欧州委員会によってとられる共同施策を通じて、その取り組みを一層強化することを確認し合った。また、特に共通の症状の定義に関するガイドラインや旅行者に対する情報提供について、WHO、欧州疾病予防センター(ECDC)、EUの健康安全委員会(HSC)によって、既に取られている行動を歓迎することなどを表明した。
同理事会は、EU加盟国が欧州委員会との協力やWHOのガイドラインの下で、今後、ともに行動をとるよう求め、HSCの現行作業、各国の計画とWHOやECDCのアドバイスを考慮に入れながら、WHOの国際健康規制(IHR)をベースに発行されたWHOの奨励策と合致した、あらゆる必要に応じた適切な対応策が公衆衛生保護のために取られるべきであることで一致した。新型インフルエンザに関する情報収集や監視体制、治療体制なども強化していくことにした。
「ユーロポリティクス」誌(5月4日)によると、「必要に応じたあらゆる適切な対応策」に関しては、特に渡航制限に関する指摘を入れ込む提案もあったと伝えられるが、異論も多く最終的には削除されたとしている。渡航制限に関しては、フランスが4月29日、EUレベルでメキシコ便の全フライト禁止を提案することを発表していたが、EU加盟国の中には、例えば、英国がメキシコへの全便をキャンセルしている一方で、チェコ、スペイン、イタリア、デンマーク、オランダが理事会開催を前に、フランスの提案に反対の立場を表明していたと伝えられる。
また同理事会は、欧州委に対して、特にEU域内でのリスク評価、リスク管理、医療対応策といった観点から、EU加盟国間の情報共有と協力体制の促進を継続することなどを要請した。
<ワクチン開発めぐり欧州委が業界と会合>
BBC電子版(4月30日)によると、欧州委のバシリウ委員(保健担当)は理事会のあと、「われわれは心配もあるが、事態を冷静にみている」と述べ、「EUとして、ここ数年こうした出来事に対処してきたという事実、これまでの経験がわれわれをより強くさせている」と語った。
またEU加盟国はできるだけ早く、新型インフルエンザに対処するワクチンの開発を推進するため、医薬品メーカーと緊密に協力し合っていくことが迫られている。「ユーロポリティクス」誌によると、バシリウ委員は4月30日、ワクチンの開発や抗ウイルス性投薬の有用性について議論するため、医薬品業界の代表者と会合を持った。
なお、ECDCのレポートによると、4月30日8時現在、EUでは全部で19件〔オーストリア(1)、ドイツ(3)、スペイン(10)、英国(5)〕の発症事例が確認されている。死亡者の報告はまだない。またBBCは4月30日午後、さらにオランダとスイスで各1件ずつ見つかり、英国では計8件の感染者が確認されたと報道した。
(岩田知統)
(EU)
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