国民車への買い替えに5,000リンギの補助金−保護主義的な動きとして日系企業から批判も−

(マレーシア)

クアラルンプール発

2009年03月19日

ナジブ副首相兼財務相は、第2次景気対策の一環として、自動車産業育成基金(ADF)への資金投入と新車買い替えを柱とする自動車産業支援策を発表した。新車需要創出を目的に、10年以上経過した車を国民車に買い替える場合、政府が5,000リンギ(1リンギ=約27円)を補助する。買い替え対象車を国民車だけに限った政策は、保護主義的な動きだと日系企業から批判の声が出ている。

<補助対象を国民車に限定>
ADFとは、2006年3月に発表された第9次5ヵ年計画、国家自動車政策の下で設立された融資制度。融資対象は自動車産業に限られ、部品産業の合理化、開発・生産の促進、生産性の改善、輸出拡大を目的にしている。政府は、需要低迷とコスト上昇に苦しむ自動車産業を支援するため、第2次景気対策予算でADFに2億リンギを追加投入することを決定した。ただし、この基金の融資対象は、マレーシア資本が6割以上という条件があるため、日系企業の利用は限られ、恩恵を受けるのは国内メーカー、部品メーカーが中心になる。

第2次対策のもう1つの柱は、新車需要創出を目的とした買い替え支援だ。10年以上経過した車を国民車であるプロトン車またはプロドゥア車に買い替える場合、政府が5,000リンギ分を支援する。現在、車齢10年以上の車は、90万台に上るとみられる。対象車の条件は、車齢10年以上であることに加えて、道路税が支払われていること、運転可能な状態であること、ローンの支払いが終了していること、の4点。プロトンは、この制度を利用して5,000リンギ分のディスカウントと1,000リンギの無料サービス券をつけた販売キャンペーンを既に開始しており、プロドゥアも4月1日から開始する予定。

日系企業で構成するマレーシア日本人商工会議所(JACTIM)は、不況下での国内需要創出のため、中古車をスクラップして新車を購入する契約に対して一定の補助金を支給する、または新社購入時の税金を一定額免除する「自動車スクラップインセンティブ」の実施を政府に要望していた。今回の買い替え支援策には、この提案が取り入れられたが、国民車だけが対象となっており、JACTIM会員からは保護主義的な動きとして問題視する声が出ている。

(手島恵美)

(マレーシア)

ビジネス短信 49c1a44c31128