中古特殊用途自動車の関税を引き上げ−日本国内市場の取引価格にも影響−
ロシアNIS課
2009年03月19日
中古の特殊用途自動車の輸入関税が4月4日から9ヵ月間引き上げられる。従来、特殊用途自動車には経過年数による区別がなかったが、今回の変更で新車、中古車という分類が導入され、後者の関税が従量税となる。これは、2009年1月に実施された自動車関税の引き上げに続いて、国内の自動車生産拡大を図る動きとみられる。ロシア向けの輸出が減速すれば、日本国内の中古車市場がだぶつき、取引価格の下落につながる懸念がある。
<特殊車に新車、中古の分類を導入>
今回の措置の対象品目は、特殊用途自動車(HSコード8705)に分類されるクレーン車(90トン以上の水圧ジャッキと2つ以上の車軸を持つもの。気温マイナス40度以下の環境下での作業に向けた仕様のもの以外)、消防車、コンクリートミキサー車など。
乗用車やトラックなどと異なり、従来、特殊用途自動車には製造後の経過年数による区別がなかった。しかし今回の措置で、「新車」「中古(製造後3年以上のもの)」という分類が導入され、前者の関税は、15%から25%に引き上げられるコンクリートミキサー車を除いて従来の関税がそのまま適用される。一方、後者はシリンダー容積当たりという従量税に変更され、実質的に大幅に引き上げられる(表1、2参照)。
中古車は1立方センチ当たり4.4ユーロという高関税が課されるため、今回の変更は09年1月12日に施行された自動車関税引き上げ措置(2008年12月17日記事参照)に続いて、政府が国内自動車生産拡大ために中古自動車の排除を狙ったものと考えられる(ジェトロセンサー09年4月号「国内生産拡大へ——政府の自動車産業支援策」参照)。
<日本国内販売価格は半額に>
本措置は、金融危機による中古特殊用途自動車の日本からロシアへの輸出減に、さらに追い打ちをかけるとみられる。例えば、4トン、6000cc、最長26メートルまで対応可能な中古の高所作業車(現在、取引価格250万円程度)で試算してみると、現在、関税額は12万5,000円(輸送費、保険料を含まず)だが、本措置導入後は約340万円(1ユーロ=128円で換算)となる。
ジェトロが中古高所作業車の国内販売を手がける日本企業に聞いたところ、08年8月以降、それまで中古高所作業車の需要を牽引していたロシア向けの輸出が急激に落ち込んだことで、市場に出回る中古高所作業車の台数が増え、日本国内の販売価格が従来の半額になったという。今回の措置により、ロシア向け輸出がさらに落ち込むと予想され、また代替輸出先である東南アジアや中東の景気も冷え込んでいるため、国内販売価格の一層の値下がりは免れられないとみる。
また、特殊用途自動車メーカーへの影響も大きいとみられる。業界では新車販売後、3〜4年後に顧客から買い戻し、中古市場に卸すビジネス形態があった。これまでは中古車の価格が高水準で維持されていたため、メーカーは新車を薄利多売し、販売台数を伸ばしてきたという。しかし、今後中古市場が飽和することでこうしたビジネス形態は影をひそめ、生産の減少をもたらして、メーカーはより厳しい経営環境に置かれるのではないかという。
なお、ワールドトレードアトラスによると、08年1年間に日本からロシアに輸出された特殊用途自動車は前年比17.7%増の5,994台で、ロシア全体の輸入台数の62.5%を占めた。しかし、08年12月にはロシアでの信用不安やルーブル安の影響もあり、輸出台数は前年同月に比べ53.8%減の450台にとどまった。
(齋藤寛)
(ロシア)
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