映画業界の見通しは比較的堅調−金融危機下の好調業種を探る−
ロサンゼルス発
2009年03月05日
ロサンゼルス郡経済開発公社(LAEDC)が2月18日に公表した経済見通しによると、2009年はほとんどの業種が苦戦しそうだ。その中で、映画業界は、ヒット作が続くと予想されることや、3次元(3−D)映画の導入、不況下では費用のかかる旅行よりも、気軽に楽しめる映画などが好まれるといったことから、比較的堅調に推移する見通しだ。
<経済予測機関が映画・テレビ業の評価上げる>
南カリフォルニアの経済動向の有力予測機関であるLAEDCが2月18日に公表した経済見通しによると、09年は全米、カリフォルニア州、ロサンゼルスを中心とする南カリフォルニアのいずれにとっても厳しい経済状況になる。LAEDCのチーフエコノミストのナンシー・シドゥ氏は「夏までには経済は底を打つだろうと予想している。07年12月に始まった景気後退は19〜21ヵ月続き、戦後最長になる」と述べている。
LAEDCは「連邦政府による刺激策が景気回復の促進剤となると期待されているが、その効果は09年末までは顕在化せず、10年に入っても景気回復は緩やかに進行する」とし、09年の南カリフォルニア経済の業種別動向を、独自の評価方法(A〜D)を用いて予測している。全体として、先行き見通しは極めて低調で、A評価の業種は1つもない(表参照)。また、前回調査時(08年7月)の見通しと比べても、多くの業種が評価を落としている。
前回調査時と比べて評価を上げている業種は、「映画・テレビ制作」(C‐→B+)、「医療サービス」(D→D+)と、「ビジネス・専門サービス」の一部(B‐→B+to C)である。
「映画・テレビ制作」は、国内外での映画の興行成績の好調が続く見込みであること、3−D対応の映画の普及による集客力の強化、ケーブルテレビのネットワークの拡大を背景に、前回調査時よりも評価を上げている。
「医療サービス」は、ベビーブーマー世代が高齢期にさしかかったことによる需要増が背景となっている。
「ビジネス・専門サービス」は、分野によって評価が分かれる。法律分野ではサブプライム・ローン問題に関連する訴訟の増加、会計分野では新たな規制対応の需要が期待されることなどから、前回調査時に比べて評価を上げている。
<大ヒットが期待される作品が続々>
映画業界の見通しが比較的堅調になっている。要因として、以下の3つが挙げられる。
まず、ヒット作が続く見通しであること。08年には「ダークナイト」「アイアンマン」「インディ・ジョーンズ〜クリスタル・スカルの王国〜」などのヒット作が続き、国内の興行成績は2.3%増加した。09年の上映予定作をみると、「ターミネーター4」、「ハリーポッター」、「トランスフォーマー」、「ダ・ヴィンチ・コード」など、過去のヒット作の続編を中心に大ヒットが期待される作品が多くみられる。
第2に、今まで経験したことのないほど鮮明な3−D映像を体験できる映画の導入が進んでいることだ。3−D映画のチケット単価は通常の映画鑑賞券(11〜12ドル)より5ドルほど高い。さらに、3−D映画は、08年にディズニーの「ハナ・モンタナ」がヒットしたように、家族向けの映画が多いため、動員人数の増加に結びつく要素もある。
3点目は、景気低迷を受けて人々の娯楽に対する行動様式が変化していることだ。不況時には、費用のかかる旅行支出を抑制する傾向がある(前述の業種別動向でも「旅行・観光」の見通しはA−からC+に大幅に落ち込んでいる)。これに対して、気軽に楽しめる映画などの娯楽にシフトすることが考えられる。
ただし、映画・テレビ業界でも、大手以外の独立系の映画会社の経営は一般に厳しく、業界全体が明るいわけではない。
(水谷剛、川本満実子、菅家元志)
(米国)
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