コールセンター・BPO産業の売り上げは26%増−金融危機下の好調業種を探る−

(フィリピン)

マニラ発

2009年02月24日

国内では、2008年12月の輸出が前年同月比4割減と急減し、企業の倒産や人員削減で雇用対策が緊急課題に浮上している。電子・電気や自動車部品など輸出メーカーの業績が大幅に悪化する中、コールセンター・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の高成長が際立つ。

<輸出激減で雇用が最大の問題に>
08年12月の輸出額は前年同月比40.4%も減少し、9月の44億3,865万ドルから26億7,235万ドルになった。中でも、輸出額全体の5割を占める電子・電気製品が47.6%減と急激な落ち込みをみせた。半導体や電子データ処理機械の不振が主な要因だ。このほか、主要輸出品の縫製品やココナツ油、ワイヤーハーネス(組み電線)もそろって大幅減となった。国・地域別では、電子・電気製品の割合の高い中国(57.9%減)や香港(50.0%減)向けの減少幅が大きかった。

輸出の急激な落ち込みを受け、国内では失業者対策が緊急課題となっている。特別経済区(注1)を管轄する経済区庁(PEZA)によると、08年10月から09年2月7日までの間に、同経済区内で働く約1万2,500人が解雇された。政府は失業者を対象とした就職説明会や職業訓練事業の紹介などを行っているが、決定的な対策はないのが現状だ。

経済危機は国内にとどまらず、海外で働くフィリピン人の失業にもつながった。フィリピンは総人口の約1割が海外で働く「出稼ぎ大国」だが、これまでに5,312人(2月6日時点)が解雇された。国・地域別では台湾が最も多く、電子機器や半導体メーカーで働く4,197人が勤務先の倒産などのため職を失った(注2)。海外出稼ぎ者からの送金額は、08年に前年比13.7%増と好調を維持した。ただ、海外での人材需要減退を受け、月次の出稼ぎ者数は、9月の12万860人から12月に8万9,799人まで減少。12月単月の送金額も前年同月比0.8%増と伸び悩んでおり、先行きには不透明感も漂う。政府は09年の送金伸び率を6〜8%増と見込む。

<コールセンター・BPOは09年も2〜3割成長>
国内産業界では、電子・電気や自動車部品、縫製品など輸出メーカーの業績不振が著しい。このうち、経済危機の影響を最も強く受けたのが電子・電気業界だ。同業界の関係者によると、「多くの日系メーカーが前年同期比5割減の急激な生産減少に見舞われており、中には生産量が通常の2割の水準に落ち込んだ企業もある」という。各社は1週間の操業日数を半分程度の3〜4日に短縮し、工場の全面停止に踏み切る企業も出始めた。厳しい状況は自動車部品や縫製メーカーも同じだが、「(景気後退下でも販売堅調な)小型車向け部品や高級ブランド向け衣類を手掛ける企業は、生産の減少幅がやや緩やか」(同関係者)という。

輸出の減速に加え、国内では09年1月の新車販売台数が前年同月比0.2%減となった。新車市場は08年10月以降、4ヵ月連続で前年同月割れが続いており、自動車メーカー各社は苦戦を強いられている。日系が強い二輪車市場も09年は横ばいの見通しだ。中央銀行によると、08年第4四半期(10〜12月)における消費者の景況感指数は、クリスマス休暇を控え、第3四半期に比べ改善をみせた(注3)。ただ、同指数が40.3ポイントと大幅なマイナスであることに変わりはなく、景気に対する国民の見方は依然厳しい。

一方、世界的な経済危機下にあっても売り上げを伸ばす国内産業もある。主に欧米企業から経理や顧客対応などの業務委託を受けるコールセンター・BPO産業だ。業界団体のBPAPによると、同産業の売り上げは08年に前年比26%(約61億ドル)伸びた。BPAPは09年も20〜30%増を見込む。業界内では、これまでに比べ伸び率はやや鈍化するものの、成長傾向に変わりはないとの見方が優勢だ。経済危機が深刻化した08年第4四半期にも、テレテックなど大手コールセンターが拠点を増設したほか、米系BPO企業のスタートレックが新規参入を果たした。日系企業では09年1月に、コールセンター大手のトランスコスモスによる拠点強化方針(従業員を150人から10年末に700人に増員)が明らかになった。同産業の成長は、不動産や通信機器などの業界にも波及効果を及ぼすものとみられ、経済危機の中、大きな期待を集めている。

(注1)日系や米系など輸出メーカーの大部分は特別経済区に立地する。
(注2)台湾以外では、アラブ首長国連邦やカナダ、マカオなどで解雇される出稼ぎ者が多い。しかし、すべての海外出稼ぎ者の雇用状況を把握するのは容易ではなく、実際の失業者数はさらに多いと推測される。
(注3)中央銀行が四半期ごとに行う消費者景況感調査による。第4四半期の調査期間は10月1〜15日、調査対象世帯数は5,448世帯(回答率96.6%)。景況感指数は、景気が良いと答えた回答者の割合から、景気が悪いと答えた回答者の割合を引いたもの。

(米山洋)

(フィリピン)

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