優れたデザインの小物類が好評、米最大の日用品ギフト展示会(1)−金融危機下の好調業種を探る−
ニューヨーク発
2009年02月16日
国内最大規模の日用品ギフト展示会「ニューヨーク・インターナショナル・ギフト・フェア(NYIGF)」が1月25〜29日、ニューヨーク市のジャビッツ・コンベンションセンターで開催された。日本からは12社・団体が小物・バッグなどのギフト日用品を出展した。来場者数は前回を下回る3万2,000人にとどまったものの、日本の出展品は品質やデザイン性の高さで好評だった。米国での販路開拓に挑む日本からの出展者の声を、2回に分けて紹介する。
<コンパクトで気が利いている、と認められる>
ライクイットは、プラスチック日用品雑貨を企画・製造している吉川国(よしかわくに)工業所(本社:奈良県葛城市)の専門店・海外向け販売会社として1986年に設立された。同社は「長く使えるプラスチック製品」「長く利用するエコ」をテーマに、プラスチック製のカゴや収納容器を中心に商品を展開、過去19回・38品目でグッドデザイン賞を受賞するなど、高い評価を受けている。現在は20ライン、総数1,500品目の製品を扱っているが、そのうち50数品目が10年以上続く定番だ。
同社チーフマネジャーの上床勝彦氏は、米国での事業展開などについて次のように語った。
米国進出に本格的に取り組み始めたのはここ3年ほどだ。それまでは欧州への販路拡大に注力していて、フィンランド企業と代理店契約を結び、フランクフルト国際消費財見本市(アンビエンテ)には2003年から代理店の名前で出展している。米国では07年と08年にシカゴの「ホーム&ハウスウェアショー」に出展し、両年とも「デザイン・ディファインド賞」を受賞した。アンビエンテで製品に興味を示していた米国の収納雑貨チェーンとも直接商談を行い、契約に結びつけるなどの収穫があった。
米国の収納雑貨は大きなものが多く、コンパクトで気の利いた商品は少ない。そこが、当社の製品が認められるポイントでもあると思う。現在、総売り上げに占める海外取引の割合は5%程度だ。うち8割が欧州で、2割が米国。今後、米国の割合を5割に上げることを目標にしている。
NYIGFへの出展は今回が初めてだが、欧州の展示会と比べると、米国の展示会の来場者は決断までに時間がかかり、特に大手チェーンのバイヤーなどは、ロット・価格などで多くの制約を持つように見受けられる。来場者の数は想定よりも少ないが、良い商談ができた。受注までに至っていない案件についても、今後商談が発展する可能性がありそうだ。今後はそれらをフォローするため、米国での体制整備を検討したい。
<現地法人を設立し米国人の抵抗感を払拭>
アーティミス(本社:東京)は90年の創立。文具・雑貨の 製造・輸入・卸・販売を行っている。10人のデザイナーにより、多彩なデザインを展開しているのが特徴だ。展示会場のブースでも、側面や持ち手部分だけでなく底面にも鮮やかなイラストや柄が施されたバッグが数多く展示され、来場者が足を止めていた。代表取締役クリエイティブディレクターの依田敏茂氏は、米国市場などについて次のように語った。
NYIGFへは07年8月から出展しており、今回で4回目。ほかには、07年にドイツで開催された文房具の展示会に参加したことがある。08年にカリフォルニア州サンタモニカに現地法人を設立した。米国以外は香港、タイ、カナダ、スペインなどで取引がある。会社の売り上げ全体に占める海外取引の割合は数%。今のところ、日本での展開が中心で、海外取引は試行期間という位置付けだ。
米国市場については、08年夏ごろから急に冷え込みを感じるようになった。しかし、同じ不況下でも、米国人は使う金額が日本とは随分違って大きい。米国では大手チェーンとの直接取引、ディストリビューター経由、あるいはメーカーとのOEM(相手先ブランドでの供給)のかたちでのビジネス展開を考えている。日本では直営店舗もあり、小口卸業者との直接取引も行っているが、米国ではそのような展開は考えていない。
米国の特徴としては「面倒くさがりの国民性」が挙げられる。当社製品のデザインの多様さは、エンドユーザーを喜ばせるだろうが、ディストリビューターは、商品管理面の複雑さを嫌がるだろう。また商談の際に、あまり詳細な説明を行うと、相手が聞き飽きてしまい、マイナスになることもある。
また、欧州の人間は貿易について抵抗はないが、米国人は貿易を嫌がる傾向にある。自国内取引でほぼすべてを賄っている一般の米国企業は、関税やリードタイム(製品納入までの準備期間)の計算などにそれほど慣れていない。現地法人を設立したのも、それらの面で米国企業の抵抗感を払拭(ふっしょく)するためだ。米国では、成果を急がず地道に継続していくことが重要だと考えている。現在は不景気かもしれないが、先行きについては期待できる。
<全米最大規模のギフト展示会>
NYIGFは展示業界大手のジョージ・リトル・マネジメント(GLM)が毎年2回開催しているもので、今回で156回目。出展分野は、インテリア装飾品、家庭用品、アクセサリー、ミュージアムギフト(博物館関連のノスタルジックなギフト)、子ども用品、生活雑貨など、日用品ギフトが中心だ。出展総面積は6万平方メートル。展示会・見本市の業界誌「トレードショー・ウィーク」によると、ギフト分野の展示会としては全米一の規模。出展者は33ヵ国から2,900社に上り、カナダ、メキシコのほか、英国、フランス、ドイツ、イタリアなど15ヵ国が各国独自のコーナーを展開し、日本も12社・団体による「ジャパンブース」を設置した。
ラスベガスで1月上旬に開催された世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」が2割以上来場者を減らすなど、消費者心理の冷え込みが展示会にも影響を及ぼす中、NYIGFも来場者数は3万2,000人と前回(08年8月開催)の3万6,000人から1割以上減った。「最小限の買い付けのみを行う」「安いものを探す」「注文予算は減っている」という来場者が目立ったが、ジャパンブースでは、「受注獲得などの目標をおおむね達成した」という出展者もいた。
(池田教)
(米国)
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