環境・省エネ製品を主軸に事業拡大図る、カネカベルギーに聞く−金融危機下の好調業種を探る−
ブリュッセル発
2009年02月17日
金融危機の欧州市場への影響について、化学品のカネカベルギーの車和夫社長に聞いた。2009年は厳しい状況が続くとみており、10年からの回復に期待を込める。景気低迷下での市場開拓には、環境・省エネに適応する既存製品を主軸に据え、太陽電池事業の拡大、新製品・新市場開拓にも一段と注力する。
<2010年からの回復に期待>
問:欧州の経済情勢をどのようにみているか。
答:ベルギー中央銀行の経営者景況感指数は09年1月はわずかながら好転したと聞くが、グローバルベースでの経済環境の悪化が短期間に回復するとは考えにくく、危機意識を持ってみている。
現時点では、今後の経済動向を見通すことは非常に難しい。09年中は厳しい状況が続くことを覚悟している。年後半には底を打ち、10年から回復に向かうことを期待している。
管轄地域では、ロシア、中東欧市場がここ数年間で大きく伸び、ビジネスの成長に貢献した。特にロシア市場は、現時点では減速傾向にあるが、市場規模が大きく、中長期での伸びも期待できると考えており、経済情勢の推移に注目していく。
問:景気後退がビジネスに与えている影響は。
答:短期的には、需要の減少に応じ、工場の操業度を販売量に見合ったレベルに調整し、最適なオペレーションを実施することが重要だ。一方で、景気が上向いた際に即座に対応できるような態勢を整えておく必要がある。
一般的な傾向として、各社ともに資金繰りに余裕がなくなることが予想され、今後、債権回収のリスクマネジメントはさらに難しくなると思われる。また、取引先側(顧客側)の資金調達が厳しくなり、商品が売れにくくなるのではないかと懸念している。
問:景気低迷の中で市場開拓にどう取り組んでいくか。
答:欧州市場では、今後も、環境・省エネルギーに配慮した製品の存在感が増すと予想している。当社製品は、この点で強みを発揮し事業を拡大してきたが、今後も、差別化、付加価値を高める取り組みに全力を上げる。
<省エネ・環境対応型の商品に特化>
カネカベルギーは、1973年の創業以来、塩ビ強化用樹脂(製品名:カネエース)、ビーズ法発泡ポリオレフィン(製品名:エペラン)、変成シリコンポリマー(製品名:カネカMSポリマー)と、順次、生産品目を拡大してきた。
カネエースは、塩ビなどの樹脂改質剤として使われ、耐衝撃性、耐候性の向上に高い効果を発揮する。主な用途の1つとして、塩ビ製窓枠用が挙げられるが、塩ビ製窓枠は、木製の窓枠に比べ、気密性・断熱性に優れ、特に寒冷地で省エネに大きく貢献している。同社は、中東欧やロシアを中心に順調に販売を拡大しており、今後も需要拡大の余地は大きいと期待している。
エペランは、車のバンパーのしん材などに使用される緩衝材用の発泡樹脂である。最近では、自動車用シートの部材としても使用されるようになってきており、軽量化と燃費向上で省エネに貢献している。
カネカMSポリマーは、建築用シーリング材、工業用弾性接着剤などに使われている。溶剤を使わない点で、環境対応型製品として注目を集めている。また、自動車用の接着剤向け販売も増加しており、車の軽量化につながっている。
以上に加え、カネカベルギーは太陽電池モジュールの販売を06年に開始した。同社の太陽電池モジュールは薄膜シリコンタイプで、一般的な結晶型に比べてシリコンの使用量が少ない省資源・省エネルギー型だ。世界市場に占める欧州市場の割合は大きく、今後も一層の拡大を想定しており、現地生産を検討中だ。
太陽電池以外にも、ユニークな物性・特性を持つ多くの機能性樹脂製品をそろえており、今後も、環境や健康に配慮した新製品を開発・販売し、景気動向にかかわらず、安定的に収益を確保できる事業基盤を確保していきたい。
(清水幹彦)
(EU)
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