危機克服の総合対策を発表

(韓国)

ソウル発

2008年11月05日

政府は11月3日、為替・金融市場、実体経済、中小企業・市民生活の安定を目指した総合対策を発表した。これにより、2009年には4%前後の経済成長、20万人前後の雇用創出効果があると期待している。専門家、マスコミも肯定的に受け止めている。

<財政出動は11兆ウォン>
「経済難局克服対策(以下、11.3対策)」と名付けられた総合対策の主な内容は以下のとおり〔全文は韓国企画財政部ウェブサイト(韓国語)参照〕。

○為替・金融市場安定
(1)為替市場安定
米国との通貨スワップ締結(2008年10月31日記事参照)により為替市場はある程度安定的に推移しているが、日本、中国との通貨スワップ(チェンマイ・イニシアチブ)も推進し、流動性の拡大、多様化を図る。外貨準備高を増やすため、輸出拡大による経常収支の黒字転換を図る。また、現在は預金保証制度の対象になっていない外貨預金をウォンと同一水準(5,000万ウォン、1円=約13ウォン)まで保証する。国際協調を強化するため、IMF理事会とG20財務相・中央銀行総裁会議に積極的に参加する。

(2)金融市場安定
株式市場の安定を図るため機関投資家に責任のある役割を果たすよう促す。また、金利を低めの水準に誘導する(2008年10月29日記事参照) 。中小企業への貸し出しと輸出企業への支援を拡大するため、国策銀行に出資する〔韓国産業銀行(5,000億ウォン)、企業銀行(5,000億ウォン)、韓国輸出入銀行(3,000億ウォン)〕。

○実体経済活性化
(1)財政支出の拡大
公共支出の拡大(11兆ウォン)を通じ、雇用創出を図り、市民生活を支援する。内訳は、インフラへの投資(4兆6,000億ウォン)、中小企業・零細自営業・農漁業支援(3兆4,000億ウォン)、青年失業対策支援(3,000億ウォン)、低所得層福祉支援(1兆ウォン)、地方税制支援拡大(1兆1,000億ウォン)など。また、3兆ウォン規模の税制支援(減税)を強化し、民間の設備投資拡大を図る。

(2)不動産・建設業の景気活性化
小型住宅建設義務比率の縮小、容積率の拡大などを通じ、再建築の規制を緩和する。ソウルの富裕層地域である江南3区を除き、投機過熱地区(注)を廃止し、不動産取引の活性化を図る。

(3)規制緩和を通じた投資拡大
土地利用の規制を合理化し、企業の投資と雇用の創出を図る。競争国に比べ厳しく策定されている環境規制を合理化し、企業の負担を減らす。参入障壁が高いサービス産業の規制を合理化・改善する。08年の目標である120億ドルの外資誘致のため、投資誘致活動を強化する。

○中小企業、市民生活安定
信用保証の供与拡大、貸出金満期延長などを通じ、中小・零細企業の黒字倒産を防止する。このため、信用保証基金、技術保証基金の保証規模を42兆ウォンから48兆ウォンに拡大する。失業手当の支給拡大(103万2,000人→112万6,000人)、大学生の奨学金拡大(3万2,000人→18万1,000人)などを通じ、低所得層への財政支援を拡大する。零細自営業など小規模カード加盟店の手数料を引き下げる。

<4%前後の経済成長、20万人前後の雇用創出を目指す>
政府は、11.3対策などを踏まえて、09年の経済成長率を4%前後と予想した。現在は3%前後の経済成長率が見込まれているが、総合対策などの効果により1ポイント上昇するとみている。また、新規雇用創出も現在の予想の12万〜13万人から20万人まで増加すると期待している。

一方、専門家、マスコミは、11.3対策について、「適切なタイミングでの適切な対応」との肯定的な意見が支配的だ。韓国経済研究院のホ・チャングク本部長は「政府が動員可能な手段はすべて動員した」とし、LG経済研究院のオ・ムンソク室長も「実体経済が不振だと金融不安につながる可能性があるので、それに備えた対応は適切」と評価した(「朝鮮日報」11月4日)。

しかし、一部では、危機の深刻性に比べ規模が小さい、過度な財政支出と減税により財政の健全性が損なわれる、といった批判も出ている。

(注)投機過熱地区とは、投機目的の住宅購買を防ぐため、住宅保有者の購買制限、転売などを規制する地域。

(李海昌)

(韓国)

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