自動車は下期も好調持続か−日系企業の景況見通し(5)−

(インドネシア)

ジャカルタ発

2008年11月04日

ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC)がまとめた進出日系企業に関する景況感の報告の5回目。自動車・二輪車は、減速懸念はあるものの引き続き好調を維持している。電機・電子は家電市場の成長に期待する。

<自動車・二輪車は年内は堅調に推移>
1.機械
2008年上期は、全体としては前年と変わらないか、上向きの景況感だった。背景として、国内の自動車、二輪車、建設機械の各業界が好調に推移したことに加え、天然ガスの関連案件が実施段階に入ってきたことが挙げられる。

下期の景況感は全体として上向きまたは変わらない。引き続き自動車、二輪車業界が好調を持続していること、日本向け造船関連の受注が見込めること、部品の日本向け輸出が好調に推移することなどがその理由として挙げられる。ただし、世界的金融危機や電力不足、インフレ高進、労働コストの上昇などの問題により、減速を懸念する見方も出ている。

2.自動車
(1)自動車
上期は、金利の上昇、インフレ高進、燃料価格高騰による市場縮小が懸念されたが、影響は軽微だった。これは、経済が好調に推移したことに加え、自動車を購入できる層は一般的に高所得層であることなどが背景にあると思われる。また、鉱業、農業などの好況を受け、商用車需要が拡大した。石炭、パーム油、ゴムなどの資源価格が高騰した結果、これら資源関連産業の車両需要が旺盛だった。

下期は、特に第4四半期にさらに金利が上昇し、世界経済低迷の影響が重なって、需要が鈍化する懸念が出ているが、年内は堅調に推移するとみられる。ただし、原材料価格高騰に伴う価格転嫁はまだ十分ではなく、今後、値上げによる販売鈍化が少なからず起こると予想される。

(2)二輪車
上期は、経済の好調、資源価格の上昇による関連産業従事者の所得向上に加え、燃料価格の引き上げで相対的に二輪車の経済性が評価されたことなどを背景に、各社の新機種投入の効果も相まって業況は好調に推移した。

下期は、断食明け大祭休暇(10月初旬)まで、第3四半期は好調を維持するが、その後は例年どおりやや鈍化する見通し。下期を通しては、上期と大きく業況に変化はない見込み。

(3)自動車部品
上期は、国内需要の増加に加えて輸出もタイ、マレーシア向けを中心に好調に推移した。生産ラインがフル稼働の状況となり、一部では生産能力不足も発生した。

下期は、全体で上期の業績レベルを維持するが、輸出はタイ向けを中心に落ち込む見込み。また、国内需要についても、株価・為替の動向、原材料価格の高騰、金利の上昇、インフレ高進などから落ち込む懸念がある。

<家電市場は韓国勢が牽引>
3.電機・電子
(1)家電
上期は、原材料価格の高騰による販売価格の上昇があったものの、業界全体としてはおおむね上向いた。国内販売は、カラーテレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの主要製品が好調だったことに加えて、薄型テレビなど高額製品の販売にも伸びがみられた。輸出も堅調に推移し、前年比5割増を記録した企業もある。

下期も引き続き上向く見通し。市場は韓国勢が牽引し、日本勢が対応するという構図になりつつあるが、民間消費に特段大きな陰りはみられず、上期ほどの勢いにはならない可能性はあるものの、上向き基調は持続する見通し。

(2)電子部品
上期は、二輪車市場の活況により大幅増産となった企業がある一方で、進まない電力インフラ整備の影響を受けて業況が悪化した企業もあった。全体としては、前年比で変わらないとの見方が強い。

下期は、引き続き好調に推移している二輪車業界向けが堅調に推移するものの、国営電力会社の予算大幅カットによる影響など、懸念材料も指摘されている。全体の景況感は上期と変わらないとの見方が強い。

(3)重電
上期は、景況感としては変わらなかったが、原材料価格の高騰を製品価格に転嫁できず苦しい状況が続いた。

下期も上期同様の業況が継続する見込み。国内市場の活性化に期待している。

(4)情報通信
上期は、大都市での大型ビルの建設需要の拡大、進出日系企業のIT投資の増加、通信事業への新規参入企業の投資など、上向き要素はあったものの、製品価格の下落に追随できずに事業から撤退するなど、悪化したケースもみられた。

下期は、国内需要が堅調に推移しており上向くとの見方がある一方で、輸出の減少を懸念する声もある。総じて景況感は変わらない。

(塚田学)

(インドネシア)

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