韓国銀行、政策金利を0.75ポイント緊急引き下げ

(韓国)

ソウル発

2008年10月29日

韓国銀行(中央銀行)は10月27日、政策金利を0.75ポイント引き下げ、4.25%とした。金融市場の混乱や実体経済の急速な悪化を受けたもので、利下げのタイミング、利下げ幅とも異例だ。今回の利下げが、金融市場の混乱や景気悪化を緩和する一定の役割を果たすものと期待されている。しかし、問題の発端が海外発であるだけに、利下げ効果には限界もある。韓国銀行は既に追加利下げの可能性を示唆している。

<時期、幅ともに市場の予想を覆す>
韓国銀行(中央銀行)は10月27日、臨時金融通貨委員会を開き、政策金利である買戻し条件付債券(RP)金利を、現行の5.00%から4.25%に引き下げると発表した。政策金利は、10月9日に0.25ポイント引き下げられたばかりだったが、経済情勢の急速な悪化を受け、異例の緊急利下げとなった(図参照)。

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市場では、11月の定例金融通貨委員会での利下げは予想されていたものの、緊急利下げは予想外のことだった。また、金融通貨委員会の開催が発表された直後の時点では、利下げ幅は0.25ポイントまたは0.5ポイントとみられており、0.75ポイントもの大幅を予想する向きはなかった。利下げの時期、幅とも市場の予想を覆すものとなった。

韓国銀行は、今回の決定について「政策金利を大幅に引き下げたのは、国際金融市場の混乱の影響が国内市場に波及し、為替、株価が大きく変動したことで、部分的な信用縮小現象が見られ、今後、実体経済活動が大きく縮小する可能性がある。それに積極的に対応する必要があると判断した」(プレスリリース資料)と説明している。

李成太(イ・ソンテ)総裁は記者会見で、「経済活動が相当に鈍化しており、雇用者数も拡大の速度が急速に鈍化している。家計や中小企業の(借入金の)返済負担が大きい。従って、韓国銀行がより確実に積極的に動く必要があると判断した」と述べた。前回の利下げの効果がほとんど見られなかったことから、思い切った利下げを行ったようだ。

<対応遅いとの批判も>
利下げによるウォン安や物価上昇といった副作用が気になるところだが、韓国銀行は、主要国が一斉に利下げに動いており、国際的な資金の動きが金利よりも流動性によって決定されているため、利下げは為替レートに大きな影響を与えないとしている。また、物価上昇圧力についても、内需が停滞しており、原材料価格が急速に下落しているため、影響は少ないとしている。

今回の利下げは下げ幅が大きいだけに、肯定的な評価が多い。家計や中小企業の金利負担を軽減させ、市場心理のこれ以上の悪化を防ぐのには一定の効果が期待できるというものだ。「株価の追加的な急落の可能性は低下した」(「中央日報」10月28日)という見方もある。経済界も「わが国経済に大きなプラスになろう」(大韓商工会議所)と歓迎している。

ただし、韓国銀行の対応が遅かったとの批判もある。「毎日経済新聞」(10月28日)は「対応の遅れが繰り返され、結局、市場に不安感を与えてきた」という市場関係者の声を紹介し、韓国銀行の金融緩和への政策転換の遅れを批判している。

<追加利下げの可能性を示唆>
最近の金融市場の混乱や景気悪化の原因が海外にあるだけに、今回の大幅利下げが抜本的な解決策になるとは必ずしもみられていない。そうしたこともあって、韓国銀行は今後の追加利下げの可能性を示唆している。李成太総裁は27日の記者会見で「金融市場の混乱が完全に収まらない状況で、中央銀行が各種のリスクが大きいと判断するのは正しい。それに関心を払う状態が当分の間続くだろう」と述べ、追加利下げの可能性を示唆した。

「韓国銀行は今後、政策金利を追加引き下げする可能性が高い。政策金利を0.75ポイント下げただけでは、金融市場が安定を取り戻し、実体経済が回復することはないため」(聯合ニュース10月27日)というのが一般的な見方だ。

(百本和弘)

(韓国)

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