国民は政府の金融危機対策に理解示す

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2008年10月27日

世論調査では、国民の大半が政府の金融安定化策を正しいとみていることが分かった。メルケル首相らによる金融安定化策への理解の呼びかけが、功を奏しているようだ。2009年9月の総選挙を控えた政党支持率などに、金融危機の影響は今のところは及んでいないが、実体経済への影響が動向を左右しそうだ。

<世論調査で61%が「金融安定化策は正しい」>
ドイツ第2放送向けに10月21〜23日に行われた世論調査(Politbarometer、回答数1,327件)によると、10月13日に発表された総額4,800億ユーロの金融安定化策について、61%が「正しい」、29%が「正しくない」と答えた。連日、メルケル首相やシュタインブリュック連邦財務相らが、金融安定化策は銀行など金融機関の利益を守るためのものではなく、金融市場を安定化させて信用を回復し、国民を救済するための対策だと説明していることが、効果を上げているようだ。

不動産金融大手ヒポ・リアル・エステートの支援策と、同支援策頓挫後の新たな支援策(2008年10月7日記事参照)に対しては、10月7〜9日に行われた世論調査(回答数1,276件)で、36%が「正しい」、35%が「正しくない」と回答していた。金融危機が深刻化する一方、政府側が国民への説明を繰り返したことにより、金融安定化策の必要性に対する国民の理解が高まっていることがうかがえる。

また、メルケル首相らが10月5日、預金口座、当座口座、定期預金などすべての口座を全額保護すると発表したことに対しては、10月7〜9日の上記調査で72%が「正しい」と評価している。

<雇用に影響が及べば政党支持率に影響も>
09年9月27日の次期総選挙まで1年を切り、金融危機が政党支持にどのような影響をもたらすのかが注目されている。08年は、大連立与党のキリスト教民主同盟/同社会同盟が4割前後の支持率を保っている。連立パートナーの社会民主党は、年初の支持率3割前後が若干減っている(図1参照)。

米リーマン・ブラザーズ破綻後の10月の2回の世論調査では、両党の支持率に大きな変化はない。メルケル首相に対する評価も、79%がこれまでの業績を評価(9月比1ポイント増)している。

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他方、同調査における「最も重視するテーマ」(複数回答可)では、08年は失業とコスト/価格/賃金が1、2位を占めてきたが、10月から1位は銀行・金融危機に変わっている(図2参照)。

しかし、失業、コスト/価格/賃金は10月も2、3位をそれぞれ占めており、引き続き国民の関心は高い。ただし、雇用の改善傾向は08年に入ってからも続いており、08年9月の失業率は7.4%(季節調整済値は7.6%)に低下していた。

今後、金融危機に伴う実体経済の悪化が深刻になり、雇用情勢やインフレ、賃金動向への影響が目立ってくる場合には、メルケル首相への支持や、各政党への支持にも影響が及ぶ可能性がある。

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(小谷哲也)

(欧州)

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