銀行の対外債務に1,000億ドルの政府保証−金融安定化策−

(韓国)

ソウル発

2008年10月22日

政府は、外貨の流動性確保支援、株式市場安定化のための税制支援、ウォンの流動性支援、企業銀行の資本拡充、国際協力体制強化などを骨子とする金融安定化対策を発表した。これにより短期的には国内金融市場の安定が予想されるが、一部の分野では大きな効果は期待できないとの懸念も出ている。

<銀行の対外債務、3年間政府保証>
政府は10月19日、国内金融市場を安定化させるため、「国際金融市場不安の克服対策(以下、10.19対策)」を発表した。10.19対策の詳細内容は以下のとおり。

(1)外貨の流動性確保支援
政府は、銀行間の借り入れに対する各国の政府保証の活発化により韓国の銀行が不利益を受けることを避けるため、銀行の対外債務に政府保証を付与することにした。対象は2009年6月30日までに海外から借り入れる債務で、保証期間は3年間。保証規模は総額1,000億ドルとなる。政府では、09年6月までに満期が来る国内銀行の対外債務は約800億ドルとしている。また、政府と韓国銀行(中央銀行)は外貨の流動性を確保するため、300億ドルを市中に供給することにした。

(2)株式市場安定化のための税制支援
長期保有型の株式・債券ファンドに対する税制支援を通じ、株式市場と資産運用会社の安定化を図ることを目的としている。長期株式型ファンド(積み立て式)に3年以上加入する場合、金額の一定比率の所得控除と配当所得に対する非課税制度を実施する。長期会社債券型ファンド(据え置き式)に3年以上加入した場合、配当所得を非課税とする。同対策により、1兆3,000万ウォンの減税効果が期待される。

(3)ウォンの流動性支援
ウォンの流動性確保のため、韓国銀行は金融市場に買い戻し条件付き債権の買い入れ、国債の買い入れおよび通貨安定証券(注1)の途中償還などを実施し、ウォンの供給を増やす。

(4)企業銀行(Industrial Bank of Korea)の資本拡充
中小企業への金融支援を拡大するため、政府系金融機関の企業銀行に1兆ウォン出資する。1兆ウォンの増資により、中小企業への貸し出し余力は約12兆ウォン増加(韓国政府推定)すると見込まれる。

(5)国際協力体制強化
韓国など新興経済国が属するG20の枠組みで通貨スワップ(注2)を含む国際協力体制を構築するよう働きかける。また、ASEAN+3(日中韓)での外貨融通制度である「チェンマイ・イニシアチブ(注3)」も09年完了を目標にする。

<短期的には金融市場の安定にプラス効果>
10.19対策に対して、金融業界では、政府の支払い保証とドルの供給により、ドル調達がある程度容易になるとして歓迎している。また、ファンドに対する税制見直しやウォンの供給拡大によって資金の株式市場への回帰をもたらし、株式市場の安定化に貢献することを期待している。

しかし、10.19対策は、最近の世界的な金融不安下での措置であり、韓国の金融市場のファンダメンタルズを改善させるビジョンにはなっていないとの見方もある。ある銀行関係者は「10.19対策にもかかわらず、外国人が韓国から資金を回収しているし、国際金融市場が依然として不安定なため、ウォン安はしばらく続く」(「毎日経済新聞」10月20日)とみている。「株式市場の安定を図るには税制支援規模が小さすぎる、ウォンの流動性支援の対策は具体的な金額が明示されていない」(「毎日経済新聞」10月20日)といった懸念も出ている。

また、政府が支払いを保証することによる銀行のモラルハザードの拡大や韓国銀行がウォンの供給を増やすことによる物価上昇を警戒する指摘もある。

(注1)韓国銀行が、急激なウォン高を防ぐために外貨を買い入れる名目で発行する証券。
(注2)事前に合意された為替レートで決められた期間に交換する契約で、中長期的な為替リスクをヘッジする仕組み。
(注3)00年5月にタイのチェンマイで開催されたASEAN+3財務相会合で合意された2国間通貨スワップ取り決めのネットワーク構築などを内容とするイニシアチブ。

(李海昌)

(韓国)

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