短期的には楽観的な見方−金融危機の影響−

(ペルー)

リマ発

2008年10月21日

米国発の金融危機が国内経済に与える影響について、短期的には楽観視する見方が大勢を占めている。ただし、世界的な景気後退が長期化すれば、鉱物資源や代表的な非伝統輸出産品である繊維製品の輸出に大きなダメージを与え、好調な経済に水を差す懸念もある。

<通貨は安定的に推移>
リマ証券市場の代表的な指標であるリマ証券市場総合指数(IGBVL)は、米リーマン・ブラザーズが破綻を発表する前の9月12日に12,074ポイントだったが、10月16日には8,370ポイントまで下落している。主要各国の公的資金注入策が出そろったことを踏まえて一時は回復をみせたものの、今後も神経質な動きが続くと予想される。

外国為替相場は比較的安定しており、対ドル(仲値)は3.01ヌエボソル前後で推移している。背景として外貨準備を確実に積み増すなど中央銀行の対応に安定感がみられることが挙げられる。9月末の外貨準備高は347億ドルと公的部門と民間部門を合わせた対外債務(6月末で359億ドル)と同規模で推移している。

ペルー各紙の報道では、リマ証券市場は今後、一時的に厳しい局面を迎えるが、国内経済は内需拡大による力強い成長を遂げており、世界的な金融危機の影響は短期的には軽微とする楽観的な見方が多い。主要輸出産品の鉱業製品は国際市況の影響を直接受けることになるが、市場価格が下がりつつある銅や亜鉛だけでなく、比較的、価格の下落幅が小さい金も生産するなど埋蔵資源の多様性がリスク分散につながっている。

しかし、世界的な景気後退が長期化すれば、鉱物資源の需要が減ることは避けられない。また、投資促進庁のダビッド・レモール長官は「これまでのところ、内外企業による積極的な投資姿勢に大きな陰りは見られないが、将来的には外資企業の資金調達に影響する可能性がある」ことを懸念している。

ペルー工業協会(SNI)は、非伝統産品の最有力輸出品目である繊維製品について、最大の輸出先である米国の市場が縮小すれば、繊維関連の輸出企業に大きな影響を及ぼす可能性がある、と発表した。

また、パシフィコ大学のゴンザレス教授は「今後、各セクターに金融危機の影響が及ぶことが考えられる。08年については輸出額の前年比伸び率を8%と見込んでいるが、09年については3%程度に落ち込むのではないか」とみている。

(石田達也)

(ペルー)

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