AJCEPに基づく特恵関税の適用を開始-財務大臣令が3月1日に施行-

(インドネシア)

ジャカルタ、バンコク発

2018年03月15日

インドネシアは3月1日から、日本ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)に基づく特恵関税の適用を開始した。2019年以降は毎年1月1日に関税引き下げが実施される。

2019年以降は毎年1月1日に関税引き下げ

AJCEPは、2008年4月にASEAN10カ国と日本の間で合意され、2008年から2010年までの間に、日本、シンガポール、ラオス、ベトナム、ミャンマー、ブルネイ、マレーシア、タイ、カンボジア、フィリピンで順次発効している。協定に基づき、インドネシアを含むASEAN6カ国では、AJCEP発効から「10年以内に貿易額・品目数ともに90%について関税撤廃を行う」ことが規定されている。しかし、インドネシアについては合意後、2009年11月19日付の大統領規定第50号において国内の批准手続きをしながらも、特恵関税の適用に関する規定など関連規定が制定されず、インドネシアでの輸入時に特恵関税を使えない状況が続いていた。

転機となったのは、2017年11月にフィリピン・マニラで開催された日ASEAN経済相会合だ。同会合では、AJCEPの中で積み残しとなっていた、投資・サービス分野についての交渉が行われ、日本とASEAN各国の間で、最終合意に達した。CNNインドネシアが伝えたところによると、インドネシアのエンガルティアスト商業相は、投資家保護や紛争解決条項(ISDS条項)の中に、インドネシアの主張を追加する一方で、AJCEP特恵関税の適用に関する国内手続きを行うことで合意した。

その後、インドネシア商業省が、同財務省に対する2017年11月27日付の書簡で、AJCEPに基づく輸入関税の適用を提言したことを受けて、財務省は、2018年2月15日付で財務大臣令2018年18号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発布、3月1日から施行し、AJCEPで合意していた譲許表に基づく輸入関税を適用することを決定した。2019年以降は毎年1月1日に関税引き下げが実施される。関税分類ごとの譲許スケジュールは、同財務大臣令の添付資料で参照できる。

譲許スケジュールについては、協定本文の第79条第2項に基づき、AJCEPの発効日である2008年12月1日を基準年とし、協定発効日以降に参加(発効)した締約国は基準年から数えたステージングが適用されることとなっている。すなわち、2018年3月からAJCEPの適用を開始するインドネシアについては、2008年12月に1回目の関税引き下げ、その後毎年1月1日に関税引き下げが行われてきたと仮定し、2018年1月以降、11年目のステージに入っていることとなる。なお、AJCEP適用の要否に当たっては、最恵国(MFN)税率に加え、日インドネシア経済連携協定(JIEPA)(2008年7月発効)の譲許税率と比較の上、有利な税率を適用するよう留意が必要だ。

他方、上記規定に先立ち、インドネシア財務省は2017年12月29日付の財務大臣規定No.229/PMK.04/2017PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)において、国際協約に基づく輸入品の関税率の適用手順を改正し、対象とする協約にAJCEPを追加するとともに、AJCEPで利用する原産地証明書のフォーム(Form AJ)などを公開した。

多国間での累積規定が適用可能に

インドネシアでAJCEPが発効したことを受けて、今後はインドネシアを含んだサプライチェーンにおいて、より柔軟な自由貿易協定(FTA)の利用が可能となる。その1つが原産地規則の簡素化だ。日インドネシアEPAを利用する場合、非原産品が含まれる場合の原産判定は、個別の品目ごとに定められている「品目別規則」を参照する必要があった。AJCEPでは品目別規則に加え、「一般規則」が採用されており、品目別規則表に記載のない品目については、域内付加価値率40%、もしくはHSコード4桁変更基準(CTH)を満たせば、AJCEP税率の適用を受けることが可能となる。

また、原産地規則の関連措置として注目されるのが、累積規定の活用だ。累積要件自体は日インドネシアEPAでも採用されているが、それが締約国3カ国以上でも利用できるようになった。例えば、日本原産の原材料・部品を用いてベトナムで組み立てた製品をインドネシアに輸出する場合、これまではベトナムでFOB価格に対し40%以上の付加価値を生まない限り、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)税率が適用できず、インドネシアにはMFN税率で輸入する必要があった。しかし、AJCEPの発効に伴い、一般規則の付加価値基準を適用する場合、今後はベトナム1カ国での付加価値が40%に満たなくても、日本原産品の価格にベトナムの付加価値額を「累積」して、その総額が製品FOB価格の40%を超えれば、AJCEP税率でインドネシアに輸入することが可能となる。また、日本原産部品を用いてインドネシアで組み立てた自動車部品などについても同様に、インドネシア国内で追加した付加価値が低くても、日本原産部品の価格を足しあげた割合が、FOB価格の40%超となる場合は、AJCEP税率で他のASEAN各国へ輸出することが可能だ。

(山城武伸、蒲田亮平)

(インドネシア)

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