政策金利を1.50%に据え置き

(タイ)

バンコク発

2018年06月26日

タイ銀行(BOT、中央銀行)は6月20日、金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を1.50%に据え置く決定をした。

昨今、タイ・バーツは1ドル=32.08バーツ(6月12日)から1ドル=32.72バーツ(6月19日)とバーツ安が進んでいたことから、MPCの開催は注目を集めていた。バーツ安の背景には、6月13日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が、政策金利を2.0%へ引き上げたことや、欧州中央銀行(ECB)政策理事会の動向、米中の貿易戦争への懸念などがある。

政府からは利上げ牽制発言も

MPC開催を前にアピサック財務相は「タイ経済は、米国の利上げによるバーツ安から利益も得ている。タイで利上げを急ぐ必要はない」と発言。また商務省のクラヤ広報官も「タイの金融市場には高い流動性があり、経済も堅調だ。米国の利上げによってタイ経済は悪影響を受けていない」と述べるなど、タイ政府からは利上げを牽制する発言も聞かれた。

こうした中で開催されたMPCでも、メンバーの1人が政策金利の0.25ポイント引き上げを求めたが、5対1の多数で1.50%据え置きが決まった。また、併せて公表されたタイ経済の見通しによれば、2018年の実質GDP成長率は前年比4.4%、2019年は4.2%と上方修正された。

ただ物価については、2018年の消費者物価指数(CPI)上昇率は、総合で前年比1.1%、コアCPIで0.7%とされた。また2019年も総合で1.2%、コアCPIで0.9%となり、中銀のインフレターゲットである「前年比2.5%±1.5%」内に収まる見込みだ。

そのため、MPCでは政策金利を現行の緩和的な水準に保ち、今後も国内市場の需要と、物価の動向を見極める必要があると判断した。さらに、MPCは各国の保護主義的な貿易政策によるタイ経済への影響も不透明であることから、引き続き注視するとしている。

タイ経済はここ数年、貿易収支に加え、外国人観光客の増加によりサービス収支も大幅な黒字を計上し、金融市場における流動性に大きな問題は生じていない。ただし、タイと米国の政策金利の格差が拡大すれば、タイからの資本流出を招きかねないだけに、BOTは今後の金融政策において難しい選択を迫られる可能性もありそうだ。

(阿部桂三)

(タイ)

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