日本との特許審査ハイウエーを4月から試行

(ブラジル、日本)

サンパウロ発

2017年04月03日

 ブラジル産業財産庁(INPI)と日本の特許庁(JPO)は、特許審査ハイウエー(PPH)試行プログラムを4月1日から2年間実施する。INPIでは特許出願に対する最初の審査結果が出るまで平均で10年を要しているが、出願人がINPIにPPHを申請することで、審査期間が大幅に短縮されるとみられる。これにより、日本企業はブラジルで早期に特許権を取得することが可能となり、円滑な事業展開が期待されている。

2019年3月末まで200件を上限に申請受け付け

ジェトロ・サンパウロ事務所とJPOが3月16日に共催した「日伯間の知財協力に関するセミナー」において、両国政府・業界関係者約140人が見守る中、ルイス・ピメンテルINPI長官と小宮義則JPO長官がPPH試行プログラム開始に関する合意文書に署名した。PPHは、第1庁(先行庁)で特許可能と判断された発明を有する特許出願について、出願人の申請により、第2庁(後続庁)において簡易な手続きで早期審査が受けられる枠組みだ。

セミナーにおける三浦和幸JPO国際協力課長の説明によると、INPIとJPOは4月1日から2019年3月末まで、それぞれ200件を上限としてPPHの申請を受け付ける。申請に関しては、1出願人当たりの可能件数に制限(1出願人当たり4ヵ月に6件、ただし試行期間最後の4ヵ月はこの制限が撤廃)が設けられている点と、対象技術分野がIT分野および自動車関連技術を中心とした機械分野に限定されている点に留意する必要がある。JPOへの申請に関しては、1出願人当たりの可能件数や対象技術分野に制限は設けられていない。

日本は中南米各国とのPPHネットワークを推進

JPOは2006年に米国特許商標庁(USPTO)とPPHを開始し、現在は35ヵ国・地域と実施している。中南米では2011年7月からメキシコ、2014年9月からコロンビアとそれぞれPPHを開始している。

JPOはブラジル以外にもアルゼンとチリとのPPHの試行を、それぞれ2017年4月と8月に開始することで合意しており、ペルーとも交渉を進めている。今後、中南米各国とのPPHネットワークの整備が進み、日本企業がこれらの国で早期に特許権を取得できるようになることが期待されている。

ホンダサウスアメリカのマルコス・ベント法務部長はセミナーで、「ホンダのブラジル国内における製品開発および知財活動」と題したプレゼンテーションを行い、模倣品対策を進める上での権利行使、さらには国内で自動車開発を進める上でも今回の日本・ブラジル間の知的財産面での協力は極めて重要だ、と強調した。

米国とのPPHでは出願日にも制限

INPIは2016年1月からUSPTOとPPHの試行を実施している。期間は2年で、INPIへの申請は上限が150件となっている。対象技術分野は石油・ガス分野に限定され、出願日にも制限(2013年1月11日以降)が設けられている。1出願人当たりの申請可能件数に制限は設けられていないが、対象技術分野と出願日に厳しい制限があるため、3月16日時点で38件しか申請が出されていない。

INPIは2016年12月から、欧州特許庁(EPO)ともPPH交渉を行っているもようだが、今回の日本とのPPH開始により、IT分野や自動車関連技術を中心とした機械分野におけるブラジルへの特許出願は早期に審査結果が得られる点で日本企業が有利になるとみられている。

(大久保敦、岡本正紀)

(ブラジル、日本)

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