平和堂、婦人服や飲食店が堅調-長沙市に4店舗、総経理に聞く-

(中国)

武漢発、中国北アジア課

2017年01月11日

 総合スーパーマーケットの平和堂(本社:滋賀県彦根市)は1998年に湖南省長沙市に百貨店1号店を開店し、現在では市内で4店舗を経営する。若者向けの婦人服や飲食店が堅調で、改装工事の影響を除けば2016年の売り上げはほぼ前年並みを見込む。2017年1月には越境電子商取引(EC)サイト「JAPAN MALL」を新設し、日本製品の直送サービスを開始する予定だ。平和堂(中国)の寿谷正潔総経理に話を聞いた(11月3日)。

<平和堂ならではのテナントそろえる>

問:2016年の業績は。

 

答:売り上げの伸び率は、改装工事による長期営業制限の影響を除くと前年並みかマイナス23%の見込みだ。中国の百貨店業界全体が振るわない中、当社の状況は良い方だ。貴金属などの高額品や紳士服の販売は苦戦しているが、婦人服や飲食部門は堅調に伸びている。

 

 売り上げの一時減少はリーマン・ショック後にもあったが、中国政府の景気対策が奏功したこともあり、その時は半年で回復した。今回は回復のペースが当時より遅いが、中国の消費は落ちるどころか、むしろ伸びている。ECの普及をはじめ、この23年で生じた消費チャンネルや消費スタイルの変化が背景にある。

 

 必要なものはインターネットで簡単に買える時代だ。だからこそ、飲食店や婦人服、雑貨など平和堂ならではのテナントをそろえるようにしている。例えば、飲食では牛丼の吉野家や洋風ベーカリーのブレッドトーク(BreadTalk)など本場に近い味が売りだ。大人数、接待向けの飲食店ではなく、友達や家族などとの少人数、個人向けの店が人気だ。

 

 お客様へ常に新しいサービス・商品を提供するため、長沙市未進出のテナントにも積極的に働き掛け、出店を実現してきた。例えば、2009年に長沙市1号店をオープンさせたブレッドトークがそうだ。平和堂でクロワッサンなどのパンが売れ始めたことから、同店のパンは売れるという自信があった。開店後はわれわれの予想どおり、人気店となった。同様に当社からの働き掛けによって開店準備を進めているのが、カレーハウスCoCo壱番屋だ。同社の長沙市初出店となる予定だが、当地のお客様にカレーライスは十分に受け入れていただけるだろう。1食当たりの価格設定も40元(約680円、1元=約17円)程度で高過ぎず、ちょうどいいと思う。

写真 平和堂五一広場店(ジェトロ撮影)

<若年層は「自分らしさ」を重視>

問:ターゲット層の特徴は。

 

答:開店以来、平和堂の主なターゲット層は2535歳だ。当店は開業から18年がたち、「当時2535歳」だったお客様も年を重ね、ミセス向け婦人服の需要が増えてきた。

 

 しかし、最も消費意欲があるのは「現在の2535歳」だ。幼いころからハンバーガーやピザなどに慣れ親しみ、時には海外旅行を楽しむなど、上の世代とは異なる特徴がある。

 

 この世代は特に「自分らしさ」を重視するため、「自分らしい洋服」や「自分好みの雑貨」が選ばれており、個性のはっきりとしたブランドが受け入れられている。例えば婦人服では日本の若者向けブランドの「snidel(スナイデル)」や「MOUSSY(マウジー)」が人気だ。

 

 また、25歳前後の世代の購買力は、本人の所得水準以上に親の所得水準の影響を大きく受けている。親から潤沢な資金援助を受けながら生活し、インターネットを駆使して日本など海外からの輸入品を買うという若い層は決して珍しくなく、ある程度のボリュームで存在している。これらの人の中から、同世代を牽引するファッションリーダーが登場しているのだろう。

 

<「越境EC」直送サービスを開始>

問:これまでのECサービス展開状況は。

 

答:2012年から独自のECサイトを運営し、自社で調達した日本からの輸入品や日系企業の現地生産品などを平和堂ECサイトで販売してきた。さらに2015年には、それまで国内企業にのみ認められてきた出店型ECサイトの運営許可が外資系企業にも開放されたため、当社は外資第1号として許可を取得した。その後は他社の出店も増えており、現在の売れ筋はフェイスパック、歯ブラシ、紙おむつ、セラミック包丁などだ。今後はさらに多様な商品を扱っていきたい。

 

 ECサイトはスマートフォン用アプリで利用するお客様が大半だが、実店舗でも「支付宝(アリペイ)」「微信支付(ウィーチャットペイ)」など、スマホ決済の利用が増えている。そこで201610月にアプリをバージョンアップし、実店舗とECのポイントを共通化した。これにより、ECから実店舗へ、実店舗からECへという、双方向での利用が容易になった。

 

問:新たにスタートする「越境EC」直送サービスの特徴は。

 

答:中国人のお客様が安心できて、かつ、うれしいのは、日本製品を日本から直接購入することだ。そこで、20171月に越境ECサイト「JAPAN MALL」を新設し、日本製品の直送サービスを開始する。大阪に設立する平和堂中国の子会社が日本側の窓口となり、出店企業との間で出店開発・運営を行う。また、日本から中国までの商品配送については一貫して日本通運が手配するなど、出店企業を日本側でフルサポートする体制が整った。ぜひ多くの日本企業に参加いただきたい。

 

 55万人が登録する平和堂のECサイト会員には、実店舗で商品を見る目が肥えたお客様が多い。また同サービスにかかる費用は掲載料を含めて年間約20万~30万円と安く、企業がテストマーケティング費用として負担しやすい価格だ。中国の大手ECサイトに出店した場合は高額な固定費がかかるとされる上、手数料もかかる。中国における日本製品の販売価格は日本国内での店頭売価のほぼ1.52倍というのが普通だが、当社は1.2倍程度で販売したい。さらに、直送ECサイトでよく売れる商品は、一括輸入して配達期間を短縮したり、実店舗でも販売したいと考えている。

 

(片小田廣大、森詩織)

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