日・インド社会保障協定、10月に発効-年金保険料の二重負担解消へ-

(インド、日本)

ニューデリー発

2016年09月13日

 日・インド社会保障協定が10月1日に発効する。これにより、日本とインドから相手国にそれぞれ派遣される駐在員の年金保険料の二重負担の解消、日本とインドでの保険期間の通算、申請の代理受理、が可能となる。

<一定条件下でインドの年金加入を免除>

 社会保障に関する日本とインドとの協定(日・インド社会保障協定)が、201211月の署名から4年の歳月を経て、101日に発効する。同協定では、両国の年金制度、すなわち日本側の厚生年金保険とインド側の被用者年金制度(EPS)および被用者積立基金制度(EPF)を対象に、(1)二重負担の解消、(2)保険期間の通算、(3)申請書の代理受理、が取り決められた。

 

 まず、(1)の保険料の二重負担の解消に関しては、例えば日本からインドに派遣される駐在員は日本の厚生年金保険とインドの年金(EPSEPF)の両方に加入しなければならず、保険料の二重負担を強いられていた。しかし、今後は「派遣期間が5年を超えない」という条件を満たすことで、インドの制度への加入が不要となる。なお、予測不能な事情などによって、派遣期間が5年を超えた場合には、期間の延長が認められるものの、延長期間は3年を超えてはならないとされている。さらに、当初の派遣期間と延長期間の合計8年を超える場合でも、インドのEPS加入基準である月収15,000ルピー(約22,500円、1ルピー=約1.5円)を超える外国人労働者に該当する場合は、継続して日本の制度に加入することができる。既にインドに派遣されている駐在員に関しては、協定が発効する2016101日を起点日として、その後に予定される派遣期間が5年以下と見込まれる場合には、インドの制度への加入が免除される。

 

 (2)の日本とインドでの保険期間の通算に関しては、例えば老齢年金に関し、これまでインドに派遣された日本の駐在員は、EPSにおける年金給付のための年金保険期間(支払期間)が10年に満たない場合、インドの年金は支給されなかった。しかし協定発効により、年金の受給資格要件を判断する際に、相手国の年金保険加入期間を算入することが可能となり、日本の厚生年金加入期間とEPS加入期間を足して10年を超える場合には、インド就労期間分のインド老齢年金が支給されるようになる。同様にインドの年金保険支払期間を、日本の老齢年金給付の条件である25年に算入することができる。ただし、日本の年金保険とインドの年金保険が重複する期間は算入されない。

 

 (3)の申請書の代理受理では、これまで日本の年金申請は日本の年金窓口へ、インドの年金申請はインドの年金窓口へそれぞれ必要だったが、協定発効後は日本の年金窓口でインドの年金申請が、同様にインドの窓口で日本の年金申請が可能となる。

 

101日から日本でも申請が可能に>

 日本からインド年金の適用免除を受けるには、101日以降に日本で適用証明書の発給を受ける必要がある。日本年金機構のウェから適用証明書交付申請書を入手し、日本の年金事務所へ申請が可能だ。協定発効直後は手続きに時間がかかることも予想されるが、日本年金機構によると通常、証明書の発行のめどは2週間程度を想定しているという。交付された適用証明書は、日本からの一時派遣者(駐在員)がインドの勤務先に提出、インドの勤務先が管理し、必要に応じてインドの被用者積立基金機構(EPFO)に提示されるという。既にインドに派遣されている駐在員に関しても同様の手続きを経ることで、インドの年金制度への加入は免除される。

 

 インドの年金保険期間を有する日本の居住者が、インドの年金などを請求する場合、必要な申請書を日本の年金事務所に申請すると、日本年金機構本部を通じてインドの当局で審査し給付される。支払い方法としては日本の口座への振り込みや小切手を想定しているという。在インド日本大使館のウェサイに協定に関する資料が公開されている。

 

(古屋礼子)

(インド、日本)

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