15項目の優先的経済政策パッケージを発表-社会保障改革法案の採決は見送り-

(ブラジル)

サンパウロ発

2018年03月28日

ブラジル政府は2月19日、社会保障改革法案の採決を見送ることを公式に発表する一方で、公営電力企業エレトロブラス(Eletrobras)の民営化や、中央銀行の独立性を強化すること、PIS/COFINS(社会保障関連負担金)の課徴方式を簡素化するなどの内容を含む、通称「プランB」と称される15の項目からなる経済政策上の優先項目を発表した。

多くは法案として提出済み

ブラジルのテーメル政権は、かねて構造改革のための重要事項として、労働法の改正(2017年11月に改正法が施行)と並び、社会保障改革法案の成立を目指してきた。この社会保障改革法案は、大統領選挙を10月に控えて賛成票を投じる議員の確保が困難な状況となっていたことに加え、リオデジャネイロ州での治安対策権限の移管に伴う法的な制約(注)が生じたことから、テーメル政権は2月19日、同法案の議会採決を見送ることを公表した。

プランBに含まれる15の優先項目は、新規のものもあるが、多くは既に法案として議会に提出されたもので、これらがパッケージとして取りまとめられた。2018年中の施行を目指す場合、それぞれの法案審議のために残された期間は、ブラジル議会が休会になる7月までの約4カ月間だが、実現の見通しが良好なものもあれば、困難とみられるものもある。

◇新規のもの

  • PIS/COFINS(社会保障関連負担金)の課徴方式の簡素化
  • 中央銀行の独立性強化
  • コンセッション方式の導入拡大のための電気通信事業法の改正
  • 油田開発分野の政府系ファンドの廃止

◇法案既提出のもの

  • 公共調達における入札・契約関連の法整備(法案提出:2017年2月)
  • 財政責任法の改正によるブラジル政府予算作成プロセスの改善(2016年6月)
  • 公務員給与水準の上限設定方式の厳格化(2016年12月)
  • ブラジル政府規制当局(エネルギー、資源、電気通信、衛生、運輸などの分野)の運営に関する透明性強化(2016年12月)
  • 給与の税額控除方式の見直し(2017年9月)
  • 公営企業の財務悪化時の救済手続きの明確化(2017年11月)
  • 商業手形の電子化のためのシステム導入(2017年12月)
  • 民間金融機関に対する中央銀行への任意の準備預金制度の導入(2017年11月)
  • 個人のクレジット履歴の作成義務化(2017年6月)
  • 不動産売買の際の契約破棄に関連する規則の整備(2015年12月)
  • 公営電力企業エレトロブラス(Eletrobras)の民営化(2018年1月)

数カ月の国会審議では成立困難な項目も

現地報道などによると、これらの15項目のうち、幾つかの項目は議員の間でも賛否が分かれ、可決されるのが難しいとみられている。特に、PIS/COFINSの課徴方式の簡素化、中央銀行の独立性強化や、エレトロブラスの民営化に関する事項は、国会での十分な審議時間が必要とされ、数カ月の間に採決に至るのは困難視されている。他方で、利害対立のそれほどない比較的シンプルな規則の制定に関する事項は、可決の見込みが高いとされている。

エンリケ・メイレーレス財務相は、これらの優先項目が全て承認されれば、社会保障制度改革以上の大きな経済的インパクトがあると述べているが、重要な項目が採決に至らず比較的軽微な項目のみの可決に至る場合、経済的インパクトはごく限定的とされている。

(注)政府は2月16日、リオデジャネイロ州の治安対策権限を州警察から軍に移管。ブラジル憲法では、連邦政府が州の行政管轄分野に介入している間の憲法改正を禁じており、憲法改正を伴なう社会保障改革法案の議会採決は不可能となった。

(岩瀬恵一)

(ブラジル)

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