米CSISグッドマン氏、G20サミットでのインフラ投資・デジタル経済の合意を評価

(世界、米国)

ニューヨーク発

2019年07月04日

ジェトロは7月3日、ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)上級バイスプレデント兼政治経済担当部長兼アジア経済上級アドバイザーのマシュー・グッドマン氏に、G20大阪サミット(首脳会談)の成果に関する見方を聞いた。

(問)G20大阪サミットの成果をどう評価するか。

(答)首脳宣言PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)には、既存の問題に対する具体的な解決策などの提示はなく、控えめな内容にとどまった印象だが、国際協力を推進するとした(1)貿易・投資、(2)質の高いインフラ投資、(3)デジタル経済・貿易の3点に注目している。

貿易・投資に関して、前回の第13回G20サミットでは、「保護主義への対抗」を示す表現を宣言に盛り込むことが米国の反対で見送られたが、今回も同様に見送られた点に落胆している。しかし、貿易を促進する観点で、新たな文言が加えられたことは評価している。例えば、「自由、公平、無差別で透明性があり予測可能な安定した貿易および投資環境を実現し、われわれの市場を開放的に保つよう努力する」「国際的な貿易および投資は、成長、生産性、イノベーション、雇用創出および開発の重要な牽引力である」といった文言だ。また、WTOの紛争解決制度の改善をめぐって行動が必要との認識で合意しており、2020年6月に予定されている第12回WTO閣僚会議までの進展が期待される。

インフラ投資については、中国も含めたG20参加国が「質の高いインフラ投資」の必要性について合意した点は、最も興味深く大きな成果の1つだ。具体的には、インフラのライフサイクル・コストや、環境・社会への配慮、持続可能な財政負担などを考慮して投資を推進するとの文言が盛り込まれた。これらの考えは日米の共通認識だが、これまで中国が合意してこなかった事項だ。例えば、中国のインフラ開発事例を見ると、中国から融資を受けた途上国が返済不能に陥り、巨額の負債を抱えるという事態が起きているが、今回の宣言はこの中国の動きを牽制するものだ。しかし、あくまで宣言文であるため、今後実際に履行されるかが課題だ。

デジタル経済・貿易については、安倍晋三首相が提唱する「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)構想(DFFT)」の基本的な考え方で合意し、1つの章として宣言に盛り込まれた点が成果の1つと言える。

写真 G20大阪サミットを評価するマシュー・グッドマン氏(ジェトロ撮影)

G20大阪サミットを評価するマシュー・グッドマン氏(ジェトロ撮影)

(須貝智也)

(世界、米国)

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