日本産食材ピックアップ和牛

日本で生まれ育った和牛が世界を魅了

「和牛」は、日本在来種の牛をベースに交配を繰り返してつくられた品種です。他の品種にはない柔らかな肉質や、繊細かつ芳醇な味わいを持ち、高級な牛肉の代表格として、「WAGYU」は欧米やアジアなどでも高い評価を受けています。

1970年代から90年代にかけて、和牛の遺伝資源がオーストラリアやアメリカなどに持ち込まれ育てられたことにより、外国産の「WAGYU」が海外で出回るようになりました。これらの牛肉は、日本で生まれ育った和牛とは飼育環境や品質などが異なります。外国産のものを逆輸入して日本で「和牛」として販売することはできません。

和牛の種別とそれぞれの個性

和牛として認められるのは、「黒毛和種」「褐毛(あかげ)和種」「日本短角種」「無角和種」の4品種と、それらの品種間のハイブリッドです。「黒毛和牛」は、そのうち90%以上を占め、日本全国で飼育されています。きめ細やかな“霜降り(脂肪が不規則な網の目のように入り込んでいる)”の肉になりやすいのが特徴です。

「褐毛和種」は、主に熊本県と高知県で育てられており、赤身と脂肪の絶妙なバランスと濃厚な味わいが特徴です。「日本短角種」の産地は東北地方と北海道で、赤身の多い肉はアミノ酸を豊富に含んでいます。「無角和種」は山口県で生産されている貴重な品種で、脂肪が少なく牛肉本来のうま味や香りを味わえます。

2007年以降、日本国内で「和牛」と表示して販売するためには、国内で生まれ育った牛で、かつ品種の条件を満たすことが証明でき、牛トレーサビリティ制度による10桁の個体識別番号でも確認できることが求められています。この番号は小売店などで一部を除いて表示することが義務付けられ、商品を購入した消費者がインターネットを通じて情報を確認することが可能です。

世界的にも知名度の高いブランド和牛

産地の銘柄を付けたブランド和牛は、多くの場合が、各地で育成方法や品質などに関する独自の基準を設け、それをクリアした優良な肉だけを認定したものです。三重県の「松阪牛」、兵庫県の「神戸ビーフ」、滋賀県の「近江牛」、山形県の「米沢牛」などは高値で取り引きされており、海外でも知名度が高いです。

日本全国では、200以上ものブランド和牛があるとされています。産地ごとの生育環境も多様で、生産者がこだわりを持って育てており、それぞれの銘柄が地域の特産品として独自の魅力を持っています。

「和牛」と「国産牛」の定義の違い

「国産牛」は、品種とは関係なく、日本国内で飼育された牛を指します。海外で飼育された牛を加工して輸入したものは輸入牛として販売されますが、外国から日本に移った牛の場合、日本での飼育期間の方が長ければ国産牛として扱われます。「和牛」は厳密には「国産牛」に含まれますが、和牛であることをアピールして区別するのが慣例となっています。

ホルスタイン種やジャージー種などの乳用種、和牛以外の肉専用種、肉専用種と乳用種の交雑種が、国産牛に含まれます。これらの国産牛は和牛に比べると一般的に価格が安く、広く流通しているのが特徴です。

厳しい品質管理のもとで生産

和牛は1990年代から輸出されましたが、2000年代に日本やアメリカ、カナダで牛海綿状脳症(BSE)が発生し、輸出入が一時的に禁じられました。その間に日本では、牛肉トレーサビリティ法によって牛を個体識別番号で一元管理し、生産段階や食肉加工段階での衛生管理の向上にも取り組んできました。輸入が再開された各国で日本の「和牛」の人気が高まる中、世界でも最も厳しいレベルの品質管理体制のもとで生産された牛肉を食卓に届けています。

2017年には、日本で生産された和牛であることを示す「和牛統一マーク」を刷新し、他国の「WAGYU」とは一線を画した本物の日本産の「和牛」を世界に向けてアピールしています。イスラム教の戒律に則って生産されたことを認める「ハラル認証」を取得した和牛の商品も増えており、「和牛」は世界中へと広がりつつあります。

日本の食文化と融合した和牛のおいしさ

日本の「和牛」は、味だけではなく、とろけるような食感や、特有の甘い香りも素晴らしいとされています。特に、柔らかくてジューシーな味わいを持つ黒毛和種は、シンプルな料理法でその本来の風味を楽しむことができます。焼肉やステーキ、ローストビーフのほか、たたきにしてもおいしく味わえます。

日本では、しゃぶしゃぶ、すき焼き、肉じゃがなどの料理が生まれ、牛肉を楽しむ独自の文化が発展しています。ファストフードの感覚で手軽に食べられる牛丼も、全国にたくさんの店舗があり、海外からの観光客の人気を集めています。近年では熟成肉がブームになるなど、牛肉の楽しみ方のバリエーションも増え続けており、和牛は日本の食文化とともに注目を集めています。