日本産食材ピックアップホタテ

おいしさと汎用性を兼ね備えた二枚貝

ホタテは正式には帆立貝(ほたてがい)と呼ばれる、イタヤガイ科の二枚貝です。殻の幅が20cm程度の大きさにまで成長し、主に東北地方から北海道の太平洋沿岸や日本海沿岸に生息しています。天然で漁獲されるものと養殖で育てるものがありますが、養殖ものも天然と同じように海から栄養分を得て育っているので、味や栄養に大きな差はないとされています。生のまま刺し身や寿司で食べる場合もあれば、加熱してさまざまな料理に使うことができ、おいしさと汎用性を兼ね備えた日本を代表する食用貝です。

世界から人気を集める日本のホタテ

日本で生産される魚介類で現在、世界から最も人気を集めているのがホタテです。2022年の日本のホタテの輸出額は約910億円(農林水産省「農林水産物輸出入概況」)で、前年から42.4%増加し過去最高となりました。輸出量が大幅に増加した背景としては、冷凍のホタテ(原貝)が中国で殻をむいて加工された後に、再び北米向けに輸出されているケースが増えていることが挙げられます。

南米や中国などでもホタテに似た種類の貝は養殖されていますが、高品質な日本産ホタテは世界で高く評価されており、水産物では輸出額上位を占めています。

品質の良い北海道・青森産

日本では1934年頃にホタテの養殖の研究が始まったとされ、1970年代に養殖が本格化して安定した生産ができるようになりました。ホタテ漁の方法は2種類あり、稚貝にひもを通したり、稚貝をかごに入れたりして、海中に吊るしたまま2、3年育てるのが「垂下式」です。「地まき式」は、稚貝を海底に放流してから3、4年後に底引き網で漁獲する方法で、天然もののホタテとして扱われることもあります。

主要な産地は北海道と青森県で、品質が良いことでも知られています。「垂下式」は、北海道の内浦湾や日本海沿岸、青森県の陸奥湾などで行われており、冬から春にかけて水揚げされることが多いです。「地まき式」は主に北海道のオホーツク沿岸で行われ、初夏から秋にかけて漁獲されます。

高タンパク質で低脂肪、ビタミン等も豊富

ホタテの殻の中身は、ウロと呼ばれる消化器官を取り除けば、ほとんどの部位を食べることができます。外とう膜は「ヒモ」と呼ばれ、酒のつまみとしても食されています。

特に、中央にある「貝柱」は人気が高く、干したり冷凍したりして単独の部位としても流通しています。貝柱は、殻を開閉させるために大きく発達した筋肉です。ホタテは貝柱を使って海水を吹き出して泳ぎ、一晩に500メートルを移動したこともあると言われています。強じんな筋肉の固まりである貝柱は、水分を除くと約8割がタンパク質で構成されています。グルタミン酸やグリシンも多く含まれ、貝柱のうま味を引き出しています。

ホタテには、鉄分や亜鉛などのミネラル、ビタミンB1・B2なども豊富に含まれています。さらに、アミノ酸の一種で、栄養ドリンクの主成分に使われているタウリンも多く摂取できます。高タンパク質かつ低脂肪で、ヘルシーな食材として注目はさらに高まっています。

優れた加工技術で新鮮なまま世界へ

日本のホタテが世界に広まった理由の一つに、優れた加工技術が挙げられます。一般的な貝類は冷凍が難しいとされていますが、ホタテは冷凍に適しており、瞬間的に冷凍する技術によって生のホタテとほぼ変わらない味を保てるようになりました。急速冷凍したホタテ貝柱は玉冷とも呼ばれ、刺し身や寿司などの生食用に使われています。

殻が付いたまま流通する場合もあれば、殻をむいて蒸したりボイルしたりするなどの加工をして出荷する場合もあります。水煮にして缶詰にするなど、さまざまな加工品がつくられており、貝柱を乾燥させたものは特に中国で人気を集めています。

さまざまな国の食文化や調理法に対応

ホタテは生臭さなどのクセが少なく、世界各国の食文化に合わせてさまざまな料理に使われています。刺し身や寿司、殻焼きなどの和食として楽しめるほか、バターソテー、ムニエル、グラタン、フライなどのアレンジが可能です。中国では貝柱が高級食材の一つで、スープなどに用いられています。宗教・文化的な制約も少ないホタテは、世界のあらゆる地域で親しまれるオールマイティーな食材だと言えるでしょう。

また、ホタテの貝殻は、食べることはできませんが、網焼きやグラタンなどの器としても使用されています。名画のモチーフや企業のロゴマークなどにも用いられ、左右対称で放射状の模様が美しい貝殻は、食卓を彩る効果も持っています。