日本産食材ピックアップブリ(ハマチ)

脂がのっておいしい日本固有の魚種

ブリ(ハマチ)は、日本の食卓では昔から親しまれている食用魚です。スズキ目アジ科に属する温帯性の回遊魚で、成長すると体長は1mを超え、重さは8kg程度になります。日本列島の沿岸から東シナ海にかけて生息し、日本近海の固有種と言える魚です。地域や魚の大きさによってさまざまな呼称がありますが、一般的に「ブリ」は天然魚と養殖魚を含む総称として使用し、「ハマチ」は養殖魚の意味で使って区別することが多いです。

天然ブリも養殖ブリも生産量が安定しており、ともに脂質が豊富になっておいしい冬に旬を迎えます。この時期のブリは「寒ブリ」と呼ばれており、新年を祝う正月料理にも使用されるなど、非常に人気を集めています。

縁起が良いとされる「出世魚」

ブリは成長に伴って呼び名が変わる「出世魚」の代表格です。例えば関東地方では、体長10~30cm程度のものをワカシと呼び、30~60cm程度でイナダ、60~80cm程度でワラサ、80cm以上でブリと呼ぶ場合が多いです。関西地方では成長するにつれツバス、ハマチ、メジロ、ブリと呼ぶなど、地域によってバリエーションに富んだ個性的な名前があることは、日本人のブリへの愛着を示しているとも言えるでしょう。

出世魚は、日本では縁起の良い魚として知られ、門出を祝う席などの料理によく使われる食材の一つです。北陸地方では、戦国武将の前田利家(1539頃~1599)が年末に歳暮としてブリを贈ったという説が伝わっています。この地域の一部では、娘が結婚した年の暮れに、嫁ぎ先と仲人にブリを1尾ずつ贈るという習わしがあるとされます。逆に、九州の北部では、嫁ぎ先から嫁の実家にブリを贈るという習慣が伝わっています。

日本全国の沿岸で漁獲

天然のブリは、沖縄を除くほぼ日本全国の沿岸で漁獲されます。伝統的な定置網が漁の主流でしたが、近年ではまき網漁でも漁獲されています。農林水産省の漁業・養殖業生産統計によると、2016年の天然ブリの漁獲量は10万4800トン。かつて、天然ブリは養殖ブリの半分程度でしたが、2010年から10万トン以上を維持し、ブリ生産量の約4割を占めます。地域別では、島根県、石川県、北海道、長崎県の順に水揚げが多くなっています。富山県の氷見(ひみ)ブリや北海道の天上ブリなど、各地に高級ブリのブランドがあり、高い価格で取引されています。

また、趣味で釣りをする人にとっても、ブリは格好のターゲットです。餌やルアーを変えたりして、季節によってさまざまなスタイルの釣りが楽しめます。

高い養殖技術により安定供給を実現

日本の海面で養殖された魚類の収穫量(2016年、農林水産省「漁業・養殖業生産統計」)は24万8200トンで、その半数以上の14万1000トンをブリ類が占めています。ブリは成長が非常に早く、18度以上の温暖な海水域で育つことから、鹿児島湾(鹿児島県)や豊後水道(愛媛県、大分県)などの各地で盛んに養殖されています。

養殖ブリの育成は、黒潮で生まれたモジャコと呼ばれる稚魚を捕獲して、種苗として用いるところから始まります。生け簀(す)に収容された稚魚は、豊富なえさを与えて育てられ、1~3年程度で出荷されます。春に5~10cm程度だった稚魚は、1年半後の秋には60cmの体長にまで成長します。

約90年前にスタートしたとされるブリの養殖技術は、歴史を経て発展しました。生け簀の大型化、ペレットえさの改良、疾病対策などを通じて、年間を通じて品質の高いブリを安定供給できるようになり、冬以外の季節では天然ブリよりも高値で取引されているほどです。飼育した親魚が早期採卵した稚魚を使った人工種苗によって、赤潮発生時期の前に出荷するなどの技術革新も進められています。

DHA、IPAなどの脂肪酸が豊富

天然ブリも養殖ブリも、良質のタンパク質と脂肪を豊富に含んでいます。日本食品標準成分表2015年版(七訂)によると、100gの天然ブリに含まれるタンパク質は21.4g、脂肪酸総量は12.71g。そのうち多価不飽和脂肪酸は3.72gで、ヒトが体内で合成できない成分も多く含まれています。

例えば、脳を活性化すると期待されているドコサヘキサエン酸(DHA)は100g中に1700mg、血液サラサラ成分と言われているイコサペンタエン酸(IPA、もしくはEPA)は940mg。これらの酸化を抑えるビタミンEも豊富に含まれています。さらに、ビタミンB群やビタミンD、うま味成分でもあるアミノ酸のタウリンなども多く含み、さまざな栄養成分を摂取することができます。

生でも焼いてもおいしく食べられる

脂がのったブリの風味は格別で、シンプルな味付けでも楽しめます。刺し身や寿司、カルパッチョなどもおいしいですが、加熱することで脂のうま味が引き立ちます。塩焼きや照り焼き、みそ漬け、しゃぶしゃぶなどの幅広い料理法で味わうことができます。さまざまな部位を大根と一緒に煮込む「ブリ大根」も、冬の定番料理として非常に人気があります。

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