木製家具の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出

質問

米国向けに木製家具を輸出したいと考えています。米国の輸入規則および留意点について教えてください。

回答

米国向け木製家具の輸出は、(1)改正レイシー法(Lacey Act)、(2)消費者製品安全改善法(Consumer Product Safety Improvement Act: CPSIA)の子供向け製品の安全性に関する条項、(3)複合木材製品のホルムアルデヒド基準法(Formaldehyde Standards for Composite Wood Products Act)の3つの法律で規制されているため、それぞれに準拠することが必要です。

I. 改正レイシー法による規制

  1. 2008年農業法(Food, Conservation, and Energy Act of 2008)の成立に伴い、本来は野生生物保護を目的としたレイシー法が改正されました。これにより、米国法あるいは外国法に違反して取得・輸送・売買された木材および木材由来製品は、国際間取引、州間取引を問わず、輸出入、輸送、販売、受け取り、取得、購入することができません。
  2. 「木材・木材製品」を米国に輸入する輸入業者には、品名・価格・数量とともに木材が伐採された国と木材の樹種の申告が義務付けられています。
    1. 申告フォーム
      PPQフォーム505を利用します。このフォームは、文末の米農務省(United States Department of Agriculture: USDA)の動植物検疫局(Animal and Plant Health Inspection Service: APHIS)PDFファイル(318KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます のウェブサイトで入手できます。
    2. 提出方法
      必要事項を記入し、通関地における審査の際に米国税関・国境警備局 (U.S. Customs and Border Protection: CBP)にコピーを提出します。
      その後、USDAに原本を郵送する方法と、CBPの電子通関システム(Customs Automated Broker Interface)を介して、PPQ505のオンライン申請を行う方法があります。オンライン申請を行う場合、USDAに書面を提出する必要はありません。
    3. レイシー法ウェブガバナーシステムの使用開始
      2014年8月にPPQ505のオンライン申請(Lacey Act Web Governance System: LAWGS)が開始されました。このシステムは、CBPの電子通関システムの代替ではなく、USDAにPPQ505を郵送で提出している輸入業者に対する提出方法の新しい選択肢となっています。
  3. 改正レイシー法の対象

    改正レイシー法は、貿易と国内取引のすべてを対象としています。木材製品に関しても、丸太や製材から合板や紙など最終製品までを対象にした広範囲に適用されます。PPQフォーム505の提出が義務付けられている「木材・木材製品」は、米国関税率表(Harmonized Tariff Schedule of the United States: HTSUS)の特定のHTSコードに限定されています。

    PPQフォーム505の提出が義務付けられている「木材・木材製品」は下記のとおりです。

    1. HTSコード44、66、82、92、93、94、95、96、97類に分類される品目の一部(うち木製家具のHTSコードは、種類によって44類または94類)
      対象品目は変更されることがあるので常に最新の情報を確認する必要があります。
    2. 木材が伐採された国や樹種がわからない場合、当該木材が伐採された可能性のある国、当該木材製品に利用された可能性のある樹種をすべて記載します。
    3. 改正レイシー法施行以前に製造された製品で産地や樹種の特定がきわめて困難である製品
      米農務省の特別な使用の指定(Special Use Designations)を参照し、PPQ Form 505を記入します。最新情報は「APHISのレイシー法関連情報ページ」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでご確認ください。

II. 消費者製品安全改善法(CPSIA)による規制

  1. 米国向け消費者製品は、CPSIAの適用を受けます。同法は、米国で販売される消費者製品を規制する1972年消費者製品安全法 (Consumer Product Safety Act: CPSA)を2008年に修正し、主に子供向け製品に関する規制を強化したものです。
  2. 子供向け製品とは
    主に12歳以下の子供による使用を意図した消費財を指します。例えば「子供用の装飾が施されている」ベッドや椅子、机などの家具も子供向け製品に含まれます。子供向け製品の定義は、消費者安全委員会(Consumer Product Safety Commission: CPSC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをご参照ください。
  3. 子供用の木製家具は、以下3つのCPSIA条項が適用されます。
    1. 第101条:塗料等に含まれる鉛含有量の規制(Children’s Products Containing Lead; Lead Paint Rule)
      CPSIA施行後の定期的な見直しにより、技術的に可能な場合には含有量規制がさらに厳格化される可能性があります。最新の情報はCPSCが随時発表する方針や見解、官報に公布される連邦規則集(Code of Federal Regulations :CFR)をご確認ください。
      1. 塗料および表面コーティング部分の鉛含有量
        2009年8月14日以降に製造された製品の塗料、および表面コーティング部分の鉛含有量が90ppmを超えないことを示す第三者機関による検査が必要です。
      2. 塗料および表面コーティング部分以外の鉛含有量
        2011年8月14日以降に製造された製品は、鉛含有量の上限は100ppmです。ただし、CPSCが基準値未満での製造が技術的に不可能と判断した場合には、例外として100ppmを超える鉛の含有が認められます。2012年1月1日以降に製造された製品は、第三者機関による検査が必要です。
    2. 第102条:CPSCが認定した第三者機関による製品検査の義務化を規定(Mandatory Third Party Testing for Certain Children’s Products)
      すべての子供向け製品に消費者安全委員会が認定した第三者検査機関による検査を義務付けること、検査の義務化適用時期が定められています。各分野の適用時期は文末のウェブサイトをご参照ください。子供向け家具に関連した規制値と検査義務は以下のとおりです。
        1. ベビーベッド(Full-size, non full-size cribs): 2009年1月20日以降に製造された製品
        2. 二段ベッド: 2010年2月10日以降に製造された製品
        3. 幼児用ベッド (Toddler bed): 2011年10月20日以降に製造された製品

      なお、上記の製品で2011年12月31日以前に製造されたものは、鉛含有量以外の点でも、連邦規則が定める規格への適合性について、第三者機関による検査が必要です。

      CPSCが認定した第三者機関のリストは、CPSC認定の第三者機関リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますをご参照ください。初回認定(initial certification)後、製造者は少なくとも年1回検査を受け、定期検査計画(periodic testing plan)を策定する必要があります。また材料に変更があった場合も再度検査(material change testingもしくはcomponent part testing)が必要です。ただしISO/IEC 17025-2005認定の研究所で検査を受けた場合は、例外として2年に1回または3年に1回の検査が認められます。

      輸入品を販売する場合、輸入者は第三者機関の結果に基づき、規制値以下であることの証明書を作成する必要があります。証明書は提出を求められた場合を除き、CPSC等への提出は不要です。証明書は、紙だけでなく電子媒体も認められています。第三者機関の検査結果および輸入者の証明書は、製造から5年間の保存が義務付けられています。

    3. 第103条:トラッキングラベルに関する規則(Tracking Labels for Children's Products)
      2009年8月15日以降に製造された12歳以下の子供向け製品には、トラッキングラベル(tracking label)または明確に識別できる恒久的なマーク(distinguishing permanent mark)をつける必要があります。ラベルやマークには以下の基本情報の記載が必要です。詳細は、トラッキングラベルに関する規則PDFファイル(31KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでラベルやマークの表示内容、位置や方法などについてのCPSCの方針書をご参照ください。
      1. メーカーまたはプライベート・ブランドの名称
      2. 生産地
      3. 製造日
      4. 製造プロセス管理情報(ロット、バッチ製造番号など)

子供向け製品以外でも、塗料および表面コーティング部分に関しては、鉛含有量の上限は90ppmです。輸入者は、規制の遵守を示す安全確認書(General Certificate of Conformity: GCC)を発行することが義務付けられています。GCCは各製品のテストまたは該当テストプログラムの結果に基づいて輸入者が作成します。GCCのひな型や各規制製品に関する情報はGeneral Certificate of Conformity外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照ください。
GCCは製品出荷時に付帯する必要があり、小売業者や流通業者に提供されます。GCCを規制当局に提出する必要はありませんが、要請があった場合にはCPSCと税関長に提出します。

III. 複合木材製品のホルムアルデヒド規制

家具や木工製品、床材、建材などに広く使用されている複合木材のうちある種のものは、生産過程で接着材料の成分としてホルムアルデヒドを使用していますが、ホルムアルデヒドは放散すると目や鼻・のどの炎症や呼吸器症状を起こすことがあり、また発がん性も指摘されております。

米国では、2010年7月「複合木材製品のホルムアルデヒド基準法“Formaldehyde Standard for Composite Wood Products Act”(有害物質規制法TSCAにタイトルVIとして追加された)が米国議会で採択され、アメリカ国内で販売・供給・製造または輸入される複合木材製品から放散されるホルムアルデヒドの上限値が設定されました。

規制対象品目とホルムアルデヒドの放散上限値は以下のとおりです。(連邦法40CFR770.10により規定されており2017年12月12日以降有効なもの)

  • ベニアコア硬質合板(Hardwood plywood) 0.05ppm
  • 複合コア合板 0.05ppm
  • 中密度ファイバーボード(medium density fiberboard: MDF)0.11ppm
  • 薄型の中密度ファイバーボード(thin medium density fiberboard)0.13ppm
  • パーティクルボード(particleboard) 0.09ppm

2016年12月12日、米国環境保護庁(Environment Protection Agency: EPA)は同法施行のための実施規則を発表しました。同種の規制で先行していたカリフォルニア州大気資源局(California Air Resource Board: CARB)と連携し、カリフォルニア州の「空気中毒性規制措置(Airborne Toxic Control Measure: ATCM) Phase II」と放散値基準の一貫性を確保することとしました。

実施規則では、2018年6月1日以降、米国で販売、供給、製造、または海外から輸入される複合木材製品は、CARB ATCM Phase IIあるいは、TSCA Title VI いずれかの規制の順守表示が義務付けられます。CARBとの並列期間が終了する2019年3月22日以降は、すべての対象製品に対しTSCA Title VIに準拠するラベル表示が義務化されます。

同時に、製品の基準適合を確認するため、第三者認証機関(Third-Party Certifier: TPC)における検査・認証を義務化しています。

関係機関

米農務省(United States Department of Agriculture: USDA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
米国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection: CBP)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission: CPSC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
環境保護庁(EPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
カリフォルニア州環境保護省(Cal/EPA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

米農務省(USDA)
2008年農業法(レイシー法については第8204項を参照)PDFファイル(2.78MB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

消費者製品安全委員会(CPSC)
消費者製品安全性改善法(CPSIA)PDFファイル(189KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

連邦政府印刷局
複合木材製品・合板材のホルムアルデヒド基準法PDFファイル(142KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

米国環境保護庁(Environment Protection Agency: EPA)
ホルムアルデヒド保護実施規則案(2016年12月12日Final Rule)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
40CFR770.10外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

米国農務省(USDA)
レイシー法関連情報「LACEY ACT」(PPQフォーム505のダウンロードおよび申告対象、改正レイシー法の施行に関連する連邦官報の一覧)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
Lacey Act Special Use DesignationsについてPDFファイル(68KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
Lacey Act Web Governance System (LAWGS)PDFファイル(85KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
LAWGS Frequently Asked QuestionsPDFファイル(41KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

米国国際貿易委員会(USITC)
米国関税率表(Harmonized Tariff Schedule of the United States:HTSUS)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

消費者製品安全委員会(CPSC)
CPSCによる子供向け製品の定義PDFファイル(2.6MB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規制製品に関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
製品ラベルに関するCPSCの方針書PDFファイル(30KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
CPSC認定の第三者機関リスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
子供向け製品について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

環境保護庁(EPA)
ホルムアルデヒドに関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

カリフォルニア州環境保護省(California Environmental Protection Agency)
Composite Wood Product ATMC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
第三認証機関外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
Comparison of Key Requirements of CARB and U.S. EPA Regulations to Reduce Formaldehyde Emissions from Composite Wood Products PDFファイル(84.8KB)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2014年12月
最終更新:2019年3月

記事番号: Y-120201

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