一時輸入制度:インド

質問

インドにおける展示会出品貨物・商品サンプル・職業用具の一時輸入制度について教えて下さい。ATAカルネの利用が可能か、またカルネを使用しない一時輸入制度について教えて下さい。

回答

インドで一時的に輸入した商品を再輸出する方法として、インド関税法による一時輸入制度の利用と、ATAカルの利用と2通りあります。ただし、商品サンプルはATAカルネの対象外です。なお、一時輸入通関した物品には再輸出期限が設けられていますので、留意が必要です。

I.ATAカルネに関する条約加盟状況

インドは物品の一時輸入のための通関手続きに関する条約(ATA条約)のうち、展覧会条約、職業用具条約に加盟していますので、展示会出品貨物と職業用具の一時輸入にはATAカルネを利用することができます。ただし、商品見本条約には加盟していないため、商品サンプルの一時輸入にはATAカルネを利用することができません。

II.展示会出品貨物の一時輸入手続き

インド国内で行われる展示会(および見本市)に出展する貨物については、国内での消費・販売を行わない限り、一時輸入として輸入時の関税が免除されます。主な一時輸入の方法としては、一時輸入制度とATAカルネを利用する2通りの方法があります。

  1. 輸入手続き
    1. 一時輸入制度による輸入手続き
      インドでの展示会に出展する場合、以下の必要書類を添えて税関に申告を行います。なお、通常の関税額およびその他諸税に相当する担保(保証証券もしくは金融機関による保証)の提供が求められます。一時輸入できる期間は税関が定めた期間(イベント終了日から最長で6カ月間)となります。延長が必要な場合にはその理由を添えて輸入地の税関に申請を行います。なお、免税を受けるためには、展示会がインド貿易省またはインド貿易促進会(Indian Trade Promotion Organisation)の認可(または出資)を受けていること、またはインドの公益に適っていると認められた展示会でなければなりません。
      一時輸入の申告の際に必要な書類は以下のとおりです。
      1. 輸入申告書
      2. インボイス ※英語により表記されたもの
      3. パッキングリスト
      4. B/L(船荷証券)、AWB(航空貨物運送状)
      5. 展示会主催者発行のレター
      6. 展示会出展貨物の写真、カタログ
    2. ATAカルネによる一時輸入手続き
      輸入者は、必要事項を記入したオリジナルのATAカルネフォームを輸入地の税関に提出します。ATAカルネを利用する場合は、税関への担保の提供は不要となります。一時輸入が許可される期間は6カ月です(税関の承認を得ればさらに6カ月延長可)。この期間を超えてもインドから輸出されない場合、免除されていた関税の支払い義務が課されます。なお、日本でのATAカルネの発給は、一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)が行っています。ATAカルネを利用して一時輸入する場合、事前に申請を行い、ATAカルネの発給を受ける必要があります。申請方法は、JCAAの「ATAカルネ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」をご参照ください。
  2. 輸出時の手続き
    1. 一時輸入制度による再輸出手続き
      輸入者は、輸出地を管轄する税関に輸出の申告を行い、税関より一時輸入された展示会出展貨物が確実にインド国外に輸出されることの確認を受けます。輸出の確認がされた後に税関より担保の解除(金融機関保証の解除など)が行われます。
    2. ATAカルネによる再輸出手続き
      輸入者は、再輸出される品目とATAカルネに記載されている品目に相違がないことを税関より確認を受けなければなりません。
  3. 展示会で輸入した展示品を販売する場合
    一時輸入制度を利用して輸入された貨物を販売する場合、事前に税関にその旨申告を行い、免除されていた関税を納める必要があります。なお、展示会または見本市で使用あるいは無償で配布・消費される物品で、以下に該当するものは再輸出の必要はなく、輸入関税およびその他諸税が免除されます。
    1. 展示会または見本市において消費される少量と認められる食品と飲料
    2. 税関が展示会の性質や規模を勘案し、合理的と認められる範囲で、デモンストレーションのためにのみ輸入される物品、あるいは機械や器具のデモンストレーションのためにのみ輸入される物品
    3. 展示会用に使用されるペンキ、ワックスのような少額物品
    4. 広告用に無償で配布される印刷物、カタログ、ポスターなど

III.職業用具の一時輸出入手続き

職業用貨物(カメラ、プロジェクター、タイプライター、その他の職業用具等)は一定の条件を満たす場合に免税で輸入することができます。主な一時輸入の方法としては、一時輸入制度による手続きとATAカルネを利用する2通りがあります。手続きは基本的に展示会出品貨物と同様ですが、ATAカルネで一時輸入した職業用具の再輸出期限は、カルネ一時輸入通関日から2カ月以内の期限が設けられています。設定された再輸出期限までに物品全量をカルネにて再輸出通関を行わないとインド税関から輸入税等を課税されますのでご注意ください。

IV.サンプル品の一時輸入

サンプル品の一時輸入にはATAカルネは利用できませんが、展示会出品貨物や職業用具と同様の一時輸入制度による免税制度があります。 免税扱いになるサンプル品は、無償提供されるもので、アイテム単体の価格が5,000ルピー以下(年間総額300,000ルピー以下)で、年間1アイテムにつき50個までと制限されています。また、エンジニアリング製品の試作品で明らかにサンプル品として分かるものについては、単体で5,000ルピーを越えていても10,000ルピー以下であれば関税を支払うことなく輸入ができます。ただし、税関の許可がない限り、9カ月以内に再輸出しなければなりません。なお、貿易管理制度上、輸入禁止品に指定されている品目は、サンプルであっても輸入することはできません。

関係機関

インド商工省商務局外国貿易部(Directorate General of Foreign Trade: DGFT)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
インド財務省間接税関税中央局(Central Board of Indirect Taxes and Customs: CBIC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

関係法令

関税法告示No.3/89-Cus外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
関税法告示No.157/90-Cus外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
関税法告示No.154/94-Cus外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(101KB)(英語)
関税法告示No.153/94-Cus(撮影用機器、フィルム等の専門用具の免税)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)
関税法告示No.146/94-Cus(スポーツ等で使用する用具の免税)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(英語)

参考資料・情報

CBIC
Customs Manual 2015外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(Chapter18 “Import of Samples”)
DGFT
Handbook of Procedures(2.63~2.66)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2.42MB)
一般社団法人日本商事仲裁協会(JCAA):ATAカルネ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

調査時点:2015年12月
最終更新:2018年7月

記事番号: N-110201

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