サイパンの会社設立手続き:米国

北マリアナ諸島(Commonwealth of the Northern Mariana Islands: CNMI)のサイパンに現地法人を設立する際の会社設立手続きについて教えてください。

I. 会社の法的形態の選択
サイパンで設立できる企業形態は以下のとおりです。

  1. 株式会社(C Corporation)
  2. 小規模株式会社(S Corporation):内国歳入税法のSub-chapter S の適用を受けるもの。
  3. 有限責任会社(Limited Liability Company: LLC)
  4. 有限責任事業組合(Limited Liability Partnership: LLP)
  5. リミテッド・パートナーシップ(Limited Partnership): 法人格のない合資会社にほぼ相当する。

II. 会社設立の手順
1. 会社名の確認
会社設立の手順として、まず会社名の確認をします。既存の会社名または予約済みの会社名と同一または類似のものは使えません。既存の会社名は法人登録官室で確認できます。会社名の予約は申請(10ドル)することで、120日間予約(延長不可)できます。

2. 設立申請
会社を設立するには、CNMI商務局法人登録官に対し、株式会社の場合は基本定款(Articles of Incorporation)および付属定款(by-laws)各3部を、LLCの場合は基本定款(Articles of Organization)3部を提出します。基本定款に記載すべき事項は決められていますが、書式は任意です。基本定款への署名は、株式会社の場合は発起人(incorporators)全員が行います。LLCの場合は、出資者(members)が自ら経営するときは出資者の1名が、出資者以外の者が経営するときは経営者の1名が署名します。
最低資本金額に制限はありません。設立者(出資者)の人数は、株式会社、有限責任会社(LLC)ともそれぞれ1名から可能です。設立申請が受理されると、株式会社の場合、設立証明書(Certificate of Incorporation)が交付されます。

3. 営業許可の申請
サイパンで事業を行うには、営業許可を得る必要があります。この許可申請は、所定の申請書を、財務局(Department of Finance)歳入・税務部(Division of Revenue and Taxation)に対して行います。許可の取得に要する期間は3日程度です、許可取得の費用は業種によって異なります。例えば卸売業では年50ドルです。

4. 外国投資家許可証(Foreign Investor Certificate)の申請
外国人がサイパンでビジネスを行うには、まず入国地(例えばサイパン空港)で短期業務入国許可証(short-term business entry permit)を取得します。この短期許可証の有効期間は30日ですので、長期にわたりサイパンでビジネスを行うには、短期許可証の失効日の10日前までに、商務局外国投資室(Foreign Investment Office)に対して次のいずれかの許可証の取得申請を行う必要があります。

  1. 中期業務許可証(regular-term business certificate)―12カ月間に90日まで滞在可能
  2. 長期業務許可証(long-term business certificate)―2年まで滞在可能
  3. 外国投資家許可証(foreign investor certificate)―永住可能

外国投資家許可証の申請には、投資家が一人の場合は25万ドル以上、投資家が複数いる場合は合計200万ドル以上かつ1人当たり15万ドル以上の投資が必要です。申請書のほか所定の書類(定款の写し、設立証明書等)を提出します。

5. サイパン税務上の届出
CNMI税務上の届出等については、文末のリンク先ウェブサイトから検索してください。事業から得た収入に対し、事業収入税(Business Gross Revenue Tax: BGRT)を支払います。税率は収入に応じて0〜5%です。2011年2月16日に発効した法律P.L.17-30により、BGRTの支払いサイクルは、年4回から毎月になりました。

III. 会社設立に要する期間
会社設立の法的手続きは、法人登録官宛ての設立書類の提出に始まり、当局による申請の受理で終わりますが、実際には営業許可や外国投資家許可証が必要となりますので、少なくとも3カ月程度はかかります。

IV. 会社設立に要する費用
会社設立申請費用は、株式会社、LLCともに100ドルです。これ以外に弁護士費用など設立にかかわる書類の作成費用等が別途必要です。サイパンでは、外国人投資許可証の取得申請を含め、会社設立手続きを弁護士に依頼することが一般的です。文末のリンク先ウェブサイトからサイパンの弁護士を検索することができます。

V. その他の手続き
1. 連邦雇用主証明番号(EIN)の取得申請
内国歳入庁(Internal Revenue Service: IRS)にフォームSS-4を提出します。この際、会社の責任者のソーシャル・セキュリティー・ナンバー(SSN: 米国の個人Tax ID ナンバー)が必要とされる点です。初めて米国に進出した場合、SSNを持っていないので、SSNに代わる個人納税者番号(Individual Tax Identification Number: ITIN)を取得する必要があります。取得するにはフォームW-7をIRSに提出します。フォームはIRSのサイトに掲載されており、オンラインもしくは郵送で申請します。

2. 米国商務省経済分析局(Bureau of Economic Analysis: BEA) 宛BE-605(初期投資に伴う報告義務)もしくはBE-605提出免除書類の提出
BEAに外国企業による米国での投資活動をフォームBE-605で報告する義務があります。資本金の金額が規定の金額に満たない場合は、提出免除の書類を提出します。

3. 優遇措置
CNMI政府は、北マリアナ開発局(Commonwealth Development Authority: CDA)を通じて、認定された投資家に対して投資優遇税制を適用しているほか、自由貿易区(free trade zones)を設定して一定の優遇措置を講じています。

関連法令
Division 4, Title 4, Commonwealth Code (CMC)
CNMI法律検索
(上記で検索できない法律は、以下のウェブサイトで販売されている法令集を購入する必要があります。)
購入ページ

参考資料・情報
CNMI商務局:
CNMI外国投資ガイド(日本語)
CNMI商務局新規申請センター(商務局関係書式検索)

会社登記チェックリスト

CNMI財務局:
CNMI営業許可およびCNMI税務上の届出等

CNMI弁護士会:
弁護士の検索

米国商務省経済分析局(BEA):
フォームBE-65

調査時点:2016/08

記事番号: H-100905

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