自動車部品の現地輸入規則および留意点:EU向け輸出

質問

EU向けに自動車部品を輸出する際の現地輸入規制および留意点について教えてください。

回答

EUでは自動車部品そのものの輸入に関して、一般的に「部品であること」を理由とした特別な輸入許可制度はありませんが、製品によっては環境基準や品質基準を遵守する必要があります。 EU域内で販売・使用される車両に装着されるシステム/部品/独立技術ユニット(STU)については、四輪車等はEU規則2018/858、二輪車等はEU規則168/2013の枠組みで、該当する環境・安全法規に基づく型式認証(EU型式認証/UNECE協定規則に基づく認可)や表示が求められる場合があります。特にEV/HV/PHV向けの高電圧系部品やソフトウェア制御部品は、近年の環境・安全要求(例:Euro 7、一般安全、eCall、EDR 等)の影響を受ける点に留意が必要です。

Ⅰ. 規制、型式認証制度

EUでは、四輪車(乗用車・商用車・トレーラー等)およびそれらに装着されるシステム/部品/独立技術ユニット(STU)の承認と市場監視の枠組みをEU規則2018/858で定めており、2020年9月1日から適用されています。EU規則2018/858の下では、(1) EU型式認証、(2) 生産適合性(Conformity of Production: CoP)、(3) 市場監視・是正措置などが制度化されています。また、証明書類であるCoC(Certificate of Conformity)の電子データ交換について、EUCARISを用いたセキュアな交換要件や、VINを用いたCoCの閲覧(read-only access)要件が、EU実施規則2024/1061で規定され、2025年7月5日から適用されています。

四輪車等:EU規則2018/858
自動二輪車・自動三輪車・クアドリサイクル:EU規則168/2013

EU域内国向けに自動車部品を供給する場合、当該部品が車両法規上「システム」「コンポーネント」または「独立技術ユニット(STU)」として位置づけられ、(a) 車両型式認証の一部として承認が必要、または (b) 部品/STU単体としての型式認証が必要となるケースがあります。これはEU域内の自動車メーカーにOEM供給する部品だけでなく、補修用(アフターマーケット)部品として供給する場合もEU域内で上市する限り原則同様です。なお、Euro 7 EU規則2024/1257では、排出ガス後処理等の交換用汚染防止装置(replacement pollution control systems)がSTUとして承認され得ることが明確化されており、排気系部品を扱う場合は特に留意が必要です。

Ⅱ.ラベル、表示規制

EU加盟国では、EU法令に基づく基準を満たすことを証明するEU型式認証制度が運用されており、システム/部品/STUによっては、承認番号や型式認証マーク(通称“eマーク”)、または、国連欧州経済委員会(UNECE)の「車両等の型式認定相互承認協定に基づく型式認証マーク(通称“Eマーク”)」が付与されます。 どちらの場合も、取得した型式認証を表す認証番号とマークを製品に貼付することが不可欠です。 日本は国連欧州経済委員会「車両等の型式認定相互承認協定」に加入しているため、Eマークによって採用済みとなっている協定規則による認可を受けた装置については、改めて認可手続きをすることは不要です。

最新の車両向け部品では、eCall車載システム(緊急通報)やイベントデータレコーダ(EDR)等の安全関連システムがSTU認証の対象となり得るため、対象部品に適用される個別法規・表示要件を確認してください。

そのほかに国別の認証の例では、ドイツでは、ドイツ連邦自動車庁(Kraftfahrt-Bundesamt)による認証を受ける車両、部品があり、同認証表示がなければ流通が許可されません(例:公道を走行する建設機械、サスペンション、タイヤチェーン他)。

フランスの制度でも、UTAC(自動車・バイク・自転車産業技術連盟: L'Union Technique del' Automobile du Motorcycle et du Cycle)による製品の認可を受ける必要があります。

Ⅲ. 環境規制、安全・品質基準

欧州委員会が2022年11月に提案した「Euro 7」は、EU規則2024/1257(Euro 7)として成立しました。Euro 7は、車両・エンジンおよびそれらに装着されるシステム/部品/STUについて、排出ガス(排気)だけでなく、ブレーキ粉じん・タイヤ摩耗等の非排気由来排出(non-exhaust emissions)を含む汚染物質排出に関する要件、ならびに(電動車の)駆動用バッテリーの耐久性(battery durability)要件を定めています。これらの耐久性要件は、燃料・エネルギー源の種類にかかわらず適用され、部品/STUにも適用され得る点が特徴です。適用開始日は車両区分により異なり、例えば乗用車・小型商用車(M1/N1)は新型式が2026年11月29日、既存型式が2027年11月29日から、また大型車(M2/M3/N2/N3)は新型式が2028年5月29日、既存型式が2030年5月29日から適用されます。

なお、Euro 7 規則2024/1257の適用に向けて、2025年に排出ガス・蒸発排出の型式認証(M1/N1等)に関する試験方法・要件等を定めるEU実施規則2025/1706、ならびに車載燃料/エネルギー消費監視(OBFCM)・車載監視(OBM)システム、ドライバー警告/誘導、環境車両パスポート(EVP)等に関するEU実施規則2025/1707が公布されています。これらの実施規則により、型式認証書や適合証明書(CoC)の記載項目(例:排出基準レベル/エミッションキャラクター、型式認証証明書番号、OBMファミリー識別子等)が追加・変更され、EU実施規則2020/683(型式認証の情報文書・証明書様式)も改正されています(CoC様式改正は2026年11月29日から適用)。また、EU実施規則2025/1707については官報で誤記修正(Corrigendum)が公表されています。

また、安全分野では、EU一般安全規則2019/2144の適用に関連して、(1) 車両識別番号(VIN)の表示・トレーサビリティ、(2) トレーラーの第二後部ナンバープレート取付スペースの経過措置、(3) 牽引(towing)に関する要件、(4) ゼロエミッション車のエネルギー貯蔵システム質量の記録(CoCの備考欄記載等)などを更新するEU実施規則2024/883が公布されています。さらに、インテリジェント・スピード・アシスト(ISA)、ドライバー眠気・注意喚起(DDAW)、EDR、アルコール・インターロック装置取付容易化、先進ドライバー注意散漫警報(ADDW)等の承認書式(情報文書・認証書テンプレート)を定めるEU実施規則2024/1721が公布されています。

加えて、大型車(M2/M3/N2/N3)のEDRについては、試験手順・技術要件およびプライバシー/セキュリティ要件等を定めるEU委任規則2024/2220が公布され、2026年1月7日から適用されます。eCallについても、回線交換網(2G/3G)停波を踏まえ、パケット交換網(4G/5G)に対応する標準への移行等を規定するEU委任規則2024/1180が公布されました。2025年1月1日以降は、メーカーの要求がある場合に当該標準に適合するeCallに係る型式認証を拒否しないこと、2026年1月1日以降は適合しない場合に新規型式認証を拒否すること、2027年1月1日以降は適合しないeCall搭載の新車についてCoCが無効とみなされ登録等ができないことが規定されています。

なお、eCallについては、EU委任規則2025/1871により参照規格が更新され(EN 16072:2025、EN 17184:2024、EN 17240:2024)、さらに委任規則(EU)2017/79の技術要件・試験手順(バックアップ電源、定期技術検査(Directive 2014/45/EU)に関する準備状況等)も改正されています。
EN 17184/EN 17240の適用開始時期(2027年1月1日)や、CoC無効化等の経過措置(2028年1月1日)など、2024年のEU委任規則2024/1180からスケジュールが更新されているため、eCall関連部品(IVS、通信モジュール、アンテナ、バックアップ電源等)を供給する場合は、対象車種の適用開始日と経過措置を踏まえて適用規格・試験条件を確認する必要があります。

また、EU委任規則2025/1122により、EU一般安全規則2019/2144のUNECE規則参照が更新され(UN規則No.25、34、79、100、117、127、152の改正、および新UN規則No.167、169、171の追加等)、関連するシステム/部品(燃料タンク・燃料系部品、操舵、電動車両安全、タイヤ、歩行者保護、ADAS等)の適合要件が更新されています。

大型車のCO2排出量・燃料消費量の算定/宣言については、EU規則2017/2400に基づく枠組みがあり、EU規則2025/258により、水素車および新技術(効率的ホイールエンド、複数ドライブトレイン、走行中充電等)への対応や、CO2影響部品の認証手続き等が改正されています。大型車向け部品を供給する場合は、OEMがCO2算定に用いる認証データとの整合性を確保することが重要です。

また、一定の大型車では、燃料・エネルギー消費量および走行距離を監視する車載装置(OBFCM)や、積載量・車両総重量の算定(OBM/OBMM)に関するEU実施規則2025/2161が制定され、車載装置の要件、記録すべきデータ、メーカー宣言等が定められています(適用日は試験手順や推進システムの違いにより異なる)。OBFCM/OBM関連のセンサー、ECU、テレマティクス等を供給する場合は、データ要件や車両適用範囲を確認する必要があります。

また、2000年10月に施行された自動車産業の環境負荷軽減を目的とした「ELV指令」(Directive 2000/53/EC of The European Parliament and of The Council of 18 September 2000 on end-of life vehicles)は、自動車部品への鉛、水銀、カドミウム、六価クロム等の有害物質の含有を禁止しており、同時に使用済み自動車の廃棄についても、費用負担を製造者が負う仕組みを構築し、廃棄時に所有者への費用負担が発生しないことにより、車両の廃棄が促進するような仕組みになっています。なお欧州委員会は2023年7月に現行のELV指令と「自動車型式認証における再使用、再利用、再生の可能性(3R)に関する指令」を1つにまとめた「ELV規則案」を発表しました。今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される予定です。

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調査時点:2016年8月
更新時点:2026年2月

記事番号: A-031210

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