信用状条件との不一致がある船積書類の銀行買取の可否:日本

質問 L/Cベースの輸出取引において、L/C条件を充足できない事態が発生しました。輸入者にL/Cのアメンドを要求したところ、L/Cのアメンドはしないが、当該L/C条件未充足については受理し、決済すると言ってくれました。この場合、L/Cを銀行に買い取ってもらうためにはどのような方策がありますか?また、銀行が買い取らない場合はどうしたらよいのでしょうか?

回答

信用状条件の未充足(または不一致)のことを「ディスクレパンシー、ディスクレ、discrepancy」といいます。ディスクレ付きの場合、信用状発行銀行の支払い確約は無効となります。L/Cに基づく発行銀行、指定銀行、銀行の支払い義務は、あくまでも「呈示が充足している(complying presentation)」場合の銀行の義務です(UCP600第15条)。

したがって銀行では原則として買い取りに応じないのですが、実務的にはディスクレの内容および買取依頼人の信用度に応じて次の3つの取り扱い方法があります。

I. ケーブルネゴ扱い(Cable Negotiation または Cable Inquiry)

ディスクレの内容を列挙し、SWIFT等のテレコミュニケーション(電信)により買取依頼先の銀行を通じて信用状発行銀行に買取の可否を照会(Inquiry)します。信用状発行銀行の応諾回答に基づき銀行買取が行われますが、この方法は照会の案件のみに有効ですので、同じL/Cで引き続き船積みをする場合には、L/Cアメンドメントを入手した方がよいでしょう。なお、書類到着後、新たなディスクレが発見されますと支払いを受けられなかったり支払いが遅延したりする場合がありますので、注意が必要です。なお、信用状発行銀行は発行依頼人にディスクレ受け入れの可否を問い合わせることは認められています。

II. L/Gネゴ扱い(L/G Negotiation)

買取銀行に対して輸出者の損害賠償念書(一般的にはLetter of Guarantee: L/G、またはLetter of Indemnity: L/Iといいます)を差し入れし、買い取りをしてもらう方法です。この方法は主としてディスクレ内容が軽微な場合に用いられます、また、買取銀行がこの方法を受け入れるか否かは、万一不払いとなった場合に買取依頼人が買い取り金額全額のリファンドに応じる能力の有無という依頼人信用を考慮されます。なお、L/G扱いは、買取銀行と依頼人の輸出者との間の「特約」としての効果がありますが、信用状発行銀行には支払いの義務はありません。すなわち、信用状発行銀行が書類を点検後、ディスクレを理由に支払いを拒絶することは認められています。

III. アプルーバル扱い(Approval扱い、取り立て扱い)

ディスクレ付き書類の支払い呈示に対しては、L/C発行銀行の支払い確約は無効となりますので、輸出地の銀行は買い取りをせず信用状発行銀行がディスクレを承認後に支払う条件(on approval扱い)として船積書類を信用状発行銀行宛に送付する方法があります。これは、いわゆる「取り立て扱い」の手形代金回収となります。なお、この方法が準拠する国際ルールは、「取立統一規則(Union Rules for Collections: URC522)」となります。

調査時点:2011年9月
最終更新:2017年9月

記事番号: A-010714

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