米国からロイヤルティーを受け取る場合の源泉税課税

質問

米国企業に対し当社の所有する特許権の使用を許諾します。米国企業からのロイヤルティー(使用料)受け取り時の源泉税の取り扱いについて教えてください。

回答

米国の国内法では、ロイヤルティー支払者に源泉徴収と支払国での納付義務が課されています。一方で、2003年11月に改定された「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(以下、「日米新租税条約」という)では、以下のII.の手続きをとることにより、源泉税は免除されます。

Ⅰ.日米新租税条約の概要

日米両国政府は、2003年11月に租税条約を改定しました(日本では源泉所得税については2004年7月1日から適用)。日米新租税条約には、投資所得(使用料、配当、利子)の源泉地国での課税を軽減、特に著作権、特許権、商標権および意匠、その他の使用料を原則免税とすることが盛り込まれています。「租税条約」とは、「国際間での二重課税の回避、脱税の防止および課税関係の明確化などを目的として締結される二国間条約」です。通常、ロイヤルティー支払者には、源泉徴収と支払国での納付義務が課されていますが、日米新租税条約では第12条において、「一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。」と規定されており、使用料の源泉地国では課税されない(源泉徴収されない)ことになりました。

Ⅱ. ロイヤルティー受益者が源泉税の免除を受けるための手続き

  1. 個人用「Form W-8BEN / 法人用 Form W-8BEN-E」の提出

    ロイヤルティー受益者(日本法人)は、租税条約の適用を受ける資格を有する旨の証明書類 Form W-8BEN(Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding Individuals)/ Form W-8BEN-E(Certificate of Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding Entities)をロイヤルティー支払者(米国側)に提出します。Form W-8BEN / Form W-8BEN-Eはロイヤルティー支払い前に提出する必要があります。Form W-8 BENは、個人、法人ともに一種類でしたが、FATCA法(Foreign Account Tax Compliance Act: 外国口座税務コンプライアンス法)施行により、法人向けW-8BENはW-8BEN-Eへ様式が変更になりました。2015年1月提出分から Form W-8BENは受益者が個人である場合、Form W-8BEN-Eは受益者が法人である場合に使用されることになりました。Form W-8BEN-Eは全8ページに及び、1ページ目Part Iの第5項にて、第4項の法人タイプから正しい法人タイプを選択し、選択した法人タイプに応じて2ページ目以降の該当項目を記入することになります。詳細は参考資料・情報にあるウェブサイトを参照してください。

  2. 米国納税者番号の記載
    1. 法人の場合:Employer Identification Number(EIN)
      法人でEINを持っていない場合、EIN取得申請書Form SS-4(Application for Employer Identification Number)を米国内国歳入庁(IRS)へ提出し、EINを取得します。日本から郵送でEIN取得申請をする場合、通常2〜3週間要します。電話やFAXでIRSと直接連絡を取り、即日EINを取得する方法もあります。
    2. 個人の場合:Social Security Number(SSN)
      個人でSSNを持っていない場合は、Individual Taxpayer Identification Number(ITIN)を記載します。ITINを取得するには、米国領事館または公証人役場でパスポートのコピーなどに公証を受け、Form W-7(Application for IRS Individual Taxpayer Identification Number)をIRSに提出します。
      上記手続きはロイヤルティー受益者が行います。ただし、米国内に事務所がない場合など、米国のロイヤルティー支払者に代行を依頼することもできます。
  3. Form W-8BEN / Form W-8BEN-Eの保管

    Form W-8BEN / Form W-8BEN-Eはロイヤルティー支払者が保管します。Form W-8BEN / Form W-8BEN-Eがないと、ロイヤルティー支払者に源泉徴収義務が発生し、ロイヤルティーを支払う際に源泉税を控除する必要があります。免税手続きは同一のロイヤルティー支払者に対して最初に一度行い、ロイヤルティーの支払いごとに行う必要はありません。ロイヤルティー支払者はIRSにW-8BEN / W-8BEN-Eの提示を求められた場合、速やかに提示しなければなりません。

Ⅲ. 配当および利子に対する免税規定

日米新租税条約は、特許権使用料以外にその他の投資所得、すなわち配当および利子についても源泉地国での大幅な免税を規定しています。

  1. 配当

    日米新租税条約では、配当に対する源泉税率を3段階で適用しています。

    • 一般配当: 10%
    • 親子会社間配当: 5%(持株比率10%以上)
    • 親子会社間配当のうち、配当確定日より遡って6カ月間配当支払法人の議決権のある株式の50%以上を保有している場合: 0%(免税)
  2. 利子

    利子に対する源泉税率は0%(免税)です。

なお、日米租税条約は、第三国居住者によるトリーティ・ショッピング(条約漁り)を防止するため、真の適格者のみが租税条約上の特典を受けられる制限(特典の制限条項)が適用されています。

関係法令

財務省:
日米租税条約(新条約)の発効について外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

参考資料・情報

米国内国歳入庁(IRS):
Form W-8BENPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(68KB)
Instructions for Form W-8BENPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(178KB)
Form W-8BEN-EPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(293KB)
Instructions for Form W-8BEN-EPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(241KB)
Form SS-4PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(174KB)
Instructions for Form SS-4PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(188KB)
Publication515: Withholding of tax on Nonresident Aliens and Foreign EntitiesPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.97MB)

調査時点:2016年10月
最終更新:2025年10月

記事番号: A-001117

ご質問・お問い合わせ

記載内容に関するお問い合わせ

貿易投資相談Q&Aの記載内容に関するお問い合わせは、オンラインまたはお電話でご相談を受け付けています。こちらのページをご覧ください。