農林水産物・食品マーケティング基礎情報(カタール)

最終更新年月:2026年7月

人口・経済発展状況等

カタールの人口、GDP、為替レート、在留邦人数等の基本情報については、外務省基礎データ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照してください。

日本の直接投資額 45億円:財務省「対外・対内直接投資フロー」2025年
進出日系企業数 36社:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」(2025年10月1日現在)
訪日外客数 3,940人:日本政府観光局(JNTO)「日本の観光統計データ」2025年暫定値、訪日外客数の推移
日本食レストラン数 40店:農林水産省「海外における日本食レストランの国・地域別概数」(2025年11月28日)

日本からの農林水産物輸出状況

輸出額順位 51位
輸出総額 5.7億円
農産物 3.9億円(67.6%)
林産物 0.2億円(4.6%)
水産物 1.6億円(27.8%)
輸出額の多い品目 清涼飲料水、ソース混合調味料、牛肉、キャビア及びその代用物、かつお・まぐろ類(生鮮・冷蔵・冷凍)

(出所)農林水産省「2023年農林水産物・二国間貿易実績」

市場特性等

味覚・嗜好上の特徴
  • カタールの伝統料理に使われる主な食材は、ナツメヤシ、米、ハラール肉(ラム肉、鶏肉、ヤギ肉)、魚介類、フラットブレッド(クブス)などである。米はサフランやターメリックで風味付けされることが多い。スパイスで香り付けした肉料理「マチブース」が国民食とされている。エジプト・レバノンなどのアラブ系移民コミュニティの存在を背景に、ファラフェルやシャワルマ(ピタパンと肉を用いた料理)などのレバント系料理も広く普及している。
  • 一方、カタールの人口は90%近くを外国人が占め、特に南アジア系(インド、バングラデシュ、ネパールなど)が最大のグループを構成していることから、消費市場全体ではビリヤニやカレーなど南アジア系スパイス料理への需要が大きい。
  • カタールの伝統菓子(バラリート、ハビース、マハラビヤなど)は、サフラン、カルダモン、ローズウォーターで香り付けされ、甘さが比較的控えめなものが多い。一方、市場で広く流通している菓子としては、レバント地域およびトルコ系移民の影響を受けバクラヴァやルゲマートなど、シロップや蜂蜜を多用した甘味の強い菓子も普及している。
制度的制約
  • カタールでは、食品の安全管理および輸入規制は主に保健省(Ministry of Public Health:MOPH)が所管し、港湾・国境では食品検査・管理部門(Ports Health & Food Control Section)が検査を実施している。法的根拠は「人用食品管理法(Law No. 8 of 1990)」およびGSO(Gulf Standardization Organization:湾岸標準化機構)が定めている食品規格が共通基準として用いられている。
  • 食品を輸入・販売するには、輸入業者登録(企業登録)と個別製品登録が必須。登録は保健省(MOPH)の電子システム「WATHEQ」を通じて行われ、未登録製品は通関不可。
  • 表示ラベルは、アラビア語必須であり、英語併記も認められている。表示内容として、原材料、栄養成分、製造者、原産国、製造日・賞味期限、保存条件などを明記。製造日および賞味期限は、元のラベルまたは容器に印刷する必要があり、後貼りは認められていない。
  • 輸入時に必要な書類として、税関申告書や船荷証券、輸入許可証の他、インボイス、梱包明細書、原産地証明書(COO)、衛生証明書、ハラールと畜証明書(牛肉や家禽製品などの肉類)などが挙げられる。 インボイスおよびCOOには、商品のHSコードを記載することが義務づけられている。書類に不備がある場合、通関手続きが行われず、発送元へ返送される可能性がある。
  • 【ハラールに関する対応】食肉および動物由来原料を含む食品は、保健省(MOPH)が承認した機関によるハラール認証が義務付けられている。食品サプライチェーンの全段階においてシャリーアのハラール要件を満たすことが前提。非ハラール食品との混入や交差汚染を防止するための管理が必要である。
  • 【牛肉・水産品・加工品の輸出は、それぞれ個別の取扱要綱に基づく手続きが必要。取扱要綱は農林水産省HPの所定箇所(>輸出・国際>証明書や施設認定の申請>中東)より確認することが可能。】
  • 牛肉:カタール向け輸出牛肉の畜場・食肉処理施設は、UAE政府認定のハラールと畜証明発行機関による認証を前提に、施設を管轄する都道府県知事などの施設認定を受ける必要があり、厚生労働省を通じてカタール政府に施設情報が通知される。輸出の都度、地方の食肉衛生検査所などが英語の食肉衛生証明書を発行する。
  • 水産食品:施設の個別事前認定・カタール政府への通知は不要(食品衛生法上の一般的な営業許可があればよい)。輸出の都度、輸出者自身による官能検査の実施・記録が必須で、地方農政局などがこれを確認したうえで衛生証明書を発行する。ハラール認証の要件はない。
  • 加工食品:衛生証明書は指定様式による発行が必要。2025年7月より、農林水産省が新しい様式を公開し、従来商工会議所が発行していた証明書は農林水産省が発行窓口となった。対象となる「加工食品」は、缶詰・調理・冷凍・乾燥・製粉等の加工が施された食品で、肉・肉製品、魚介類・水産加工品、乳・乳製品、卵・卵製品、蜂蜜・蜂製品を除くもの。
  • 青果(生鮮果物・野菜):原産国政府発行の植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)の提出が必要。 残留農薬検査や重金属検査の強化特定国・品目(葉物、ハーブなど)は、第三者機関による検査証明書の提出を求められる場合がある。
  • 飲料(清涼飲料・ジュース・機能性飲料):ゼラチンや動物由来を含む飲料はハラール認証が必要。機能性や健康を表示する場合(例:疲労回復、美容効果など)、医療・健康効果の誇張として規制対象となったり科学的根拠を示す資料の提出を求められる場合があるため留意が必要である。大麦飲料(ノンアルコールビール)の最大アルコール含有量は0.05%。従来の一律50%を課した炭酸飲料税(Carbonated drinks)に代わり、2026年より100ml当たりの砂糖含有量に応じた従量課税制をとる加糖飲料物品税(Sweetened Drinks Excise Tax)が導入されている。エナジードリンクに分類される飲料は、従来通り、100%の物品税が課せられる。
  • 菓子(スナック・キャンディ・チョコレートなど): 原材料については、動物由来成分(ゼラチン、コラーゲン、ショートニング、乳化剤など。牛由来の場合はハラール認証が必要)やアルコール使用(ラム酒、ブランデー、日本酒、リキュール等)、規制対象の食品添加物の有無(GSO2500)を事前に確認することが非常に重要。規格に適合しない製品は、通関保留、再輸出または廃棄の対象となる。
  • カタールで発行されるL/Cには、通常、積み替え条項が盛り込まれている。信用状取引では「コスト・アンド・フレイト(C&F)」条件で行うのが慣例であり、C.I.F.条件はあまり用いられない。
  • カタールの輸入業者は、信用状の対象となる貨物の輸送中の損害を補償するため、現地および国際的な保険会社による保険に加入する傾向がある。
  • 海外の企業がカタールに輸出する際は、(1)現地ディストリビューターへの販売(2)代理店契約(独占)という形が主流である。
  • アルコール、豚肉および豚由来成分を含む製品は原則として輸入が認められていない。例外的に流通が認められる場合でも、政府が認可した限定的なルートに限られ、カタール国内の流通事業者である必要がある。
Eコマースの概要
  • カタールのEコマース市場は、約50億米ドル(約8,000億円)規模(2026年推計)とされており、2031年までに年平均成長率(CAGR)9.34%を記録する見込み。成長要因としては、高級志向の消費者行動、シームレスな5G整備、国家の多角化政策(Qatar National Vision 2030)、即時配送サービス(クイックコマース)の普及などがある。市場を主に牽引するのは、AliExpress, Carrefour Qatar, Amazon, Lulu Hypermarket, Al Anees Electronicsなどが挙げられる。
  • 取引形態別で見ると、BtoC取引が2025年時点で77%を占めるが、デジタル化の国家政策の影響で、電子カタログや電子請求書がの普及に伴い、BtoB取引のシェアが拡大する可能性がある。
  • フードデリバリー市場は拡大が続いている。2025年の売上高は約16億米ドル(約2,500億円)規模に達すると見込まれている。利用率は、2025年時点で国内全人口の約55%に達しており、今後4年間で利用者数は約180万人に達すると見込まれている。2025年のユーザー1人あたりの平均収益(ARPU)は約1,058ドルとなる見込み。
  • フード(調理済・食料品)だけでなく、日用品・医薬品も一体で配送する「フードデリバリー・アグリゲーター」市場が拡大しており、Eコマースは日常生活を支えるインフラの一つとなっている。主なプレーヤーは、Talabat、Snoonu、Keeta、Rafeeqなど。
外食・小売等の状況
  • カタールでは、国内の食料生産が限定的であるため食品の多くを輸入に依存している。小売市場は、CarrefourやLuLuなどの大型スーパーが主要な販売チャネルとなっている。高所得層を中心にプレミアム食品や多国籍食材の需要が強い。
  • オンラインデリバリーサービスを提供するTalabat MartやSnoonuなどが食料品・日用品を対象としたクイックコマースを展開し、利便性重視の競争が進んでいる。
  • カタールの外食市場は、約20億米ドル(約3,200億円)規模(2025年推計)とされており、2031年までに年平均8.97%を記録すると予測されている。背景には、2022年FIFA World Cup後に転用されたインフラ、安定した国外からの訪問者数、デジタル化の迅速な普及など等が挙げられる。市場を主に牽引するのは、Alshaya Group(Starbucks, Chipotle Mexican Grillなどを展開)や Americana Restaurants(KFC, Hardee's, Carpoなどを展開) ほか、Al Mana Group(McDonald’sなどを展開), Almuftah Group(Sterlingなどを展開)などが挙げられる。
  • 外食市場の総収益の45.68%は、フルサービスレストラン(店内飲食)が占めており、外食市場の中心となっている。近年、国際料理や高級ダイニングへの需要が高まっている。
  • 一方、フードデリバリー分野ではクラウドキッチンの活用が拡大しており、2031年まで年平均成長率17.10%で成長すると予測されている。
日本食普及状況等
  • ドーハを中心に、日本食レストランは約40店舗確認されており、ラーメンなどのカジュアル業態から高級すし・ファインダイニング(Nobu、Zumaなど)まで多様な業態が展開されている。
  • 多国籍な人口構成(駐在員・富裕層)を背景にすしを中心に日本食への関心は高く、カジュアルから高級店まで幅広い需要がみられる。
  • 「Wagyu」や「Matcha」といった名称も一定程度認知されており、高級レストランでは和牛や高品質食材を使ったメニューが提供されている。抹茶スイーツや和風デザートも提供されており、「高級・ヘルシー・和テイスト」といった要素への関心も高所得層を中心にみられる。
お問い合わせ先
ジェトロ農林水産食品部 市場開拓課
Tel:03-3582-5186
E-mail:afa-research@jetro.go.jp