フィリピンの貿易投資年報

要旨・ポイント

  • 2024年の実質GDP成長率は5.7%、中央銀行は3年9カ月ぶりの利下げを実施
  • 輸出入は微増も貿易赤字は拡大、主要輸出品目の電気機器・同部品は前年比2桁減
  • 対内投資は減少も、税制優遇制度の改正で今後の増加に期待
  • 対日貿易は輸出入ともに鈍化、日系企業進出は製造業・小売りで顕著

公開日:2025年8月28日

マクロ経済 
2024年のGDP成長率は5.7%、政府目標未達も堅調な伸び

フィリピンの2024年の実質GDP成長率は5.7%だった。前年の5.5%をわずかに上回ったものの、政府目標の6.0~6.5%には届かなかった。ASEAN主要6カ国では、ベトナム(7.1%)に次いで高い成長率となった。

需要項目別では、実質GDP の約75%を占める民間最終消費支出が、前年の5.5%増から4.9%増に減速したものの継続した伸びを見せた。成長要因として、2024年後半の消費者物価(CPI)上昇率の鈍化に加え、それに伴う政策金利の引き下げや賃金引き上げなどが挙げられる。最低賃金については、マニラ首都圏で日額610ペソから645ペソへ引き上げられたほか、工業団地の多いカラバルソン地域、西・中・東部ビサヤなどの14地域で給与改定が行われた。一方、台風や洪水の頻発で主食のコメ価格が高騰したため、例年、年末年始の休暇シーズンに向けて経済活動が活発化する第4四半期の消費は伸び悩んだ。政府最終消費支出は7.3%増で、前年の0.3%増から大きく伸びた。大規模なインフラ投資、台風などの自然災害への復興支援、公務員の基本給や手当の増額、コメ農家への財政支援が支出を押し上げた。フィリピン予算管理省は、2024年の政府によるインフラ支出額は前年比10.1%増の1兆3,268億ペソだったと発表した。また、財・サービスの輸出は3.3%増と前年の1.3%増から加速した。うち、財の輸出は0.7%減で、前年(7.5%減)と同様にマイナス成長だったが、サービス輸出は7.9%増で前年(13.9%増)から伸びは鈍化したものの堅調に推移した。財・サービス輸入も、4.2%増と前年の1.0%増を上回った。

産業別では、農林水産業が前年比1.5%減(前年1.2%増)だった。度重なる大型台風や洪水など自然災害の影響が大きく、畜産業や漁業などが打撃を受けた。一方、鉱工業などは5.6%(3.6%増)と伸びが加速した。うち、製造業は3.7%増(1.4%増)、電気・ガス・水・廃棄物管理は7.3%増(5.8%増)、建設業は10.2%増(8.8%増)だった。また、実質GDP の6割強を占めるサービス業は、6.7%増(7.1%増)と前年の伸びは下回ったものの、堅調な成長を維持した。そのうち、運輸・倉庫は8.9%増(13.0%増)、宿泊・飲食は10.4%増(23.0%増)、金融・保険業は8.9%増(8.7%増)だった。主力産業のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を含む情報通信業は4.5%増(4.1%増)だった。業界団体であるフィリピンITビジネスプロセス協会(IBPAP)によれば、IT-BPM産業の売上高は前年の355億ドルから7.0%増加し、380億ドルに達した。

CPI上昇率は、通年で3.2%と前年の6.0%を下回り、フィリピン中央銀行(BSP)の目標の範囲(2.0~4.0%)に収まった。これを受けて、BSPは2024年8月、2020年11月以来3年9カ月ぶりとなる0.25%の利下げを発表した。10月と12月にも続けて0.25%ずつ利下げを行い、同年末の利率は年率5.75%となった。

表1 フィリピンの需要項目別実質GDP成長率(単位:%)(△はマイナス値)
項目 2022年 2023年 2024年
年間 Q1 Q2 Q3 Q4
実質GDP成長率 7.6 5.5 5.7 5.9 6.5 5.2 5.3
階層レベル2の項目民間最終消費支出 8.3 5.5 4.9 4.7 4.8 5.2 4.7
階層レベル2の項目政府最終消費支出 5.1 0.3 7.3 2.6 11.9 5.0 9.0
階層レベル2の項目国内総固定資本形成 9.8 8.2 6.3 2.3 9.6 7.7 5.0
階層レベル2の項目財・サービスの輸出 11.0 1.3 3.3 8.1 3.9 △ 1.3 3.2
階層レベル2の項目財・サービスの輸入 14.0 1.0 4.2 2.2 5.3 6.5 2.7

〔注〕四半期の伸び率は前年同期比。
〔出所〕フィリピン統計庁(PSA)

貿易 
輸出入ともに微増、貿易赤字は拡大

2024年の対外貿易総額(通関ベース)は2,003億6,600万ドルで、前年の1,990億2,900万ドルから0.7%増加した。輸出額は前年比0.1%増の729億8,400万ドル、輸入額は1.0%増の1,273億8,200万ドルだった。貿易赤字は543億9,800万ドルで、前年より2.3%拡大した。

輸出を国・地域別にみると、1位は米国で全体の16.5%を占め、前年比5.8%増の120億6,800万ドルだった。前年に続き最大の輸出相手国となった。2位は日本で1.6%減の102億5,400万ドル、3位は中国で11.5%減の94億2,300万ドルだった。日本は前年を下回ったものの、中国の減少幅が大きく、輸出先として前年の3位から2024年は2位となった。

米国向けは、電気機器・同部品が前年比11.1%減の51億9,200万ドルで、うち集積回路が30.4%減(15億6,100万ドル)、スマートフォンなど電話機が27.5%減(5億8,800万ドル)、半導体デバイスが29.7%減(7,700万ドル)となった。一方、一般機械は44.5%増(14億5,000万ドル)、食用油は65.6%増(5億5,600万ドル)と大幅に増加した。再輸出品目(HSコード98類)のうち、軍用装備品が68.0%増の15億4,200万ドルと大きく伸びた。中国向けは、最大の輸出品目である電気機器・同部品が10.6%減の32億5,200万ドルだった。一方、鉱石、スラグおよび灰は29.7%増の18億7,400万ドルと増加した。ASEAN向けは1.9%減(109億8,800万ドル)で、特にシンガポール向けは電気機器・同部品の減少が響き16.6%減だったが、インドネシア向けは40.5%増の10億5,100万ドルで、鉱石、スラグおよび灰が43.7倍と大きく伸びた。欧州向けは1.3%減の94億3,000万ドルで、特にEU27向けの電気機器・同部品(34億9,900万ドル)が23.1%減だったことなどが影響した。

輸入を国・地域別でみると、中国が全体の25.8%を占め1位で、前年比11.7%増の328億1,900万ドルだった。2位はインドネシアで8.4%減の105億4,200万ドル、3位は日本で1.9%減の100億6,900万ドルだった。

中国からの輸入では、電気機器・同部品が前年比23.1%増の59億1,500万ドル、一般機械が9.8%増の34億8,500万ドルだった。一般機械のうち、自動データ処理機が37.3%増の6億4,750万ドルだったほか、エアコン(50.1%増、3億1,500万ドル)や冷蔵庫(14.2%増、2億6,900万ドル)などの家電の輸入が増えた。一方、インドネシアは、主要品目の自動車が11.0%減の29億6,500万ドル、鉱物性燃料・鉱物油が20.7%減の29億6,400万ドルと、ともに減少した。また、韓国は、鉱物性燃料・鉱物油が最大で19.3%増の36億5,500万ドルに達した。米国は、電気機器・同部品が1.2%増の17億5,100万ドル、穀物が10.1%増の8億1,500万ドルだった。穀物は台風などの影響による国内の不作を受け、コメの関税を下げて輸入強化を図った。そのため、ベトナムから40.9%増の18億3,600万ドル、タイからは2.0倍の3億2,300万ドルと、他国からの輸入が増加した。

表2 フィリピンの主要国・地域別輸出入[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出(FOB) 輸入(CIF)
2023年 2024年 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率 金額 金額 構成比 伸び率
アジア大洋州 48,878 48,222 66.1 △ 1.3 98,352 99,916 78.4 1.6
階層レベル2の項目中国 10,648 9,423 12.9 △ 11.5 29,384 32,819 25.8 11.7
階層レベル2の項目日本 10,425 10,254 14.0 △ 1.6 10,261 10,069 7.9 △ 1.9
階層レベル2の項目韓国 3,479 3,564 4.9 2.4 8,477 9,630 7.6 13.6
階層レベル2の項目台湾 2,629 2,676 3.7 1.8 4,686 3,973 3.1 △ 15.2
階層レベル2の項目ASEAN 11,198 10,988 15.1 △ 1.9 37,633 35,903 28.2 △ 4.6
階層レベル3の項目シンガポール 3,521 2,935 4.0 △ 16.6 7,095 5,756 4.5 △ 18.9
階層レベル3の項目タイ 2,930 2,954 4.0 0.8 7,879 7,521 5.9 △ 4.5
階層レベル3の項目マレーシア 2,176 2,214 3.0 1.8 5,922 5,955 4.7 0.6
階層レベル3の項目ベトナム 1,690 1,655 2.3 △ 2.1 4,709 5,468 4.3 16.1
階層レベル3の項目インドネシア 748 1,051 1.4 40.5 11,514 10,542 8.3 △ 8.4
階層レベル2の項目インド 1,103 1,094 1.5 △ 0.8 1,979 2,232 1.8 12.8
階層レベル2の項目オーストラリア 556 542 0.7 △ 2.6 3,494 2,741 2.2 △ 21.5
欧州 9,551 9,430 12.9 △ 1.3 9,518 8,872 7.0 △ 6.8
階層レベル2の項目EU27 8,328 8,039 11.0 △ 3.5 7,790 7,459 5.9 △ 4.3
階層レベル3の項目オランダ 3,085 2,867 3.9 △ 7.1 2,164 2,159 1.7 △ 0.2
階層レベル3の項目ドイツ 2,479 2,456 3.4 △ 0.9 1,228 1,137 0.9 △ 7.4
階層レベル3の項目スイス 560 612 0.8 9.3 918 990 0.8 7.8
階層レベル3の項目フランス 678 403 0.6 △ 40.5 645 683 0.5 5.8
階層レベル2の項目英国 507 547 0.7 7.8 791 626 0.5 △ 20.8
中東 697 861 1.2 23.5 5,459 4,735 3.7 △ 13.3
階層レベル2の項目湾岸協力会議(GCC)諸国 504 641 0.9 27.2 4,736 3,998 3.1 △ 15.6
北米 11,989 12,616 17.3 5.2 9,322 9,057 7.1 △ 2.8
階層レベル2の項目米国 11,411 12,068 16.5 5.8 8,415 8,163 6.4 △ 3.0
アフリカ 204 177 0.2 △ 13.2 400 505 0.4 26.2
中南米 1,395 1,411 1.9 1.2 2,360 3,516 2.8 49.0
階層レベル2の項目ブラジル 207 209 0.3 1.0 1,372 2,030 1.6 48.0
合計(その他含む) 72,923 72,984 100.0 0.1 126,106 127,382 100.0 1.0

〔注〕アジア大洋州は、ASEAN+6(日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド)に香港、台湾を加えた合計値。
〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

輸出を品目別にみると、全体の4割(構成比40.2%)を占める電気機器・同部品は前年比11.2%減の293億4,800万ドルだった。うち、集積回路は19.9%減の160億2,300万ドル、半導体デバイスは25.5%減の8億8,300万ドルと大幅に落ち込んだ。一方、全体の8.4%を占める一般機械は19.3%増の61億500万ドルで、うち印刷機(22.4%増、18億4,400万ドル)や自動データ処理機(43.7%増、18億4,400万ドル)などが好調だった。

輸入を品目別にみると、電気機器・同部品(193億9,100万ドル)が最も多く、前年比2.7%増で全体の15.2%を占めた。スマートフォンなど電話機が11.0%増の21億9,900万ドルと伸びた。2位は5.1%減の鉱物性燃料・鉱物油(190億9,600万ドル)で、全体の15.0%を占めた。うち、石油・歴青油および同製品は3.9%減の142億7,400万ドルで、石炭は21.7%減の29億4,700万ドルといずれも減少した。3位は一般機械で、5.0%増の101億8,100万ドルだった。その他、車両(鉄道以外)・同部品は5.0%減の93億2,800万ドルで、乗用車(43億4,300万ドル)が9.0%減となる一方、貨物自動車(22億800万ドル)は3.8%増加した。

表3-1 フィリピンの主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 33,031 29,348 40.2 △ 11.2
階層レベル2の項目集積回路 20,011 16,023 22.0 △ 19.9
階層レベル2の項目電気絶縁体・ケーブル 3,027 2,932 4.0 △ 3.1
階層レベル2の項目トランスフォーマー 1,675 1,710 2.3 2.1
階層レベル2の項目半導体デバイス 1,186 883 1.2 △ 25.5
一般機械 5,117 6,105 8.4 19.3
階層レベル2の項目印刷機 1,507 1,844 2.5 22.4
階層レベル2の項目自動データ処理機 1,283 1,844 2.5 43.7
銅・同製品 2,514 1,752 2.4 △ 30.3
光学・精密・医療機器等 2,392 3,312 4.5 38.5
鉱石、スラグおよび灰 2,178 2,722 3.7 25.0
果実・ナッツ 1,955 2,104 2.9 7.6
合計(その他含む) 72,923 72,984 100.0 0.1

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

表3-2 フィリピンの主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 18,874 19,391 15.2 2.7
階層レベル2の項目集積回路 7,684 7,048 5.5 △ 8.3
階層レベル2の項目スマートフォンなど電話機 1,981 2,199 1.7 11.0
鉱物性燃料・鉱物油 20,120 19,096 15.0 △ 5.1
階層レベル2の項目石油・歴青油および同製品 14,846 14,274 11.2 △ 3.9
階層レベル2の項目石炭 3,766 2,947 2.3 △ 21.7
一般機械 9,697 10,181 8.0 5.0
車両(鉄道以外)・同部品 9,816 9,328 7.3 △ 5.0
階層レベル2の項目乗用車 4,770 4,343 3.4 △ 9.0
階層レベル2の項目貨物自動車 2,128 2,208 1.7 3.8
鉄鋼 3,949 4,222 3.3 6.9
プラスチック・同製品 3,822 4,165 3.3 9.0
合計(その他含む) 126,106 127,382 100.0 1.0

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

対内直接投資 
CREATE MORE法成立で投資拡大に期待

2024年のフィリピンへの対内直接投資(認可ベース)は5,436億1,900万ペソとなり、前年比38.9%減となった。欧州2カ国(ドイツ、オランダ)から大規模投資があった前年と比べると減少したものの、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)禍前で過去最高だった2019年(3,901億1,000万ペソ)と比べると1.4倍の水準となっている。

国・地域別では、スイスが前年比約7,600倍の2,890億6,400万ペソで、全体の過半(53.2%)を占めて首位となった。2位の韓国は66.2倍の1,003億3,700万ペソで全体の2割弱(18.5%)となった。以下、オランダ(502億2,200万ペソ)、日本(286億6,500万ペソ)、シンガポール(121億2,900万ペソ)が続いた。フィリピンとスイスの合弁会社であるトリコンティ・ウィンドクラフト(Triconti Windkraft)は2024年1月、同社がシーウインド・ホールディング(Sea Wind Holdings AG)とともに取り組むネグロス・オクシデンタル州およびイロイロ州沖の風力発電プロジェクトについて、フィリピン投資委員会(BOI)からグリーンレーン(戦略的分野への海外直接投資にかかる許認可手続きの優先ルート)の証明書発行を受けた。プロジェクトの総発電容量は1.2ギガワット(GW)で、初期投資額は2,216億ペソに上る。

表4 フィリピンの国・地域別対内直接投資[認可ベース](単位:100万ペソ、%)(△はマイナス値)
国・地域 対内直接投資
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
スイス 38 289,064 53.2 770,268.3
韓国 1,516 100,337 18.5 6,517.2
オランダ 349,933 50,222 9.2 △ 85.6
日本 57,472 28,665 5.3 △ 50.1
シンガポール 37,517 12,129 2.2 △ 67.7
ケイマン諸島 11,633 9,301 1.7 △ 20.0
米国 5,291 5,699 1.0 7.7
マレーシア 733 4,633 0.9 532.5
オーストラリア 1,017 3,734 0.7 267.4
タイ 1,027 3,314 0.6 222.5
香港 1,011 3,078 0.6 204.5
英国 4,127 3,012 0.6 △ 27.0
台湾 4,078 2,513 0.5 △ 38.4
中国 6,778 2,430 0.4 △ 64.1
英領バージン諸島 3,401 2,068 0.4 △ 39.2
インド 588 565 0.1 △ 3.8
ドイツ 393,991 353 0.1 △ 99.9
合計(その他含む) 889,243 543,619 100.0 △ 38.9

〔出所〕フィリピン統計庁(PSA)

業種別でみると、前年同様、再生可能エネルギー(再エネ)分野を含む「電力、ガス、空調」の投資額が3,415億100万ペソと最も大きかった。前年比では53.4%減となったものの、2022年の法改正により水力発電プロジェクトを除く再エネ事業で外資100%による運営が可能になったことや、2023年に開始されたグリーンレーンの導入が、引き続き再エネ分野での投資を後押すると考えられる。「製造業」は13.7%増の1,261億3,300万ペソと堅調に伸びている。また、「ホテル、外食」は前年比81.0倍の200億9,800万ペソだった。フィリピン移民局によると、2024年にフィリピンを訪れた外国人観光客数は1,470万人を超え、新型コロナ後の観光業の順調な回復が見られる。

表5 フィリピンの業種別対内直接投資[認可ベース](単位:100万ペソ、%)(△はマイナス値)
業種 対内直接投資
2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電力、ガス、空調 732,366 341,501 62.8 △ 53.4
製造業 110,941 126,133 23.2 13.7
ホテル、外食 248 20,098 3.7 8,011.0
不動産 8,258 17,326 3.2 109.8
管理、サポート 17,132 16,043 3.0 △ 6.4
輸送・倉庫 2,411 14,988 2.8 521.6
建設 14 1,418 0.3 9,895.7
水道 55 957 0.2 1,643.0
金融・保険 229 593 0.1 159.1
卸・小売り、修理業 636 506 0.1 △ 20.5
情報・通信 14,301 464 0.1 △ 96.8
農林水産 1,278 91 0.0 △ 92.9
教育 848 32 0.0 △ 96.2
専門、科学、技術 404 30 0.0 △ 92.5
合計(その他含む) 889,242 543,619 100.0 △ 38.9

〔出所〕フィリピン統計庁(PSA)

2024年11月には、「CREATE法」の改正法にあたる「CREATE MORE法(共和国法第12066号)」が成立した(2024年11月12日付ビジネス短信参照)。同法では、法人税率を25%から20%へ引き下げることや所得税優遇措置の適用期間を最大17年から27年へ延長することなどが定められている。同法への期待から、外国企業や投資家の一部が成立まで投資を見送ったことが影響し、前年に比べて海外直接投資金額が減少したとみられている。このほかにも、2024年11月に行われた米国大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が当選したことによる先行き不透明感や、近隣国との地政学的リスク、複数の大型台風を含む自然災害による被害なども投資減少の要因となった。

対日関係 
対日貿易は調整局面も、貿易収支は黒字を維持

2024年の日本との貿易(通関ベース)は、輸出が前年比1.6%減の102億5,400万ドル、輸入が1.9%減の100億6,900万ドルだった。対日貿易収支はプラス1億8,500万ドルで2年連続の黒字となった。

輸出を品目別にみると、電気機器・同部品が前年比13.7%減の39億4,400万ドルで全体の38.5%を占めた。このうち、集積回路は34.3%減の9億9,800万ドルと大きく減少した。また、前年は7.8%増加していた電気絶縁体・ケーブルも、9.4%減の13億5,900万ドルだった。一方、電気回路の開閉・保護・接続用機器は12.5%増(2億2,400万ドル)、半導体デバイスは15.6%増(1億6,900万ドル)と増加した。一般機械は前年比9.8%減の5億1,500万ドルで、うち印刷機(1億4,200万ドル)は10.2%増加した。自動データ処理機械(5,900万ドル)の14.0%減、空気/真空ポンプ、ガスコンプレッサーおよびファン(5,600万ドル)の37.0%減などが押し下げ要因となった。

このほかの製品をみると、前年比で増加した主要品目は、果実・ナッツが14.4%増の7億9,200万ドル、プラスチック・同製品が28.3%増の6億4,000万ドル、船舶および浮き構造物が14.2%増の5億2,400万ドル、光学・精密・医療機器等が8.0%増の3億3,100万ドル、車両(鉄道以外)・同部品が7.4%増の2億1,700万ドルだった。金額規模は小さいものの増加幅が大きかった品目としては、鉄鋼製品(54.3%増、1億4,600万ドル)、石、石膏、セメント、アスベスト、雲母等物品(25.4%増、1億2,800万ドル)、無機化学品(45.0%増、1億2,600万ドル)、卑金属製品(3.0倍、1億600万ドル)などがある。一方で、ニッケル・同製品は22.6%減(3億7,900万ドル)、アルミニウム・同製品は35.4%減(1億9,100万ドル)と大きく減少した。

輸入では、電気機器・同部品が全体の26.5%を占め、前年比1.0%増の26億6,400万ドルと微増した。このうち、電気絶縁体・ケーブルは31.6%減(1億4,300万ドル)と大幅に減少したものの、集積回路は8.3%増の12億6,300万ドル、印刷回路は2.3%増の2億100万ドル、電気回路の開閉・保護・接続用機器は1.8%増の1億9,900万ドルといずれも増加した。一般機械は、8.2%減の14億6,700万ドルで、機械類(固有の機能を有するものに限る)の5.0%減(1億5,000万ドル)が減少要因となった一方、自動データ処理機は1.3%増の3億1,000万ドル、印刷機は8.5%増の1億1,500万ドルと伸長した。また、車両(鉄道以外)・同部品は0.2%減の11億9,900万ドルで前年からほぼ横ばいとなった。乗用車(3.9%減、3億8,800万ドル)や自動車部品・付属品(9.2%減、9,700万ドル)が減少した一方、貨物自動車は13.0%増(3億1,300万ドル)と好調だった。

表6-1 フィリピンの対日主要品目別輸出(FOB)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 4,568 3,944 38.5 △ 13.7
階層レベル2の項目電気絶縁体・ケーブル 1,501 1,359 13.3 △ 9.4
階層レベル2の項目集積回路 1,518 998 9.7 △ 34.3
階層レベル2の項目レーダー、航行用無線機器および無線遠隔制御機器 381 346 3.4 △ 9.3
階層レベル2の項目電気回路の開閉・保護・接続用機器 199 224 2.2 12.5
階層レベル2の項目半導体デバイス 146 169 1.6 15.6
果実・ナッツ 693 792 7.7 14.4
プラスチック・同製品 499 640 6.2 28.3
船舶および浮き構造物 459 524 5.1 14.2
一般機械 570 515 5.0 △ 9.8
階層レベル2の項目印刷機 129 142 1.4 10.2
鉱石、スラグおよび灰 447 480 4.7 7.4
ニッケル・同製品 489 379 3.7 △ 22.6
光学・精密・医療機器等 306 331 3.2 8.0
車両(鉄道以外)・同部品 202 217 2.1 7.4
木材および木製品、木炭 277 210 2.1 △ 24.0
アルミニウム・同製品 296 191 1.9 △ 35.4
鉄鋼製品 95 146 1.4 54.3
石、石膏、セメント、アスベスト、雲母等物品 102 128 1.2 25.4
無機化学品 87 126 1.2 45.0
卑金属製品 35 106 1.0 202.6
合計(その他含む) 10,425 10,254 100.0 △ 1.6

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

表6-2 フィリピンの対日主要品目別輸入(CIF)[通関ベース](単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
品目 2023年 2024年
金額 金額 構成比 伸び率
電気機器・同部品 2,638 2,664 26.5 1.0
階層レベル2の項目集積回路 1,166 1,263 12.5 8.3
階層レベル2の項目印刷回路 196 201 2.0 2.3
階層レベル2の項目電気回路の開閉・保護・接続用機器 195 199 2.0 1.8
階層レベル2の項目電気絶縁体・ケーブル 209 143 1.4 △ 31.6
階層レベル2の項目半導体デバイス 83 121 1.2 46.2
一般機械 1,597 1,467 14.6 △ 8.2
階層レベル2の項目自動データ処理機 306 310 3.1 1.3
階層レベル2の項目機械類(固有の機能を有するものに限る) 158 150 1.5 △ 5.0
階層レベル2の項目印刷機 106 115 1.1 8.5
車両(鉄道以外)・同部品 1,201 1,199 11.9 △ 0.2
階層レベル2の項目乗用車 404 388 3.9 △ 3.9
階層レベル2の項目バス 327 325 3.2 △ 0.7
階層レベル2の項目貨物自動車 277 313 3.1 13.0
階層レベル2の項目自動車部品・付属品 106 97 1.0 △ 9.2
プラスチック・同製品 560 566 5.6 1.1
鉄鋼 500 511 5.1 2.2
鉱物性燃料・鉱物油 406 463 4.6 13.9
光学・精密・医療機器等 287 256 2.5 △ 10.7
合計(その他含む) 10,261 10,069 100.0 △ 1.9

〔出所〕Global Trade Atlas〔原データはフィリピン統計庁(PSA)〕

製造業で生産強化、小売・飲食分野で裾野拡大が目立つ

2024年の日本からフィリピンへの対内直接投資(認可額ベース)は、前年比50.1%減の286億6,500万ペソだった。国・地域別では前年より順位を下げて4位となったが、新型コロナ禍前の2019年(198億8,600万ペソ)を大幅に上回っている。2024年は製造業において生産拡大や工場新設の動きが目立った。日本企業の各社プレスリリースによると、自動車関連では、横浜ゴムがクラーク特別経済特区でタイヤ工場の生産能力を倍増させ、2026年4~6月にフル稼働を目指すと発表した。トヨタ・モーター・フィリピン(TMP)は、次世代型アジア向け多目的車(AUV)「タマラオ」の現地生産のため、ラグナ州サンタロサに生産体制を整えた。このほかの分野では、プリンター・複合機のブラザー工業が、バタンガス州のファーストフィリピン工業団地(FPIP)に第3工場を完成させた。山洋電機フィリピンは、第4工場を新設し、通信装置や半導体製造冷却に利用される冷却ファン、電源装置、制御装置のモーター類の一部などを生産する。

非製造業では、小売り・飲食分野での新規出店や拡大が相次いだ。2024年4月にはニトリが三越BGCに初出店し、2032年までに50店舗の出店を目指すと発表、2024年内に4号店まで出店した。2023年に法人設立したアダストリアは、地場財閥SMグループが運営するモール・オブ・アジア(MOA)にファッションブランド「ニコアンド(niko and …)」1号店をオープンした(2024年12月17日付ビジネス短信参照)。トリドールホールディングスは、丸亀製麺のフィリピン50店舗目となる新店舗のオープンを発表した。このほかにも、現地ショッピングモールのグリーンヒルズモールにおけるグルメ杵屋のどんぶり専門店「丼丼亭」2号店や、ウィズリンクが展開する豚骨ラーメンチェーン「ぶちとん」などが出店を発表した。

基礎的経済指標

(△はマイナス値)
項目 単位 2022年 2023年 2024年
実質GDP成長率 (%) 7.6 5.5 5.7
1人当たりGDP (米ドル) 3,645 3,905 4,079
消費者物価上昇率 (%) 5.8 6.0 3.2
失業率 (%) 5.4 4.4 3.8
貿易収支 (100万米ドル) △ 69,701 △ 66,036 △ 68,744
経常収支 (100万米ドル) △ 18,261 △ 12,387 △ 17,514
外貨準備高(グロス) (100万米ドル) 86,850 93,196 95,251
対外債務残高(グロス) (100万米ドル) 111,268 125,394 137,628
為替レート (1米ドルにつき、ペソ、期中平均) 54.5 55.6 57.3


貿易収支:国際収支ベース(財のみ)
出所
実質GDP成長率:フィリピン統計庁(PSA)
消費者物価上昇率、失業率、貿易収支、経常収支、対外債務残高(グロス):フィリピン中央銀行(BSP)
1人当たりGDP、外貨準備高(グロス)、為替レート:IMF